中国新聞
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「テロ・報復戦争とヒロシマの役割」座談会 2002/01/01

報復 「不朽の自由」の足元

 ― 米国のアフガニスタンへの報復攻撃をどうみますか。

 森滝 米国が自分で作ったシナリオ通りに報復をしていったと思 う。ブッシュ大統領がテロ直後の演説でパールハーバーに触れたと き、核攻撃に出るのではと心配した。相手が弱かったので使うまで に至らなかっただけ。劣化ウラン弾は使っているのでは。

 井上 報復に出るのが早すぎた。ビンラディン氏が犯人という証 拠をつかんだといいながら、まったくそれを見せず、すぐ武力行使 に出た。その方法も必要以上のやり方だった。周りの国もあまりに 追従しすぎだった。

 中村 日本はどんなことをすべきなのかということを考えた。例 えば、三人が集まった場で、二人がけんかを始めれば、残りの一人 は理由はどうであれ、けんかを止めるのではないか。日本が米国の 友人というのなら、報復攻撃を止めるべきだと思った。

 福井 私自身はしっかりした証拠があって一般市民に被害を出さ ないようにするのなら反対しない。しかし、私たち一般市民は(ビ ンラディン氏が首謀者との)証拠を見せられなかった。にもかかわ らず、テロの一カ月後に完全な証拠があるといって報復を始めた。 最大の証拠だといって示したのは、つい最近出てきたビデオだっ た。

 ― 米国には世界支配を強めようという意図があるのでしょう か。

 菱木 そう見える。ブッシュ政権発足時にブレーンたちが集ま り、新しい核戦略のリポートが出てきた。その段階で、核兵器放棄 なんて金輪際考えていないことが明白になった。臨界前核実験でも 明らかなように、戦略核弾頭などの量は減らすが、質的に高度なも のを新たにつくり、他の追随を許さない。米国が強大国になったと きから、一番を維持するという強迫観念が国防戦略の中にずっとあ る。これを覆すのは容易ではない。

 森滝 一番ギョッとしたのは宇宙から衛星で偵察して、そのデー タを基に発射したミサイルがテロ組織のアルカイダ施設に命中した 映像だ。米国の原子力産業も軍需産業も、次の生きる道を宇宙に求 めているというのは前から言われているが、今回の攻撃の裏にはミ サイル防衛(MD)システムによる宇宙支配など、すごい計算があ ると思う。

 福井 報復攻撃でアフガンの一般市民が犠牲になっているが、米 国からは一言の説明や弁明もない。今回の一番の問題点だ。一国主 義、単独行動主義の一番憎むべき、悲しむべき側面と思う。

 森滝 クラスター爆弾の不発弾でパキスタンの子どもたちまで犠 牲になっているし、飛び散った不発弾が地雷と同じ働きをして、環 境を破壊している。

 菱木 米国民の95%がブッシュ大統領の戦略、戦争を支持してい るが、いつまでも続くとは思わない。私が最も希望を託したいの は、やはり米国民に対してだ。二十一世紀に米国民と日本やほかの 世界の人々がいかに結びついていくか。今後の大きな課題だ。