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みんなの平和教室

 瀬谷ルミ子(日本紛争予防センター事務局長)
 
 


前回の課題

 世界から核兵器をすべてなくすことと、国連や選ばれた核保有国が核の不正な使用を監視しながら管理することと、どちらを選びますか。それを実現するうえで問題になることはなんですか。
 
 
瀬谷ルミ子 せや・るみこ

1977年、群馬県生まれ。中央大卒、英ブラッドフォード大学院修了(紛争解決学)。紛争後に兵士から武器を回収し社会復帰させることや平和構築が専門。NGO職員(ルワンダ)、国連ボランティア(シエラレオネ)、日本大使館書記官(アフガニスタン)、国連職員(コートジボワール)などとして紛争地での支援活動に携わってきた。2007年4月から日本紛争予防センター事務局長。

日本紛争予防センター http://www.jccp.gr.jp/
瀬谷さんのブログ「紛争地のアンテナ」
   http://ameblo.jp/seyarumi


存在自体にリスク
難しい管理者決定
少しずつ減らす


送っていただいた皆さんの考えの多くが「核兵器をすべてなくすこと」でした。今回は広島の方ばかりだったので身近に核兵器の被害を知る機会があるからでしょうか。無差別に多くの民間人が犠牲になるからというのが理由に目立ちました。

また「たとえ核兵器を使用しなくても何かの交渉をするときに脅しとして使う国がある」「不正な使用を管理するために選ばれた国が勝手に核兵器を使用しないとは限らないし、核兵器がある限り誰かが使おうとする」という声もありました。

しかし核兵器廃絶の実現には壁もあります。

広島市佐伯区、砂谷中2年池上晶華さんは「保有国が約束どおり核兵器を処分するか分からないし、自分が先に処分したら他の国から攻撃されるかもしれないと不安になることも考えられる」と指摘していました。

また核兵器が、自国や地域の安全を敵から守る切り札だと考える国に、代わりにどのような自衛策があるのかを示すのも必要になるでしょう。


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核兵器をなくすべきだという答えの一方で、「選ばれた核保有国や国連が核の不正使用を防ぎながら管理する」という選択をした人もいました。廃絶は理想的だけれど、核保有国が反対するから実現は難しいなどの理由でした。

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核実験に抗議し、原爆慰霊碑前で座り込む被爆者や平和団体の人たち(2006年10月)

こちらの選択肢は、今の世界の状態により近いものだと思います。しかし、核保有国や管理する者を誰がどうやって決めるのか(広島市安佐南区、祇園東中2年西村あきほさん)、国連や取り決めに参加しない国がいるし、国連常任理事国との関係が悪い国が反発する(祇園東中2年、前田愛さん)という問題も実際には考えられますね。

例えば、核拡散防止条約(NPT)は、米国、英国、フランス、ロシア、中国以外の核兵器の保有を制限するなどの取り決めですが、インド、パキスタンのように加盟していない国には効果がありません。イランは日本と同じようにNPTに加盟し、核兵器ではなく核の平和利用(発電所など)を宣言していますが、核兵器の原料にもなる濃縮ウランを造っていることを数年前まで報告していなかったため、宣言を疑う国もあります。


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日本は核兵器を保有していません。しかし同盟国の米国が核兵器を持っているため、周辺の国と対立しても守られるという指摘があります。核兵器を持っているのと同じだというのです。「核の傘」の下にいるという話を聞いたことはありますか。人類史上初めて被爆した日本が「核兵器をなくそう」と訴えることを、「核兵器に守られているのにおかしい」と批判する人もいます。

また米国とは別に日本独自で核兵器を持つべきだという人もいます。

ただ核兵器の恐ろしさを身をもって知る被爆者たちは「核兵器と人類は共存できない」として、廃絶を強く訴えています。広島市長が会長を務める平和市長会議は、2020年までに地球上からすべての核兵器をなくすことを目標に、各国の加盟都市に活動を呼び掛けています。

核兵器をなくすことを実現するには、反対する人たちと意見をどうまとめていくかが重要なので、少しずつ減らしたり(砂谷中2年、隅本絵里香さん)、相手が納得することを考えたりしながら、一歩一歩実行することになります。それには、反対する人はなぜ核兵器を持つのか、どうすれば手放すのかをきちんと考えることが必要になります。

最近のニュースでも、イランの核開発疑惑や、北朝鮮が核を手放すための話し合いの様子などが多く取り上げられています。どういう時に話し合いが進んだり上手くいかなかったりするのか、それはなぜか、公平に話し合われているかなどに興味を持ってみてください。