平和の門

広島市中区の平和大通り南側緑地帯にある10基の門で、一基は高さ9メートル、幅2・64メートル、奥行き1・6メートルで鉄骨の枠組みを強化ガラスで覆っている。表面に「平和」の文字が49の言語で刻まれ、夜間は門内部のライトで文字が白く浮かび上がる。

世界各地に「平和」と書いた壁を贈っている建築家ジャン・ミシェル・ヴィルモットさんと、グラフィックアーティストのクララ・アルテールさんが制作。2005年7月30日に完成式があり、広島市に贈呈した。被爆60年に合わせて、フランス側が市に設置を提案。約3億円の費用はフランスや日本の企業の出資で賄われた。

門を10基にしたのは、イタリアの詩人ダンテの「神曲」に出てくる九つの地獄に被爆を加えたという。平和記念公園の真南で、高床式の原爆資料館本館の10本の柱(両端間75㍍)の延長線上に配置された。

 ヴィルモット事務所プロデューサーのボリーナ・アンドリューさんによると、2人はパリに「平和の壁」、ロシア・サンクトペテルブルクに「平和の塔」を制作した実績がある。

完成式で、フランスのベルナール・モンフェラン駐日大使は「過去に何があったかを想起させ、未来を見つめさせる」と作品を紹介。秋葉忠利市長は「核兵器という悪魔から世界を守る芸術的表現だ」と謝辞を述べた。文字を刻んだアルテールさんは「平和を希求する普遍的な思いを表現した」と説明した。