The Chugoku Shimbun ONLINE
たゆまず歩む 地域とともに 中国新聞
トップページへ
記事検索
中国新聞インフォメーション
中国新聞トップ > 北朝鮮核実験 ヒロシマは問う
ヒロシマは問う
<1> 日本被団協代表委員・広島県被団協理事長 坪井直氏(81)=広島市西区 '06/10/12

 ▽被爆者の訴え 粘り強く

 北朝鮮が予告通り核実験を実施したと発表し、世界に緊張感が高まっている。被爆地広島には、怒りとともに、核兵器廃絶の訴えが無視されたむなしさも漂う。被爆者代表や識者らに、核実験の影響やヒロシマの果たす役割を聞いた。

 じわじわと怒り

 ―「核実験実施」のニュースに接した感想を聞かせてください。

 昨年二月の核兵器保有宣言以降、実験強行に向けた情報が徐々に伝わっていたので、驚きはなかった。しかし、じわじわと怒りがわいてきた。被爆者が訴え続けてきた核兵器廃絶への願いが、被爆者もいる隣国にすら伝わらなかったことにむなしさも感じた。

 ―北朝鮮の国民は核実験をどう受け止めているのでしょうか。

 核兵器の本当の恐ろしさを知らされていないのではないか。一九九九年に平壌であった原爆展に参加し、北朝鮮の国民と接した際、日本の植民地支配についてはよく知っていたが、核兵器については驚くほど無知だった。被害を伝える写真を見て「作り物ではないか」と言った人もいたほどだ。

 ―国交のない国にヒロシマの訴えを届かせることは難しいのでは。

 国交がないだけでなく、情報も遮断されている。被爆者にとっては、在朝被爆者との交流こそが細いパイプだ。緊張感が高まっている今こそ、口実を作ってでも北朝鮮に行くべきだ。

 ―核計画の放棄を約束した六カ国協議共同声明を自ら破り捨てた北朝鮮に不信を感じませんか。

 原爆展を見学した政府高官は、核兵器を持たないことを約束した。裏切られ、悔しい思いをしている。米国に対抗するために核兵器を持つというのは、一部の指導者の論理でしかない。一般の市民は衣食住にも事欠いている。市民レベルの対話の窓口は、閉ざすべきではない。

 ―被爆者による核兵器廃絶の訴えが届きにくくなっていませんか。

 北朝鮮に対抗するために、日本でも核武装論が聞こえ始めた。勇ましい世論には恐ろしさも感じる。隣国の核保有という身近な脅威が、冷静な議論を難しくしているのではないか。

 力よりも対話を

 ―「力による対抗」が目立ち始めた世論に響く被爆者の訴えを、どう組み立てますか。

 世論は左右に大きく揺れている。軍国的な意見がある一方で、最近の世論調査では憲法九条の改正に反対する人の方が多い。力を力で抑え込もうという米中枢同時テロ以降の風潮は楽観視できないが、絶望してもいけない。これまで積み上げてきた被爆者の訴えを水の泡にしないよう、小さな機会も無駄にせず、戦争と核兵器の恐ろしさを訴えるしかない。国内の世論に向けた対話こそが重要になっている。(石川昌義)

 つぼい・すなお 1925年生まれ。爆心地から約1.2キロの広島市富士見町(中区)で被爆。中学教師や校長を経て94年から広島県被団協事務局長、2004年から理事長。2000年からは日本被団協代表委員を務める。

【写真説明】「北朝鮮の国民に核兵器の恐ろしさを伝えることが重要」と訴える坪井さん


MenuTopBack
特集企画
各地をつなぐ情報ネットワーク
新聞15社の地域情報
Area21
災害・事故の情報に強い
全国新聞ニュース網
 
地域新聞39社の「現地」情報
今日のニッポン
ニッポンの祭

クイックリンク → | トップ | 社説 | 天風録 | 地域ニュース | カープ情報 | サンフレ情報 | スポーツ情報 | 全国・世界のニュース |
本ページに関する問い合わせ、ご意見などはこちらまで 中国新聞社/中国新聞情報文化センター マルチメディア本部
本ページ内に掲載の記事・写真などの一切の無断転載を禁じます。すべての著作権は中国新聞社に帰属します。
| 個人情報 |
(C)Copyright 1996-2005 Chugoku Shimbun.No reproduction or republication without written permission.
The Chugoku Shimbun 7-1 Dohashicho Nakaku Hiroshima Japan