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乾きゆく大地
   よみがえれ、緑の地球。

今回は3回にわたる「環境」特集の最終号です。地表面の問題として、減り続けている緑を取り上げました。

国連食糧農業機関のデータを基に計算すると、地球上では1分間にサッカーコート約20面分の森林が減り続けています。木がなくなると、二酸化炭素を吸って酸素を出す光合成が進まなくなり温暖化に拍車がかかります。生態系が壊れ、生物の絶滅にもつながります。

インドネシアのバリ島で今月開かれた国際会議では、温室効果ガスを減らすための道のりを示した「バリ・ロードマップ」が作られました。世界の国々が協力して環境問題に取り組もうという意識がますます高まっています。

ジュニアライターたちは取材を終え、環境を守るためにできることを話し合いました。読む人たちが自分のこととして考え、そのアイデアが広がればと願っています。

 
ノーベル平和賞マータイさんから声援  「環境に関心を」とメッセージ

2004年にノーベル平和賞を受賞したケニアの環境活動家ワンガリ・マータイさん(67)が、中国新聞「ひろしま国 10代がつくる平和新聞」にメッセージを寄せた。22号が計3号にわたって展開した環境特集の締めくくりになるのに合わせ、ジュニアライターが依頼していた。

メッセージはメールで届いた。「この教育的な取り組みを強く支持するとともに、大きな成功を祈ります。より知ることが、より正しいことをしようという意志につながるのです」と連載を評価した上で、より多くの人が環境問題に関心を持つよう呼びかけている。

マータイさんは1977年、植林活動をする非政府組織(NGO)「グリーンベルト運動」を母国に創立し、アフリカ各国に植林運動を広げた。「MOTTAINAI(もったいない)」運動の提唱でも知られる。(馬上稔子)

 
 地表面の現状
 森林減少と砂漠化問題
 

「地表面」では特に森林減少と砂漠化が大きな問題となっています。人工衛星を使って約30年調査を続けている森林総合研究所研究コーディネータの沢田治雄さん(55)に話を聞きました。

森林の減少と砂漠化は1970年代から問題視されるようになりました。国連食糧農業機関によると森林は南米やアフリカを始め、世界で年間1290万ヘクタールが減っています。そのうち植樹などで回復している分を除いても730万ヘクタールが減り続けているのです。これは全体の0・6%にあたり、沢田さんは「単純に計算すると、百何十年後にはゼロになってしまう。そうならないためにも努力しなければ」と言います。

森林減少は焼き畑農業や、森林火災、違法伐採が主な原因です。森林が減少すると地盤が緩み、土砂崩れが増えます。また、土壌に水がたまらなくなって砂漠化にもつながります。

砂漠化は、中国やアフリカなど約35億ヘクタールで進んでいます。その地域では乾燥によって農作物の生産量が減るなどの影響を受けています。

植物に比べて動物が多すぎる「過放牧」も砂漠化の原因です。砂漠になった地域では農作物が育たなくなります。近隣の国に、砂とともに汚染物質が飛んでいくなどの問題も起きます。また、すみかや食べ物を失った動物が絶滅の危機にさらされます。

森林伐採や砂漠化は主に発展途上国で起こっていますが、途上国だけで対策に取り組むことは難しく、先進国の技術や金銭的な援助が必要です。

日本はインドネシアなどアジア諸国の政府と2002年以降「アジア森林パートナーシップ」で協力関係にあります。違法伐採や森林火災をなくし、荒廃地を復旧するために、人工衛星技術を提供し、火災を確認したり森林減少のデータを集めたりしています。

沢田さんは、僕たちもノートなど木でできているものを大切にすることで森林保護に取り組むことになると話してくれました。(中3・見越正礼)

 

 ■ マイはし   店にサービス呼び掛け −福山



マイはし運動の広がりを話す落合代表(中)とメンバー(撮影・中3見越正礼)

飲食店に自分のはしを持ち込む運動を福山市で広げている市民団体があります。使い捨ての割りばしの使用を減らし森林資源を守るため、「マイはし」を持ってきたお客さんに食事代の割引やコーヒーのサービスなどをするよう、店側に呼び掛けているのです。

