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被爆組織標本 DB化へ 広島大 劣化対策 CFで事業費

 広島大は29日、同大原爆放射線医科学研究所(原医研、広島市南区)が保管している原爆犠牲者の組織標本と解剖記録をデジタル画像化し、データベース(DB)を作ると発表した。被爆後間もない時期に解剖された犠牲者の資料で、劣化が進んでいるため。事業費350万円はクラウドファンディング(CF)で募る。同大は「医学的にも歴史的にも極めて貴重な資料を、多くの市民の思いとともに後世に伝えたい」と協力を呼び掛けている。

 占領期に米軍に接収され、1973年に日本へ返還された被爆学術資料の一部。今回は、原爆投下4日後の45年8月10日から11月15日までに解剖された広島の原爆犠牲者135人分の資料をデジタル化する。肝臓、骨髄などの薄片をガラス板に張り付けた組織標本は約2500枚にも上る。

 この日の記者会見で、原医研の田代聡所長は「放射線の急性症状を示す重要な資料だ」と強調した。一般と研究者向けに2種類のデータベースを作成し、2022年の公開を目指す。

 標本のデジタル化には数千万円もする専用機材が必要。同大は国に購入費の予算化を求めてきたが、認められなかった。今回、この機材を備える会社で代表を務める井内康輝・同大名誉教授が協力を申し出た。事業費は抑えられるが、同大は、多くの人に原爆被害への関心を持ってもらうためCFの実施を決定。350万円の目標額に到達しなくても事業は進める。

 寄付は29日に受け付けを開始し、9月30日まで。https://readyfor.jp/projects/rirbmkaisekibu(田中美千子)

(2020年7月30日朝刊掲載)

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