広島市旧猿楽町 CGで被爆前の町並み再現

'00/8/1

 原爆で壊滅した広島市の爆心直下の町、旧猿楽町(現・中区大手 町一丁目)の元住民らが取り組んでいるコンピューターグラフィッ クス(CG)による被爆前の町並み復元計画で、制作途中の映像の 一部が三十一日、初めて公開された。商店の看板が立ち並ぶ通りや 町内にあった広島県産業奨励館(現・原爆ドーム)などがリアルに 再現され、平和だった被爆前の様子がうかがえる。

 映像は約三分で、この日大手町一丁目の県民文化センターであっ た猿楽町の原爆死没者慰霊式典で出席者約五十人を前に上映され た。建物疎開が始まる前の一九四四年ごろの町並みで、たばこ店や 家具店などの看板が並ぶ様子や防火水槽、手押しポンプなど、細か い部分にこだわって制作。被爆前の活気 あふれる町の様子を再現している。

 町内の青果店を細かく再現し、店内に並ぶスイカやキャベツなど の商品も映像化。かつて住んでいた東区牛田本町四丁目、酒店経営 田中俊明さん(82)は「当事の暮らしを思い出した。なかなかの出 来」とスクリーンに映ったわが家の様子に見入っていた。

 復元計画は、猿楽町ゆかりの人たちでつくる「矢倉会」(益本嘉 六会長、百六十五人)や中区の映像プロダクションなどで構成する 「爆心地復元委員会」が九八年から取り組み、被爆前の写真や元住 民の記憶などを基に映像化を進めている。

 今後、映像化する範囲をさらに広げ、来年八月までに約五十軒の 町並みを再現する。通りを行き交う人たちや会話も加えるほか、被 爆証言を間に挟み込んで約五十分の作品に仕上げる。

【写真説明】CGで復元された、猿楽町通りを西から東を望んだ町並み。建物疎開が始まるまで、八百屋や家具店などが並んでいた


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