「保有」こそ軍縮への道/インド人民党


70歳の誕生日を迎え、支持者に祝福されるアタル・ビハ
リ・バジパイ氏(右端)。「政権に就けば核実験をする」
と言う
(ニューデリー市)

 クリスマス当日の昨年十二月二十五日、ニューデリー市街中心部 の政府公邸でインド人民党(BJP)のリーダー、アタル・ビハリ ・バジパイ氏に単独会見した。

 この日は氏の七十歳の誕生日。大勢の人が祝いにかけつける合間 を縫ってのインタビューとなった。

 ヒンズー至上主義を掲げるBJPは、一九九六年五月の下院総選 挙(定数五四四)で、百六十二議席を占め、最大会派となった。組 閣でバジパイ氏が首相に選ばれる。が、BJPと連立を組む党はな く、新内閣は過半数与党の条件を満たせぬまま十三日で崩壊した。

 BJPはこの時の選挙戦で「政権に就けば核実験を実施し、核保 有国宣言をする」と公約に掲げた唯一の党だった。それだけにバジ パイ氏に会って真意を確かめたかった。

 三十分ほど待ってようやく部屋に通される。あいさつもそこそこ に、いすに腰を下ろすと単刀直入に尋ねた。

 ―議会で最大会派のBJPは近い将来政権に就く可能性がありま す。核実験を実施するとの選挙公約は今も変わらないのですか。

 「変わっていない。BJPは核兵器のない世界を創造したいと願 っている。しかし、核兵器を所有し続ける国がある限り、核軍縮の 手段としてわれわれは核兵器開発を放棄するつもりはない」  ―核軍縮の手段と言うと?

 「それはこう言うことだ。インドはこれまでずっと核軍縮を訴え てきた。だが、核保有五カ国はいつまでたっても核廃絶に向けての 努力をしない。自分たちだけが核兵器を所有して、他国に持つなと 押し付けることはできない。同じ土俵にたたないと、彼らは真剣に 核軍縮に取り組まないということだ」

 ―でも、それは一層核軍縮を困難にし、インド亜大陸をはじめ世 界の緊張を高めることになるのでは…。

 「考えてみたまえ。米英ロはむろん、中国もフランスも研究所で の実験に必要なデータを得るまで核実験をやめなかった。包括的核 実験禁止条約(CTBT)に調印したのはその後だ。軍縮に取り組 む姿勢とはほど遠い」

 「わが党は抑止力として核兵器を持とうというのだ。決して最初 に使用しないということも宣言している。パキスタンは既に核兵器 を所有しているか、製造能力を有している。その状況にインドが無 関心でいられないのは当然だろう」

 ―インドが再び核実験を実施すれば、パキスタンも実行するでし ょう。

 「そうかもしれない。でも、それは核製造能力のある国が、核保 有国として名乗りをあげるということにすぎない」

 ―あなたは核戦争の実相を知っているのですか。

 「数年前に広島を訪れ、平和祈念式にも参列した。ヒロシマの悲 劇をこの目で見、今もさまざまな後遺症で苦しむ被爆者にも会っ た。核兵器はこの地球上から無くさなければならないのだ。しか し、ある国々だけの所有を認める不平等は認めることはできない」

 ―今後、パキスタンとの関係改善は望めますか?

 「楽観している。インドは中国との間に残る国境問題をしばらく 封印して関係改善を図ってきた。今は相互信頼が芽生えている。同 じようにパキスタンとはカシミール問題をしばらく冷凍庫に保管し て、その間に経済協力や人的交流を深めてゆけば信頼関係を醸成で きるだろう」

 ベテラン政治家は最後まで穏やかに語った。「党内きってのリベ ラル派」との評が高い。七七年から三年間続いた連立の人民政府時 代は、外相として印パの関係改善に務め「両国関係が最もよくなっ た時代」とも言われる。

 しかし、彼個人への評価とは別に、パキスタンでは最近のBJP の台頭に警戒感を強めている。


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