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禎子さんの生涯 英語小説化 米の児童絵本作家ディシコさん 兄雅弘さん手記 下敷きに

 元ディズニーアニメのイラストレーターの児童絵本作家スー・ディシコさん(61)=米カリフォルニア州=が、2歳で被爆した故佐々木禎子さんの生涯をつづった英語のノンフィクション小説を出版した。禎子さんの兄雅弘さん(78)=福岡県那珂川市=との共著で、2年前の初版を大幅に書き換え、原爆被害の実態を分かりやすく伝える。

 タイトルは「『原爆の子の像』のモデルとなった佐々木禎子さんの物語(The Complete Story of Sadako Sasaki)」。雅弘さんの手記を下敷きに2人で文章を練った。禎子さんが1943年1月に誕生し、12歳で他界するまでを写真とともに振り返る。亡くなる2カ月前に千羽を突破し、病が進行しても鶴を折り続けていた姿や、同級生による原爆の子の像の建立運動も触れた。

 原爆資料館のピースボランティアも務める通訳案内士の中越尚美さん(57)=広島県熊野町=が資料を提供。「爆心地付近は3千~4千度まで上昇した(太陽の表面の温度は5700度)」「川には浮草のように遺体が浮かんでいた」と子どもが想像しやすい表現を心掛けた。

 挿絵も描いたディシコさんは、米国の小学校で児童たち26人が死亡した2012年の銃乱射事件を機に、鶴を折って送り合う「平和の鶴プロジェクト(Peace Crane Project)」を続ける。154カ国から200万人以上の参加を得る中で「英語圏で知られるサダコの本は史実とずれがある」と感じ出版を企画した。

 「サダコの人生から、戦争がもたらす苦しみや、全ての国の人が平和を望んでいることを知ってほしい」とディシコさん。チャールズ・イー・タトル出版刊で日本国内の価格は1320円。今後、他言語にも翻訳する予定だ。(桑島美帆)

(2020年7月6日朝刊掲載)

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