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チェルノブイリ原発事故きょう20年 ('06/4/26)

 ▽がん死食い止め検診や登録制を

 旧ソ連・チェルノブイリ原発事故から26日で20年。現地では、低線量の放射線被曝(ひばく)がこれから先も続く。広島・長崎の被爆者にがんが明らかに増えたのも、被爆20年後ごろからだ。健康被害を最小限に食い止めるために、定期検診システムや、がん登録制度の整備など、広島・長崎が培ってきた経験を生かしたい。(編集委員・山内雅弥)

 広島の経験生かせ

 事故後、大幅な増加が明らかになっているのが甲状腺がん。放射性ヨウ素で汚染された牧草を食べた牛の乳に濃縮され、人が飲んで内部被曝したのが原因とされる。事故五年後ごろから、子どもたちに増え始めた。

 世界保健機関(WHO)が今月まとめた報告書によると、ベラルーシ、ロシア、ウクライナの三カ国の高汚染地域で事故当時、十八歳未満だった約五千人が甲状腺がんと診断された。甲状腺がんの発生は「今後数十年にわたって増え続ける」と予測する。

 白血病は、事故直後に高線量放射線を浴びた作業員で二倍の発生になっている以外、住民に明らかな増加傾向はないと報告。閉経前女性の乳がんについては「高濃度汚染地域でわずかに増える兆しがある」としている。

 ただ、WHOは低線量被曝についての米科学アカデミーの報告などを基に、「除染作業員や汚染地域の避難民の間で、原発事故に起因するがん死者が最大九千人に達するかもしれない」とした。

 原爆被爆者の場合、まず白血病が被爆五年後ごろから増え始め、十年後ごろから甲状腺がん、二十年後ごろから乳がんと肺がんの増加が統計的に確認され、悪性腫瘍(しゅよう)はさらに増え続けるという。

 短時間に高線量の放射線を浴びた広島とは被曝のパターンが違うとはいえ、チェルノブイリでも今後、広島・長崎と同様、潜伏期を経てさまざまな臓器のがんが発症してくる可能性は高い。今後、長期間にわたって住民をフォローし、がんの早期発見・早期治療につなげるシステムづくりが求められる。

 広島では開業医師の活動をきっかけに、広島原爆障害対策協議会(原対協)の前身が一九五三年に発足。健康管理・増進センターを拠点にした施設検診と出張検診を続け、現在も年間三万五千人が受診するなど、がんの早期発見にも一定の成果を挙げてきた。

 チェルノブイリ被災者も受け入れてきた同センターの佐々木英夫所長は「地元で質の高い検診を定期的に実施して、信頼関係を築くことが鍵になる」とみる。

 検診と並ぶがん対策の両輪となるのが、がん患者の居住地、生年月日、診断や治療などの情報を登録する「がん登録」だ。広島市では五七年、被爆者のがん多発を背景に医師会事業(現在は市事業)として始まり、これまでに十一万件の情報を集積。地域でのがん発生動向をつかむことで、効果的ながん検診にも役立つはずだ。

 「被爆後六十年たってもなお、被爆者の45%が甲状腺疾患を発症している」―。放射線影響研究所の研究結果が今年三月、米医師会雑誌に発表された。放射線影響の深刻さとともに、広島・長崎で築いてきたシステムの必要性を、あらためて示している。


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