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みんなの憲法をつくろう
〜これがぼくらの草案〜

3号のテーマは憲法です。「なんだか難しそう」。そう思ったのではないでしょうか。ジュニアライターも最初は戸惑いました。でも学ぶうちに、憲法には「こんな国にしたい」という「強い意思」が込められていることに気づきました。

世界では約180の国が憲法典を持ち、このうち150が、平和主義を盛り込んでいるそうです(駒沢大法学部・西修教授調べ)。各国が平和を求めているのです。

「ひろしま国でも憲法を作ってみよう」。ジュニアライターが言い出しました。日本国憲法の「前文」、「9条」を参考に、各国の憲法も勉強しました。できあがったのは、あくまで草案(そうあん)です。ひろしま国は誰もが参加できる国境のない国ですから。皆さんが意見を寄せてくれることで、より素晴らしい憲法ができることを願っています。


 こども議員とおとな議員が一緒に議論するんだ


草案はジュニアライターが手書きしました
ジュニアライターの思い

(1)「こども議員」 −大人だけじゃなく、子どもの意見を反映したい! 高2・本川裕太郎
(2)「笑顔」 −平和というのは、笑顔から生まれると思う! 中2・見越正礼
(3)「全力を尽くす…」 −一人一人ができることから始めよう! 高2・新山京子
(4)「核兵器」 −広島の悲劇を繰り返さないため、ここは強調したい! 高1・岡田莉佳子
(5)「平和であることの…」 −みんなで世界に平和を伝えていこう! 中1・岩田皆子

核兵器は永久に持たないよ

ひろしま国の憲法草案について話し合いをするジュニアライター

ひろしま国の憲法前文と第1条は、日本国憲法や世界の憲法を参考にし、ジュニアライター5人が何度も議論を重ねて作りました。

 まず憲法について、海外と日本を担当するグループに分かれて調べ、それぞれが自分の思う前文と第1条を書いてみました。それをまとめ「自衛のためにも武力は使ってはいけないか」「世界の人が平等だということを入れた方がいい」などと、意見を出し合いました。

 また、ひろしま国憲法は日本国憲法にはない「こども議員」や「核兵器」などの言葉を入れました。子どももひろしま国の一員として、おとなと一緒に国を作っていきたいという思いを込めたのです。小学生にも分かりやすいように難しい言葉や漢字は使わないように工夫をしました。

 被爆国であるひろしま国は核兵器を持たないことを憲法で定め、二度と悲惨なことが起こらないように、世界に訴えていきます。

 日本国内では、憲法施行60年を迎え、改憲論議が起きています。ひろしま国の憲法は、この動きとは切り離して、ジュニアライターが議論を積み上げて作りました。ただ自分たちで憲法の条文を考えてみると、憲法をより身近に感じることができたのは確かです。(高2・新山京子)

 

スタートボタンを押すと ジュニアライターの会議風景が見られるよ!

 

憲法 日本の動き

1947年に施行された日本国憲法は、60年間一度も改正されていません。現在、その憲法を変えようという動きが活発化しています。最も争点となっているのは平和主義を規定した憲法第9条です。結党以来「自主憲法制定」を掲げてきた自民党が改憲の動きをリードしています。

2005年11月に自民党は「新憲法草案」を発表しました。草案では戦力を持たないことと、交戦権を認めない第九条二項はすべて削除され「わが国の平和と独立並びに国および国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する」といった自衛軍の保持や、集団的自衛権を認めた内容となりました。

草案は自民党だけでなく民主党や、新聞社なども発表しています。このような動きが活発化している背景には、イラクへの自衛隊派遣や北朝鮮の核開発問題など日本が直面していることが関係しています。

一方で憲法を守ろうという動きも活発化し、全国各地に護憲派の人たちが「九条の会」を設立、集会などで憲法や第九条の大切さを訴えています。

このように今日本では憲法がクローズアップされているにもかかわらず、自分に関係あることだと思っていない人が多いように感じます。大きく変化している国際社会で日本はどのような役割を果たしていくべきなのか、一人一人が考える必要があるのではないでしょうか。今回の取材や勉強を通してそう思いました。(高2・新山京子)


ほかの国のことも勉強しました

地図

スイス



永世中立国 軍隊は存在

スイスは永世中立国(えいせいちゅうりつこく)です。1815年に各国に認められました。しかしスイスでは国を守るために軍隊が存在します。

憲法では、「軍は、戦争の防止に資し、平和の維持を担う。また、軍は、国とその住民を防護する。軍は、国内の安全保障に対する重大な脅威を防止し…(略)」(58条(2))と、他国を攻撃するためのものではないといいます。

