【若いあなたへ】


 1994年7月、宇宙飛行士の向井千秋さんはアメリカのスペースシャトル「コロンビア」 から、地球に住む私たちに語りかけてきました。「回る展望台から、地球の壮大な景色を見て いる感じです。暗黒の宇宙の中で地球は本当に美しい」

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 夕陽を背に草原をいくライオンの家族、南十字星のまたたく海で漁をする船、都会のビル 街へ急ぐ人と車の列、森の小道をかけていく子どもたち…。美しい地球の上で人と生き物が 暮らしている風景。そのすべてが私たちのかけがえのない財産です。

 しかし地球には今、たくさんの困難な課題があります。青い海が汚されていき、森林が壊 されています。貧しい人や弱い人の人権が守られず、国や民族間の争いも絶えません。そし て今も大量の核兵器を持つ国々があり、人類の生存を脅かしています。

 第二次世界大戦中の1945年夏、広島市は一発の原子爆弾で破壊され、多数の市民が殺 されました。やっと生きのびた人も放射線の影響で次々に亡くなっていきました。

 広島の市民は、アジアへの侵略など戦争のもとになった日本の歩みを反省すると同時に 、このような核兵器が二度と使われてはならないと考えました。そのため第二の被爆地・ 長崎の市民とともに、世界の人々に原子爆弾がどのような被害をもたらすかを伝えてきました。

 中国新聞社もまた被爆した新聞社として、被爆後の広島で起きたことを記録し、新聞を 通して核兵器のもたらす悲惨な結末を世界に警告する仕事を続けてきました。

 核戦争の恐怖は、核兵器をなくすことに世界中の人が合意すれば防ぐことができます。 そのための努力は、地球が抱えている他の多くの困難を解決する道にも通じています。

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 この本は地球の明日を生きる皆さんへの、ヒロシマからの手紙です。
 核兵器のない、美しい地球への航海図を一緒に描いてみませんか。