[無言の証人] 溶けた仏像
20年7月6日
爆風と高熱火災の痕
顔面もろとも溶け、表情すらうかがうことはできない。高さ約50センチの仏像は、原爆資料館(広島市中区)によると「銅製か青銅製ではないか」。爆心地から西へ500メートルの左官町(現中区本川町)の善応寺にあった。
「爆風によって台座から吹き飛び、高熱火災によって前面が溶けてなくなった」と記録されている。住職だった吉中一透(いっとう)さん=当時(56)=が本堂にいて即死したとみられる。遺骨は見つかっていない。孫で現住職の良一さん(67)によると、仏像を守るため疎開せず寺に残っていたという。
良一さんは「金属が溶けるほどの熱。生身の人間はひとたまりもなかったことでしょう。こんなことが二度とないよう祈りたい」と話す。現在、原爆資料館本館に常設展示されている。(山本祐司)
(2020年7月6日朝刊掲載)