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G8議長サミット
誓った 平和への努力  伝えた 心からの祈り


8カ国の下院議長と欧州連合の副議長が、被爆地広島で「平和と軍縮」について話し合いました。2日に広島市で開かれた主要国(G8)下院議長会議(議長サミット)です。

サミットは非公開のため、各議長がどのような発言をしたのかは明らかにされません。しかし会議終了後の記者会見で、河野洋平衆院議長は以前ジュニアライターが提案した「子どもサミット」について議長たち全員で協力しようと申し合わせたことを発表しました。私たちは耳を疑うほど喜びました。

一方で残念なことに各議長から被爆者の話を聞いたり、原爆資料館を見学したりした感想を直接聞くことはありませんでした。そこで私たちはメールで感想を尋ね、米国とロシアを含むから返事6カ国から返事が来ました。

サミット直前には広島市の小中学生が平和の願いを込めたメッセージを議長たちに届けました。各議長から寄せられた広島訪問の感想、私たちの見た議長サミットとともに紹介します。

各国議長の感想 各校のメッセージ 私たちが見たG8サミット

 
 

usa
広島への訪問は、戦争がもたらす破壊をまざまざと想起させてくれました。すべての国々は平和を推進し、よりよい世界を築くために緊急に取り組まなければなりません。

米国・ペロシ議長
 

russia
今回、広島の原爆資料館を見学し、大量破壊兵器が使用される戦争をはじめ、戦争がいかに悲劇的な結果をもたらしてしまうかをあらためて認識しました。国際社会が核などの大量破壊兵器の不拡散体制のさらなる強化、そしてそのような兵器の終始一貫した大幅な削減を目指して、共同努力をさらに活発化すべきです。ロシアはそういった最重要な目標が達成されるよう、これまで万全な努力をしてきましたし、今後も続けていきます。

ロシア・グリズロフ議長
 

england
広島で原爆資料館を訪れたことは、核兵器の使用が人類に与える影響の恐ろしさを鮮明に思い起こさせてくれました。第二次世界大戦が起こった理由が何であろうと、私たちが広島を訪れ、話し合ったことで「何としても核戦争を避けなければいけない」という人類共通の意志が強まることになるでしょう。

軍事力の監視や管理、そして戦争を起こす力を持つ執行部をチェックする中心である下院は、そのようなプロセスの中で重要な役割を担っています。

英国・マーティン議長
 

france
歴史上、世界で起きた多くのぞっとするような紛争よりも、もっと破壊された都市である広島において、このような悲劇が決して繰り返されることのないよう、現在そして未来の世代に伝えるため記憶することは、私たちの絶対的な使命です。人類は平和な状態になければ発展することはできません。

フランス・アコワイエ議長
 

canada
歴史についての名言があります。「過去を思い起こし得ないものは、過去を繰り返すように運命づけられている」。この追悼と記憶の場をつくり出すことにより、広島の人々、さらに日本のすべての人々は、人類は自らを滅ぼす力も持つが、悲しみや怒りを克服し、不死鳥のように廃虚の中からよみがえることもできるのだと、世界に思い出させてきました。広島の人々に対し、その知識と記憶の才に心から感謝し、ここを訪れるすべての人々がヒロシマの平和と希望のメッセージを学ぶことを祈ります。

カナダ・ミリケン議長
 

italy
「ひろしま国」の若い読者のみなさんや若い読者の方々にあいさつでき、とてもうれしく思います。2日に原爆資料館を訪れたことは、倫理的、文化的にもとても意義深く、感銘を受ける機会となりました。

以前指摘したように、1945年の8月6日に起きた悲劇は、日本だけでなく全世界の人々に影響を与えました。核による大虐殺の記憶は軍縮や大量破壊兵器の不拡散という複雑な問題に対し、国民や選挙で選ばれた議員たちの注意を促します。

国際社会の中で、これらの問題について実り多い議論を始めるには、ふさわしい手順を確認することが必要です。これは、欧米の外交が取り組まなければならない大きな課題です。そして、この目的を達成するためにはあなた方のように、よりよい世界をつくるために一日一日努力する人々が基本的貢献をするのです。それは平和が個人や集団の行動において中心的価値を持つ世界です。

イタリア・フィーニ議長
 

italy
広島訪問、特に平和記念公園での追悼は、私にとって実に感動的な経験でした。広島の犠牲者たちは、世界をもっと平和で人間味あふれるものにするため、私たちが全力を尽くすよう警告しています。G8議長サミットは、それぞれの議会がこのことに自分たち自身の責任を強く感じていることを示しました。

