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 水本 敏子(上)  パレスチナ 規制の中で


イドナ村の女性協同組合センターでポーチやエプロンの色の組み合わせを検討する水本さん(左)

みずもと・としこ

1958年、広島市生まれ。洋裁学校を卒業後、服飾会社に就職、3年後に独立し、ナイトウェアのメーカーを始める。25歳の時からハンセン病患者施設訪問など多くのボランティアを経験。95年、パレスチナへ。当初はNGO(非政府組織)に所属しイドナ村での「女性収入創出プロジェクト」に携わる。2002年からはNGOに所属せず、活動を続けている。東エルサレム在住。

私は中東パレスチナの女性たちが収入を得られるよう現地で活動しています。パレスチナ人は、政治的にも経済的にも文化的にも不自由で抑圧されています。そんな女性たちが収入を得るにはどうしたらいいのか。協力と支援をしています。


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15年前に私がパレスチナで会った女性たちはまともな教育を受けていませんでした。私が持っている洋裁の技術と組み合わせて何ができるかを考え、協同組合をつくることにしました。

場所はヨルダン川西岸地区南に位置するイドナ村です。組合をつくり、最初の数年間は毎日村に通って裁断、縫製、仕入れ、会計などの指導をしました。家には家具もなく、村から出ることもほとんどない人たちです。当初仕入れなどは私がしました。

女性たちは新しい感覚のかばん類や小銭入れなどを作っています。多くのパレスチナ女性は子どもの時、伝統のクロスステッチの刺し方を家族から習い身に付けています。最近はこのクロスステッチを生かしショールや小物も作っています。三つの宗教の聖地エルサレムを訪れる観光客に販売しています。

私の住む東エルサレムのオリーブ山からイドナ村までは、車で1時間半です。イドナ村の協同組合には刺しゅうを専門にする女性50人と縫製を担当する女性6人がいます。そして組合スタッフは、デザイン、縫製、会計、コンピューターを担当する計4人です。

スタッフと私は毎日、裁断、見本づくり、材料の仕入れなどについて話し合います。刺しゅうや縫製を担当する女性たちは週1回、センターで仕事の引き継ぎをしたら自宅で作業します。

失業率60%のパレスチナでは、家族の誰かが働き、家計を支えます。夫たちの主な仕事は、イスラエル側での建築労務です。しかし、イスラエルに入る許可証をもらえないと、仕事を得ることができません。


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経験や文化の違いで組合が形になるまでには長い時間がかかりました。女性たちは外国人と触れることもないイスラム教徒の保守的な村社会に生きていたし、自分たちで仕事を運営し収入を得ることは想像できなかったそうです。ましてや初めて村を訪れた日本人とどうやって仕事ができると想像したのでしょうか。

それが今では稼いだお金を子どもの教育費や家の補修費に充てています。家族が毎日、食事にありつけることは喜びと自信につながっているようです。イスラエル人なら30分の道のりを、パレスチナ人は通行できない道があるので2時間かけて移動します。そんな状況で女性たちは材料を仕入れ、村まで運びます。私はデザインの提案と品質の向上の確認、そして販路の開発をしています。

多くの訪問者を案内するたびに「女性たちは楽しく仕事をしているのがよく分かる」とほめてもらいます。国のないパレスチナの人たちが、過酷な生活の中で生き生きとしている姿は、私にやりがいをもたらしてくれます。共に泣いたり笑ったりしながら文化の違いを知り、受け入れることを学んでいます。

 
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