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戦車から劣化ウラン イラク調査団が採取 '03/7/16

 ▽表面に微粒子

 「劣化ウラン弾禁止(NO DU)ヒロシマ・プロジェクト」がイラクに派遣した調査団が、現地で戦車の表面をふき取ったろ紙に、劣化ウランの微粒子が付着していたことが十五日、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)の調査で分かった。

 微粒子が見つかったのは、首都バグダッドの西三十六キロのアブグレイブで、道路わきに放置されたイラク軍の戦車。調査団は、劣化ウラン弾が貫通したとみられる弾痕周辺や車体を、ろ紙でふき取った。

 原医研の星正治教授(放射線物理学)らは、ろ紙に付着していたウランの濃縮度を測定。天然ウランではウラン235が0・7%占めているのに対し、0・05%しかなかったことから、劣化ウランと断定した。

 劣化ウラン(ウラン238)は、天然ウランからウラン235を濃縮分離して生じる低レベル放射性廃棄物。比重が重く、砲弾の弾芯(だんしん)に使われる。

 星教授は「危険性や人体への影響を議論するには、尿のサンプルなども調べる必要がある」としている。原医研は、調査団が持ち帰った土壌や尿のサンプルについて、金沢大自然計測応用研究センター・低レベル放射能実験施設と協力して、詳しい調査を進める。

 ▽劣化ウラン弾廃絶働きかけ強化要請 外務省にNGO

 イラクで放射能被害を引き起こしている劣化ウラン弾の根絶を呼びかける非政府組織(NGO)のメンバー五十人が十五日、外務省を訪問。日本政府によるイラクでの被害調査や、国際社会に劣化ウラン弾廃絶への働きかけを強めることを求める要請文を提出した。

 要請文は、米国が使用区域や規模を明示しないため、現地での汚染調査が遅れている実態を指摘。積極的な現地調査や医療支援を求め、劣化ウラン弾の使用や生産の禁止に向け日本政府が主体的に取り組むことを盛り込んでいる。劣化ウラン弾廃絶に向けた努力を求める秋葉忠利広島市長のメッセージも提出した。

 これに対し、外務省は独自の現地調査の実施には否定的だった。「アラブイスラーム文化協会」代表のジャミーラ高橋千代さん(63)は「医療物資の不足が目立つ中で、日本のやるべきことは自衛隊の派遣ではなくて医療支援だ」と話していた。




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