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軍縮教育の意義確認 国連会議、教諭参加しセミナー '03/8/22

 大阪市の大阪国際交流センターで開催中の国連軍縮大阪会議は三日目の二十一日、「軍縮教育セミナー」を開いた。軍縮会議では初めての試みで、市内の小中高校の教諭約五十人が、会議参加者と議論を交わした。

 国連は昨年夏、インターネット活用など「軍縮教育」促進の報告書をまとめた。セミナーではまず、この報告書作成に当たった専門家会議から、モントレー国際大のウィリアム・ポッター不拡散研究センター長や、国際平和ビューローのケイト・デュース副会長ら六人が、軍縮教育の意義や実践方法を報告した。

 これを受け、大阪市立小教諭の栄隆弘さん(42)は、子どもたちが広島で被爆者の証言を聞いて初めて平和を自分の問題としてとらえ始めたエピソードを紹介し、「軍縮教育は平和教育。被爆の悲劇から再生したヒロシマ・ナガサキは生きた教材だ」と訴えた。

 教諭たちからはこのほか、「身近なところから戦争体験を語り継ぐべきだ」「日本の平和憲法の意義を世界に広めていかなくてはならない」など、平和の文化を世界に伝える被爆国の役割を指摘する意見が相次いだ。軍縮会議は二十二日、四日間を総括して閉幕する。

 ■世論つくる教育こそ力/国際平和ビューロー・デュース副会長に聞く

 国連軍縮大阪会議は、軍縮・不拡散教育を初めて大きなテーマに掲げた。二十一日にあった軍縮教育セミナーで、国連の専門家会議メンバーとして報告した国際平和ビューロー副会長のケイト・デュースさん(50)=ニュージーランド=に、軍縮教育の意義などについて聞いた。(森田裕美)

 ―今回のセミナーをどう見ますか。

 市民に公開する軍縮会議は、政府や自治体関係者、学者、一般参加者がいっしょになって、軍縮への可能性を追求できる大切な場。専門的な報告をするだけでなく、やりとりの時間を多く持ったセミナーにこそ意味がある。

 ―なぜ軍縮教育が必要ですか。

 平和をつくりだすには核被害の実相や世界の現状を知ることが重要。私自身、音楽教諭だった二十数年前、広島や長崎の被爆者のことを知らなかった。しかし今、世界のヒバクシャの苦しみを心に抱くことで、核開発競争をやめさせなくてはと強く感じている。世の中を変えるのは世論。世論をつくる人間を育てるのは教育。母として教諭として「教育」の重要性を痛感している。

 ―広島市は「広島・長崎講座」開設を世界の大学に呼び掛けています。

 素晴らしい取り組み。専門家会議の報告書に、被爆地広島・長崎の平和行政に学ぶべきだと書いた。両市の平和関連ホームページも役に立つ。

 ―どう広げますか。

 軍縮教育は本来、政府が主導しなくてはいけないが、核抑止論を唱える国では矛盾を抱えてしまう。だから世界に広げるには、地方自治体や非政府組織(NGO)、教諭たちの連携が不可欠。世界情勢は不穏だが、何事にも遅すぎるということはない。一九七〇年代にどれだけ核兵器が存在していたかを考えれば、悲観することはない。軍縮教育の活動を続けたい。

 【写真説明】「平和をつくりだすには教育あるのみだ」

 


 <プロフィル>1970年代から反核平和活動を始め、96年に「核兵器使用は一般的に国際法違反」との国際司法裁判所の勧告的意見を引き出す運動の中心を担った。97年から現職。平和学の博士号を持ち、国内の大学で教える。



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