街角の被爆建物を訪ねる―2000年夏(6)

'00/7/29

 変わらぬ姿の「主役」/帝国銀行広島支店の外壁

 遅い夕暮れを迎えてもなお、人通りの絶えない広島市中区の本通 り商店街。若者や家族連れに人気のあるベーカリー兼レストランの 広島アンデルセンで、午後八時前、ガラス越しに見える店の明かり が消え始めると、洋式建築の二階部分の外壁が照明に浮かぶ。

 この外壁は「あの日」も同じ場所にあった。当時は、帝国銀行広 島支店。西方約三百六十mから爆風を受けて建物の八割方が損壊し たものの、北側と東側の壁面はかろうじて残った。

 原爆投下の二十年前、三井銀行広島支店として新築された建物 は、吹き抜けの営業室や中二階に回廊のある典型的な銀行建築だっ た。元に近い姿に修復されたのは一九五〇年。その後、金融機関の 看板は三度懸ける掛け替えられ、六七年にアンデルセンの親会社、 タカキベーカリーが買い取った。

 七八年、南側に八階建て新館を増築した際も、全体の雰囲気を保 った。「被爆した建物が主役だ、という高木俊介社主の固い意思だ った」と、図面を引いた木村設計(広島市中区)の木村素直社長 (58)。

 被爆外壁を残す旧館は来年にも二階から七階建てに増築される。 ただ「主役」は変わらない。木村さんは言う。「人が利用してこそ 建物は生きる。だから、いつの時代も被爆のあかしであり続けられ る」=おわり=(文・広田恭祥、写真・小川洋史)

【写真説明】にぎわう階下とは対照的に、アーチ窓などを配した被爆外壁が静かにスポットライトを浴びる


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