原爆症認定
ホーム社説天風録地域ニュースカープ情報サンフレ情報スポーツ情報全国・世界のニュース
 広島で27人提訴 原爆症認定集団訴訟 第三陣

 制度の在り方問う

 被爆による病気やけががあるのに原爆症認定申請を却下したのは不当として、広島、島根県の五十九〜八十三歳の被爆者二十七人が十二日、国に却下処分の取り消しと一人当たり三百万円の損害賠償を求める訴えを広島地裁に起こした。日本被団協が提唱する集団訴訟の第三陣で、長崎、熊本両地裁でも同日、合わせて十八人が提訴。「審査が機械的で厳しい」と批判のある認定制度の在り方が法廷で争われる。

 訴状によると、二十四人は一九四五年八月六日、爆心地から〇・五キロ〜四・一キロで被爆。ほかの三人は十九日までに救護などで爆心地付近に入り被爆した。その後、がんや原爆白内障などを患い、認定申請したが、いずれも国に却下された。

 国は従来、爆心地からの距離を基に被曝(ひばく)線量を推定する「DS86」を基準に審査。「DS86」の機械的適用に疑問を呈し、国の敗訴となった二〇〇〇年の「長崎原爆松谷訴訟」最高裁判決を受け、翌年、被爆距離や年齢ごとに、放射線ががんの発生に影響したウエートを示す「原因確率」を導入した。

 原因確率について原告は「DS86を算出データに使い、科学性を失っている」と批判。「黒い雨など放射性降下物の影響が無視され、入市被爆者が切り捨てられている」などと訴えている。

 広島弁護団はこの日、提訴期限の関係で男性一人がすでに九日に広島地裁に提訴したことを明らかにした。この男性も含め、全国での集団訴訟の参加者は第一、二陣と合わせて七十四人になる。広島ではさらに追加提訴を検討している。

 厚生労働省によると、昨年三月末の被爆者健康手帳の所持者は二十八万五千六百二十人。うち原爆症の認定被爆者は二千百六十九人と0・76%にとどまっている。同省健康局総務課は「訴状が届いておらずコメントできない」としている。

 【写真説明】原爆症の認定申請却下処分の取り消しを求め、広島地裁に提訴する被爆者たち

 ≪解説≫ 不信の声に行政は耳を

 原爆症認定集団訴訟は、国の被爆者援護施策そのものを問う。厚生労働省はまず、国の対応に不信感を抱く原告たちの声に、真しに耳を傾けるべきだ。

 その不信感は、厚労省から届く「却下通知」の文面に向く。「原子爆弾の放射線に起因しておらず、また、治癒能力が原子爆弾の放射線の影響を受けてはいない」

 被爆者は病状も被爆状況も異なるのに、その文面はほぼ共通する。

 また、国が認定審査の基準に使う「原因確率」に対し、原告たちは「個々のケースの判断はできない」と批判。厚労省は「個々の状況に合わせて判断している」と一般的な説明に終始し、行政の説明責任を十分果たしているとは言えない。

 今回の原告には、従来の実態からすると認定は困難視される二キロ以遠の直接被爆や、入市被爆者もいる。遠距離被爆や放射性降下物などによる人体への影響についての立証が原告側に求められる場面も予想され、老いて病気を患う被爆者にとっては、つらい法廷となる。裁判の迅速な進行とともに、「法廷外」でいかに市民の理解を得るかも課題となる。

 被爆後五十八年たった今も原爆被害の全体像は解明できず、それだけの被害をもたらすのが核兵器の非人間性にほかならないことを、今回の訴訟は突き付けている。(森田裕美)

ホーム社説天風録地域ニュースカープ情報サンフレ情報スポーツ情報全国・世界のニュース