中国新聞

タイトル 第2部 自治体の課題 
 
 4.勉強不足

議会研修 ごくわずか
 解説書案に低い関心

 「まさか、全国でうちだけとは思わなかった」。境港市議会の幡 野義行議長は振り返る。昨年十二月二日、内閣安全保障・危機管理 室(安危室)の担当者を招き、周辺事態法の研修会を開いた。それ が地方議会では全国で初めてだったのだ。

 質問議員2人だけ

 日米防衛協力のための新指針(ガイドライン)に反対する陳情を 審議する参考に―。それが研修会の直接の理由だったが、背景は別 にあった。十月の米軍駆逐艦「クッシング」の突然の境港入港であ る。

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境港市議会の本会議。周辺事態法について政府の説明を受 け、議論した(昨年12月)

 「ガイドラインを身近な問題として考えるようになり、それでは 議員の知識が不十分ということになった」と幡野議長は明かす。安 危室に職員派遣を打診すると、意外にも二つ返事。旅費も政府持ち だった。

 十六人の市議全員のほか、市の幹部職員が顔をそろえた研修会に 一時間半費やした。ただ、大半は安危室による説明で、質問した市 議は二人だけにとどまった。

 「情報公開がないまま戦争に巻き込まれる恐れはないか」など矢 継ぎ早に質問をした渋谷健治市議(共産)は「他の議員ももっと積 極的に、疑問をただすべきだった」と不満を漏らす。

 これに対し、周辺事態法に反対の社民党に所属する幡野議長は語 る。「思った以上に自治体に裁量があることも分かった。疑問点は あるが、これから議論する上で知識がないと、国と同じ土俵に上が れない」

 周辺事態法九条は、すべての自治体に米軍や自衛隊への協力要請 がありうることを規定する。政府は都道府県はもちろん、三千余り の全市町村に同法の趣旨を周知したいとする。だが、自治体や議会 側の関心は低いのが現状で、境港市議会はごく例外的なケースだ。

 調査回答 横並びも

 今年二月。広島の市民団体が、広島県内の市町村に周辺事態法の 対応を問うアンケートをした。ところが、政府が昨年七月に発行した 周辺事態法の解説書案について、回答の半分近い十六町村が「受け 取っていない」「不明」と答えた。

 実際には広島防衛施設局と自衛隊広島地方連絡部が七月中に配布 済みだった。「もらっていない」とした町の幹部は「部下が受け取 ったが、アンケートへの回答を書いた私には報告していなかった。 正直、解説書案に基づく議論もしていない」と漏らした。

 自治労も動き低調

 島根県で昨年末に実施された市民団体による同様のアンケート。 松江市周辺の八束郡八町村は、表現が細部までほぼ同じ回答をして きた。「郡で横並びで調整をしたのだろう。一つ一つの自治体の対 応が問われるのが周辺事態。主体性を持って議論してもらいたい 」。アンケートを実施した市民団体の代表、鬼頭宏一島根大名誉教 授は苦言を呈する。

 自治体労組の動きも、必ずしも活発ではない。岩国基地を抱える 自治労山口県本部。昨年十二月の定期委員会で、周辺事態法への取 り組みを「継続討議」とした。「勉強不足で、すぐに取り組めな い」「議論が十分ではない」という発言も出た。

 「今後、『協力しない』宣言を打ち出したい。でも、法律が施行 された今、できる前と比べて、運動のヤマ場をつくっていくのは難し くなっている」。森本正宏書記長は胸のうちを明かす。


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