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ヒロシマ・ナガサキ ZERO PROJECT

ジョン・ハーシー 孫が平和発信 広島発プロジェクト 10月開始

被爆地ルポ「ヒロシマ」の思い継ぐ

 1946年にルポ「ヒロシマ」で被爆地の惨状を世界に伝えたジョン・ハーシーの孫で、米ニューヨーク在住のアーティスト、キャノン・ハーシーさん(40)らが31日、広島市役所で記者会見し、被爆75年の2020年まで続ける平和発信の取り組み「ヒロシマ・ナガサキ ゼロプロジェクト」を開始すると発表した。広島国際文化財団が協賛し、支援する。

 ヒロシマでの取材を胸に戦後、ジャーナリストとして社会問題を追い続けた祖父の思いを継ぐプロジェクトになる。ことしは10月29日に広島市中区で平和イベントを開き、クリントン政権で国防長官を務めたウィリアム・ペリー氏や、戦争を伝える作品も手掛けてきたイラストレーターの黒田征太郎氏らを招く。

 被爆地の若い世代に参加を呼び掛け、核兵器廃絶を軸にした四つの分科会で人権や地球環境など平和を阻む問題について討論する。黒田さんと子どもたちによる平和アートの制作、平和記念公園でのコンサートも計画。ネットを活用して世界中に発信するという。

 キャノンさんは被爆70年に広島を初めて訪れ、祖父の足跡を追った。「ヒロシマは被爆の歴史だけでなくゼロから復興した希望を感じる街」と話す。これまでも平和と芸術のワークショップを被爆地で開き、それを踏まえて米国で昨年立ち上げたNPO法人「1Future(ワン・フューチャー)」が主催する新たなプロジェクトを企画した。(桑島美帆)

ジョン・ハーシー
 米国を代表した作家・ジャーナリストでピュリツァー賞受賞者。被爆1年後に広島入りし、故谷本清牧師や医師ら6人の詳細なインタビューを基にした「ヒロシマ」が雑誌ニューヨーカーに掲載され、世界的な反響を呼んだ。1985年に広島を再訪している。93年、78歳で死去。

(2017年8月1日朝刊掲載)