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00/5/27
(中)
日本は非核国か


  

自任の調停役空回り 保有国寄りの見方強く
20日未明、NPT再検討会議の閉幕ぎりぎりまで国連本部 で協議するNACの大使ら(共同) 
20日未明、NPT再検討会議の閉幕ぎりぎりまで国連本部 で協議するNACの大使ら(共同)
 「日本は核保有国の味方なんだろう?」

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議が大詰めに差し掛かった十 六日、国連のダナパラ事務次長・軍縮局長が日本代表団の一員に、 こうささやいた。

 ■地元並み陣容

 核保有国と非核保有国とを取り持つ調停役―。日本政府が今回の 再検討会議で自任した役回りだった。核軍縮の停滞など国際環境は 思わしくなく、会議が何も合意できずに失敗すればNPT体制が崩 壊しかねない。事前の厳しい情勢分析が、会議の成功を導こうとい う自覚につながった。

 被爆国として、包括的核実験禁止条約(CTBT)早期発効など 八項目の包括提案をした。採択を目指して事前に各国へ根回しし、 オーストラリアが共同提案者に名乗りを上げた。外務省を中心に最 大二十四人を会議へ送り込み、地元米国と並ぶ陣容を整えた。期間 中、個別に各国と折衝する裏舞台外交も積極的に続けた。

 そんな努力が真価を発揮した場面はあった。将来の核軍縮課題を めぐって核保有国と新アジェンダ連合(NAC)諸国が対立し、議 論が行き詰まった十七日深夜、日本の登誠一郎軍縮大使が思わず手 を上げた。「会議をぶちこわす発言は慎んでほしい。人類全体が注 目しているんだ」。翌日の保有国の譲歩を引き出すきっかけになっ た大演説とされる。

 ■転換迫られる

 だが、スリランカ出身のダナパラ次長の言葉は、調停役としての 日本の限界を物語る。保有国とNACが対立した最大の論点「核兵 器完全廃絶の疑いのない約束」について、日本は「じっくり議論し よう」と発言はしても、賛否を明らかにはしなかった。被爆国であ り、同時に核超大国・米国と同盟関係を結ぶ日本。会議で大多数を 占める非核保有国は、日本が中立的立場に徹すれば徹するほど、 「保有国の無言のパートナー」との見方を強めた。

 日本の包括提案には当初、カナダも同調する意向だった。しか し、カナダは国連サイドから「調停役を果たしてほしい。日本提案 に乗って周囲から『色』付きで見られるのは避けてほしい」と説得 され、共同提案者から降りたという。日本が調停役にふさわしいと は必ずしも見られていないエピソードであろう。

 会議の結論である「核廃絶の明確な誓約」は、日本がこれまで主 張した「究極的廃絶」の否定を意味する。「もう賞味期限切れなの さ」と外交筋。会議の成功を念じ舞台裏を走り回った日本にとっ て、皮肉にも核軍縮外交の転換を迫られる会議にもなった。

 外務省の服部則夫軍備管理・科学審議官は、総括会見で声を落と した。「NACの功績を認めざるを得ない」。そして思い直したよ うにトーンを上げた。「例えばこれまでCTBTの未署名、未批准 国に特使を派遣し、頭を下げて要請してきたのは、NACではなく 日本なんだ」「これからは(NACと)タッグを組んで核兵器廃絶 へ取り組んでいきたい」

 ■NGOが活躍

 今回の会議でNACが存在感を増したのは、非政府組織(NG O)との連携プレーが奏功したとみられている。非公開の会合が終 わるたび、NACの代表らは米国や欧州のNGOメンバーと意見交 換を繰り返した。NGO側も会期中、ニュースレターを発行し、会 議の模様をリアルタイムで伝えた。議場入り口には核軍縮関連の論 文集やパンフレットを山積みし、国連本部の内外でセミナーや討論 会も繰り返した。

 再検討会議を傍聴した数少ない日本のNGOの一人、ピースデポ の梅林宏道代表は、欧米NGOの調査研究能力と行動力に舌を巻 く。「日本のNGOは、政府方針にやみくもに反対するだけではな く、政策をぶつけ合うレベルにやっと届こうとしている段階だ。専 門知識の蓄積と発信、国会議員を巻き込んだ政策提言など、われわ れの課題を実感させられた」

 「核廃絶の明確な誓約」。日本の政府もNGOも、その言葉を行 動へと変える時である。

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