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みんなの平和教室

 瀬谷ルミ子(日本紛争予防センター事務局長)
 

武器はあくまで「道具」。使い手や動機に対処を

前回、治安を守る仕組みについて質問したところ、答えに「武器をなくすこと」を挙げた人たちがいました。武力紛争の間や、戦闘が終わってからも、紛争地には大量の武器が存在しています。今回はこの武器に対する取り組みについて考えてみたいと思います。

 
瀬谷ルミ子 せや・るみこ

1977年、群馬県生まれ。中央大卒、英ブラッドフォード大学院修了(紛争解決学)。紛争後に兵士から武器を回収し社会復帰させることや平和構築が専門。NGO職員(ルワンダ)、国連ボランティア(シエラレオネ)、日本大使館書記官(アフガニスタン)、国連職員(コートジボワール)などとして紛争地での支援活動に携わってきた。2007年4月から日本紛争予防センター事務局長。

日本紛争予防センター http://www.jccp.gr.jp/
瀬谷さんのブログ「紛争地のアンテナ」
   http://ameblo.jp/seyarumi


単に「武器」と言っても、ミサイルや戦車などの「重火器」、以前に話をした核兵器・化学兵器などの「大量破壊兵器」など、さまざまな種類があります。そんな中、世界の紛争地でもっとも広く使われ、多くの被害者を出しているのはピストル、マシンガン、ライフル、手りゅう弾、地雷など、一人か二人で持ち運ぶことができる「小型武器」です。

米国や日本などでも銃を使った犯罪があることからも分かる通り、小型武器は世界中に流通しています。現在、60億以上の小型武器が全世界に流通し、90以上の国がその製造に、1200以上の企業がその売買にかかわっているといわれています。


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これだけ多く出回っている理由は、「便利」だからです。

第一に、価格が安く、途上国では闇市場で一般の人でも数千円で手に入ります。第二に、軽くて持ち運びが楽なため、禁止されたところにもこっそり輸送しやすいし、子どもでも運ぶことができます。第三に、つくりがシンプルなため、手入れも楽で、未経験者でもすぐに使えます。第四に、さびたり古くなったりしても使えるので長持ちします。

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武器と弾薬を誇示するシエラレオネの反政府軍の若者(2001年撮影、筆者提供)

でも、武器を使う人にとってのこれらの「便利さ」は、使われる被害者にとっては、大きな「危険」になります。現実に、多くの人が日々小型武器によって命を落としています。

では、これらの武器がなくなれば、問題は解決し、紛争地に平和がもたらされるのでしょうか。

この質問は「日本から銃やナイフをなくせば、凶悪犯罪はなくなるか」という問いに似ているかもしれません。凶器は、あくまで犯罪の手段であり「道具」なので、その使い手である犯罪者や犯罪の動機に対処しないと、他の手段が使われ、結局防げないのです。

紛争地でも同じように、「武器」をなくすだけでなく、その武器を使って戦いに参加した「兵士」や「戦闘員」が再び争いや暴力を行わないようにするための対応が必要になるのです。


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一方、日本の犯罪者と紛争地の兵士・戦闘員の間の大きな違いは、紛争地では(1)武器を使って「集団」で殺害や暴力が行われる(2)多くの場合集団で争うことを命令する指揮官や権力者がいる(3)戦闘員にとっては武器を使って戦うことが職業または収入源であるなど、武器が重要な生活の一部になっている(4)何十年も暴力を取り締まる法律や警察が機能していない場合は、それが社会的に悪いことだと考えられていない―などです。

なかには、誘拐や脅されたりして、無理やり銃を持たされ戦いに参加するしかなかった人たちもいます。何十年も戦っている場合は、学校に行く機会もなく、戦う以外にお金を稼ぐ方法を知らない人たちもいます。つまり、兵士や戦闘員といっても、加害者ばかりでなく被害者でもある人がいます。そして、司令官や権力者の命令で戦っている場合も多いのです。

このような中、紛争がひとまず収まった後、兵士や戦闘員から武器を回収して治安を回復しようとする試みが紛争地各地で行われるようになっています。紛争地の兵士や戦闘員の置かれる複雑な立場や状況を踏まえて、課題を考えてみてください。

 


今回の課題

 紛争地で十数年も戦い続けてきた兵士や戦闘員に銃を手放させたいとき、どうしたら応じると思いますか。武器と引き換えに、何かを要求してくるでしょうか。その要求に応じますか。

※締め切りは11月16日(必着)です。
 
 
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