その取り組みを進める「ごみ5R推進本舗」の落合真弓代表(55)に話を聞きました。昨年6月から市内の飲食店に直接出向きお願いをしています。OKしてもらうと、年に4回発行している団体のフリー情報誌「ecolo-jin+α(エコロジン・アルファ)」に店の地図やサービス内容を掲載します。これまでに期間限定を含め、約40店が参加しました。

落合さんは「マイはしを持って行くと、初めのころは不思議な顔をされていたけど、最近は歓迎されるようになった」と、地域の意識も変わっていると言いました。実際に、マイはしを使う人が増えているそうです。

みんながマイはしを持つように意識すると環境にも優しいし、ものを大切にする事につながると感じました。(中1・大友葵)

 

マイはし運動を取材しました。




 

 ■ 本の交換   小学校に「センター」 −米オレゴン州



校内のリサイクルセンターで、家から持ってきた本を交換する児童たち

米国オレゴン州のフォレスト・リッジ小学校では、読み終わった本を交換する「ブック・エクスチェンジ」をしています。環境教育を担当しているローリー・アギレ先生にメールで質問しました。

生徒は家から自分の読み終わった本を校内にあるリサイクル・センターに持って行き、まだ読んでいない本と交換することができます。アギレ先生は「本を『リユーズ(再使用)』することだけでなく本を読むことも推進できる」と良い点を教えてくれました。

また、センターでは地域の人が持ち込んだ壊れたものを修理するほか、地域のリサイクルショップのリストを住民に提供するなど、校外に開かれた「リユーズ」運動を展開しています。(中2・岩田皆子)


 

 ■ エコ食器   でんぷんでコップや皿 −米ハワイ州



トウモロコシなどからできた食器を紹介するプナホウ学園の生徒。右がクムラさん

米国ハワイ州ホノルル市のプナホウ学園にメールで取材しました。昨年からジャガイモやトウモロコシのでんぷんで作った、コップや皿などを食堂で使っています。

これらの食器は主に地元の会社から購入しています。以前使っていたプラスチックや紙の食器より値段が4倍もするものや、耐熱性に問題があるものもありますが、燃やしてもプラスチックより環境にやさしく、土の中に埋めても紙より早く自然に分解されます。

この学園は2003年に中等部の校舎が環境に優しい建物として全国表彰を受けるなど、先進的な学校です。今年初めには、16年までにごみや使用するエネルギーの量を半分に減らすなどの目標を発表し、生徒に呼びかけています。

校内の社会貢献活動のリーダーをしているニッキー・クムラさん(17)は「私の学校が環境のために努力していることをうれしく思います。ほかの学校にも広まればいいですね」と期待しています。(中3・小林大志)


 

 ■ 国立公園植樹   生徒が募金 苗木購入 −マルタ共和国



植樹作業をするマーガレット・モルティマー女子中等学園の生徒たち

イタリアの南、地中海に浮かぶ島国マルタ共和国の国立公園で植樹をしている、マーガレット・モルティマー女子中等学園にメールで質問しました。

この学校では昨年から2年生210人が、政府の「ツリー・フォー・ユー」という植樹運動に参加しています。生徒たちはクラスで募金を集め、ゴムの木の一種に1本約15ユーロ(約2500円)を払ってオーナーになるのです。国立公園に自分たちで植えています。

先月末には非政府組織(NGO)の呼び掛けに応じ、ほかの学校の生徒たちと合わせて約1500本の苗木を植えました。エイミー・リッゾさん(12)たち4人は「大気汚染の影響を和らげるために大事なこと。環境によいことができた」と感想を書いてくれました。(中2・岩田皆子)


 

 ■ 熱帯林支援   森林伐採 食卓と関係も −ブラジル・アマゾン川流域



ジュニアライターのインタビューに答える熱帯森林保護団体の南代表(右)

森林伐採が原因で生活を脅かされている人々の支援をしている団体があります。ブラジルのアマゾン川流域で約20年間にわたり熱帯雨林の植林や先住民の支援活動をしている非政府組織(NGO)「熱帯森林保護団体」(東京)の南研子代表(60)に取材しました。

アマゾンでは年間約250万ヘクタールの森林が伐採されています。国連食糧農業機関のデータと照らし合わせると、世界の森林伐採の約20%がここで行われていることになります。