徴兵制度があり、男性は全員、軍事役務につく義務がありますが、ユニークなのは女性です。「軍事役務は自由意思に委ねる」(59条(2))と、自分で決めることができるのが特徴です。(高1・岡田莉佳子)


韓国



武力は安全のため

日本の隣の国、韓国(大韓民国)は軍隊を持っています。ただ憲法では、他国を侵略するためにはその力を使わないとしています。

 軍隊について「(1)国際平和の維持に努め、侵略的戦争を否認する(2)国軍は、国家の安全保障および国土防衛の神聖なる義務を遂行することを使命とし、その政治的中立性は順守される」(5条)とあります。自国の安全のためにのみ、武力を使うということを強調しています。(高1・岡田莉佳子)


コスタリカ



イラク攻撃支持「違憲」

「平和憲法」で知られるコスタリカは、軍隊を持たないことを定めています。内戦が終わった1949年、「恒久的機関としての軍隊は禁止する」(12条)と定めました。治安を守るための警察力しかありません。また、83年には、国際武力紛争に対しての中立を宣言しています。

しかし2003年、同国政府が米国のイラク攻撃を支持することを表明しました。すると、この動きは憲法12条と中立政策を持つ国の精神に違反しているとして、一人の大学生が立ち上がりました。国を相手に、憲法に関する裁判をする「憲法法廷」に訴えたのです。

翌年、「米国支持は違憲」という判決が出ました。この結果、政府は米国への支持を取り下げました。この裁判により、コスタリカ憲法の精神は守られたのでした。(高2・本川裕太郎)


外国の法律と日本の憲法を比較している
  広島大法科大学院の門田孝教授
ジュニアライターの質問に答える門田教授

広島大法科大学院の門田孝教授は、海外と比較しながら日本の憲法の研究をしています。憲法の大切さや、平和憲法について話を聞きました。

「憲法はその国をどう作っていくかの基本となる法です。しかし実際には、その国の政治情勢などさまざまな原因によって、憲法の理念通りにならないことが起こります。憲法を尊重して、その理念に現実の社会をどう近づけていくかが大切です」と話します。

コスタリカでは、米国のイラク攻撃を支持した政府を、一人の大学生が平和憲法に違反していると訴え、勝訴しました。コスタリカには憲法法廷という特別な裁判制度があり、訴えを受けて、その法廷がすぐに憲法に合っているかどうかを判断してくれるのです。先生は「この制度があるから、裁判所による憲法保障という面が、日本よりも強化されているといえるでしょう」と言います。同じような制度はドイツなどにもあるそうです。

世界の憲法と比べた日本国憲法の大きな特徴として、門田教授は第9条を挙げます。「武力を持たず、徹底して戦争を放棄している。第二次世界大戦で、多くの人が犠牲になった反省を踏まえています」と評価します。世界ではまだ十分に知られていませんが、この9条のことをもっとアピールしていけばいいと考えています。

僕たちの「ひろしま国憲法」を見てもらいました。「ユニークなアイデアです。ほかの国にどうやって核兵器を持たせないか、どう自国の安全を確保するかなどを具体的に考えていくと、説得力が増すのではないでしょうか」と提言してもらいました。(中2・見越正礼)

 
憲法ミュージカルの脚本を手がける
  広島弁護士会の広島敦隆弁護士
「みんなが楽しくなるのが平和」とジュニアライターに語りかける広島弁護士

「いろんな国と助け合い、みんなが楽しくなるのが平和です」。そう話してくれたのは弁護士の広島敦隆さん=広島市東区=です。市民グループが毎年5月に広島市内で上演している「憲法ミュージカル」のシナリオを14年も作っている方です。

「まじめでおもしろいミュージカルがしたい」という言葉には、憲法を多くの人に楽しく理解してもらいたいという願いが込められています。

最近は9条を中心に取り上げているそうです。憲法改正の動きがあるからです。9条は日本国憲法の心臓、という広島さんは「憲法には徹底した戦争放棄がある。9条は世界に通用する」と言います。それが憲法改正に反対する背景にあります。

憲法は難しいけれど自分の問題として考えることが大切だそうです。「いつか平和な世界になってほしいという希望を持って、このミュージカルを続けていきたい」と話していました。(中1・岩田皆子)

なるほどキーワード

  • 集団的自衛権

    仲の良い国が攻撃されたとき、自分の国が攻撃されたのと同じように、防衛する権利。

  • 永世中立国

    永久にほかの国を攻撃せず、また他国間の戦争に加わらないことを宣言し、その権利と義務を持つ国。