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8・6 最後の追悼式断念 安芸高田市向原の被害者友の会解散へ 

新型コロナ影響 「史実 引き継ぐ」

 安芸高田市向原町の被爆者でつくる町原爆被害者友の会は、新型コロナウイルスの影響を踏まえ、今夏の追悼式を中止する。同会は会員の減少などを受けて被爆75年となる今年8月6日の原爆の日での解散を決めており、最後になるはずだった追悼式を開けないまま活動を終える。(和泉恵太)

 追悼式は約10年前から、原爆の日より前に同町の丸山公園にある慰霊碑前で開催してきた。原爆投下後に芸備線の列車で同町に運ばれるなどして亡くなった犠牲者を悼み、黙とうや献花をしたり、会員が被爆体験を語ったりしてきた。昨年は14人が参列した。

 玉川祐光会長(87)たち有志4人が今月18日、今年の開催について協議。感染第2波への懸念などで先行きが見通せず、参列者の多くが高齢であることも考慮して中止を決めた。

 現在の会員は135人。2014年まで200人以上いたが、亡くなったり、施設に入所したりして減った。運営に携わるのは数人で、式の参列者も半減したため、16年に会費の徴収をやめ、17年に解散を決めた。任意団体のため解散手続きはなく、会費の繰越金は福祉団体に寄付して清算する。

 玉川会長は広島二中(現観音高)の1年生の時、建物疎開作業に向かう途中に爆心地から約2キロの広島駅前で被爆。多くの同級生を失った経験も踏まえ、11年に会長に就任してから追悼式を活動の柱としてきた。

 「心残りはあるが、今年はそれぞれが追悼の思いを胸に過ごすことにした。解散後も、向原にも原爆による被害者がいた史実を次世代に引き継ぎたい」と話す。

(2020年6月23日朝刊掲載)

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