最近は特に、環境に優しい燃料として注目されるバイオエタノールの原料となるトウモロコシや食用の大豆などの畑を作るため、もともとあった森林が伐採されているそうです。南さんは「日本に住む私たちの食卓に並ぶものも関係していることを知ってほしい」と話しました。(中3・土田昂太郎)


 
 

 環境問題 僕らの提言

 

3号にわたる「環境」の特集を終えて、自分たちの生活と、水や大気の汚染、そして森林の減少が密接にかかわっているとあらためて考えさせられました。ジュニアライターで自分たちのできることは何かを話し合い、「ECO(えーこ)とみんなでキャンペーン」を提案します。


(1)もっと増やそう「マイ○○」

確実に広がっている「マイはし」と同時に、「マイコップ」を持ち歩くのも良いですね。持ち帰りができるコーヒー店などで使えます。使い捨てのペーパータオルをトイレなどで無駄にしないように、ハンカチを持ち歩くことは簡単にできるでしょう。本屋さんでもらうブックカバーはお気に入りの布製のものを一つ持っていれば、包装を断ることができますね。


(2)エコで地域交流を

例えばご近所がまとまって一台の車で通勤する「カーシェアリング」はどうでしょうか。ガソリン代も排ガスも減らすことができます。地域で子どもたちの小さくなった服や、使い終わったおもちゃ、本などを友達と交換すればごみが減ります。いろんな世代での交流が生まれ、仲も深まります。


(3)家庭で「環境ポイントカード」をつくろう

洗剤やシャンプーの使用量を制限する、ティッシュペーパーを無駄にしない、冷暖房の設定温度を工夫するなど、家族で具体的な目標を決めて、達成できたらポイントを与えます。たまったらお小遣い値上げ交渉券や肩たたき券などと交換できるようにしたら、環境にも家計にも優しく、家族みんなで楽しめます。


(4)エコ心を贈ろう

クリスマスプレゼントに、マイはしやエコバッグを贈るのはどうでしょうか。大切な人と、環境に優しい心を共有できるようになりますよ。夜は電気の代わりにろうそくをともせば、普段とは違う雰囲気も楽しめます。

(高1・串岡理紗)

 

環境についてジュニアライターの意識がどう変わったかなどについて話し合いました。


環境意識の低さ問題 / 家族ぐるみで省エネ

 学校でも取り組みを / リーダーシップ必要

―取材をして学んだことは。

岩田 今までは自分が環境を破壊しているという自覚がなかったけど、森林減少について調べたところ、大豆などをつくるために伐採されていることを知った。ふだんの生活が間接的であっても関係していると知ってショックだった。

大友 日本もドイツのようにペットボトルを繰り返し使用できるようにするべきだと思った。

坂田 日本でも大気汚染の影響が出始めていることが分かった。以前、環境作文コンクールで入選し、ドイツの環境への先進的な取り組みを視察した。それに比べると日本人の環境意識の低さは問題だと思う。

―自分たちの環境に対する考え方や姿勢は変わったかな。

岡田 歯磨きをするときに水を出しっぱなしにしていたけど、止めるようにした。学校でパンを買うときは、ポリ袋をなるべくもらわないようになった。

松田 家族ぐるみで省エネを心掛けている。電気をこまめに消すとか。「ひろしま国」のホームページのおたよりコーナーに書き込んでもらっていたけど「けちになる」っていうことは悪いことではなく、環境にも家計にも優しいっていうことですよね。ほかに暖房を使って作った一年中食べられる野菜よりも、旬のものを選ぶこともエコにつながる。何よりもおいしいし。

坂田 あと、外国から輸入した食べ物は船や飛行機で輸送するときに、石油などのエネルギーを消費しているってことだよね。

松田 遠くの国から来たものよりも、身近な食材を使うことが大事だと思う。これまで考えてもみなかったけど、それも省エネにもつながるんだね。

―課題はどんなことだと思いますか。

見越 学校ぐるみの取り組みがあまりなかったと感じた。

大友 小学校で、近所のごみ拾いをしたり、温暖化についての発表をしたりしたけれど、もっと学校での活動を増やしたほうがいいよね。

岡田 国レベルでいうと、日本が外国の二酸化炭素排出権を買うという報道があった。二酸化炭素そのものを減らすための取り組みに日本はリーダーシップを発揮しないといけないと感じた。技術を持っているんだから。政治家や官僚たちを含めみんなが意識を変える必要がある。