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社説・コラム

永田町発 コロナ禍「8・6」 岸田文雄氏に聞く 核なき世界へ 願い縮小せず

被服支廠 保存考えたい

 自民党の岸田文雄政調会長(広島1区)は、被爆75年の節目となる8月6日の「広島原爆の日」を前に中国新聞のインタビューに応じた。新型コロナウイルスの影響で平和記念式典が規模縮小を余儀なくされたが「核なき世界を願う人々の気持ちは縮小しない」と強調。市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)の保存を求める思いや、「ポスト安倍」候補とされる自らの立場についても語った。(下久保聖司)

 岸田氏は2020年を「核拡散防止条約(NPT)発効から50年の節目にも当たり重要な年だ」と説明。コロナ禍で平和記念式典の参列者数が絞られることに関して、「気持ちまで縮小してはならない。核なき世界という大きな目標を共有する人たちが思いを一つにする式典にしなければならない」と訴える。

 建物の保存、活用の行方が注目される被服支廠については「悲惨な歴史を後世に伝えるために重要な存在。できれば残す方向で考えたい」と述べた。

 その上で保存への公金投入には「国民や県民、市民の理解が必要だ」とし、「早急に結論を出すのではなく、関係者の意見をじっくり聞くことだ。文化財として保存を目指す案もある。(幾つかの)具体的な提案をより絞って結論を出すのが大事」との考えを示した。

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」計画を政府が断念したことを受け、自民党は敵基地攻撃能力の保有を念頭に置いたミサイル防衛の在り方を検討。この点について岸田氏は「国民の命や暮らしを守るのが政治の役割だ」と話した。

 敵基地攻撃能力の保有を巡っては、連立を組む公明党が慎重論を唱える。岸田氏は「ミサイル防衛体制が十分なのか考えた上で、敵基地攻撃能力が必要かを議論する。こうした議論までは否定しない」と自らのスタンスを説明した。

 政権構想につながるとみられる初の著書を9月に出版する予定で、多様性の尊重や持続可能性への考えを記すという。「広島出身の国会議員として、核なき世界には特に強いを思いがある。そう間を置かず、核軍縮・不拡散をテーマにした本をもう1冊出そうと思っている」と明かした。

(2020年8月2日朝刊掲載)

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