子どもサミットのアイデアは大歓迎です。未来は子どもたちや若者のものです。ですから彼らは、平和で公平な世界について、また住む価値のある未来についての彼ら独自の思いや構想を練る機会を持つべきです。子どもサミットはそのためのすばらしい場となるでしょう。

ドイツ・ラマート議長
 
 

広島の子ども メッセージ手渡し

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議長たちに千羽鶴やメッセージを渡し、交流する子どもたち

広島市内の小中学校と特別支援学校計16校の18人が、各議長に平和のメッセージ(A4版1枚)と千羽鶴をプレゼントしました。市立178校の児童生徒が作り、その代表です。

議長たちが原爆慰霊碑に花をたむけた後、原爆資料館の前でそれぞれ2人の児童生徒が渡しました。受け取った議長は笑顔で子どもたちに自己紹介したり、一緒に記念撮影をしたりしました。

英国のマーティン議長に渡した向洋新町小4年の江平千晴さん(9)は「緊張したけど、『サンキュー』と言ってくれて平和の思いは伝わったと感じた。たくさん話しかけてもらった」。

ドイツのラマート議長に届けた宇品中3年の笠間陽子さん(14)は「優しそうで気さくな人だった。メッセージを国に持って帰ってもらい、広島から平和の思いを世界中に広められたらいい」と喜んでいました。(高1・古川聖良)

 

本川小

 
本川小

本川小(中区)は6年生53人がアイデアを出し合って作りました。手で地球を支えている絵の上に、ピンクや緑色の文字で「わたしたちは みんな地球人」という言葉が英語と日本語で書いてあります。

投票で3つの案を選び、組み合わせたものです。核兵器を持つ国も参加する議長サミットで、人の幸せを奪う兵器だと伝えたい、との思いを込めました。

3人が手分けをし、手の部分を担当した堀郁也君(12)は「平和の大切さについて考えてほしい」。地球の絵を担当した横田夏緒さん(12)は「核兵器がなくなり、平和になってほしい」と話していました。

 

庚午小

 
庚午小

庚午小(西区)は、赤や緑、紫など七色の虹を背景に、メッセージをくわえた折り鶴3羽を描きました。

真ん中の折り鶴が「仕返しは繰り返される。あなたが断ち切らなければ」と英語で書いた紙をくわえています。あとの2羽は「PEACE(平和)」です。6年石川みなみさん(12)が作りました。

文章は被爆者でもあるおじいさんの言葉を参考にし、英訳は中学教師をしているお母さんの同僚に手伝ってもらいました。

世界中の人たちに思いが伝わるように、英文を使っています。学校の平和学習で、被爆者の証言を聞いて、平和への思いが強くなったそうです。

 

吉島中

 
吉島中

吉島中(中区)は、生徒会執行部8人が作りました。絵と文章で核兵器と人種差別をなくそうと訴えています。

円の中に描いた核兵器の上に斜線を引いて廃絶をアピールし、その周りで人々が手をつないでいます。「世界に核兵器なんて必要ですか?世界に人種という壁を作ってもいいのですか?みんなの笑顔があふれる世界こそ本当の平和です」というメッセージを添えました。

生徒会長の正岡あずささん(15)は「学区内に平和記念公園があることを再認識した。身近にいる私たちがよく学び、そしてそのことを伝えていきたい」と決意を新たにしていました。

 

五日市南中

 
五日市南中

五日市南中(佐伯区)のメッセージは、青と緑の地球を背景に、2本の手が握手をしています。「信頼し合える関係をつくる」とのタイトルを付け「1人1人の平和への意識と行動しようという心が必要です」と、訴えています。

3年の若狭秀毅君(15)が考えました。握手は、人種を越えて互いに認め合い信頼することで兵器や核が無くなってほしいという願いを込めたそうです。

 

井口台中

 
井口台中

井口台中(西区)のメッセージは、青空に白とオレンジ色のハトが飛び、緑の葉が舞う光景を描いてあります。その上に英語で「この世界、この国、家族、友達、すべてのものが大切だから、核兵器を廃絶しよう」と呼び掛けています。

3年の河崎美和子さん(15)と3年塩崎智美さん(15)が水彩絵の具と色鉛筆を使って描きました。絵にした理由を、塩崎さんは「文字だけよりも、思いを分かりやすく伝えられると思った」と説明します。

河崎さんは「平和に向かって一生懸命頑張っている人の姿を、理想の空に向かって飛ぶハトの姿に例えた」と話していました。飛び立つハトの表現に苦労したそうです。

井口台中の平和メッセージ作成作業の様子です
 

各校のメッセージは高3・岡田莉佳子、高2・串岡理紗、中2・高木萌子、小6・白川梨華が取材しました。

 
 

聞き入った被爆者証言

原爆資料館では、元館長で被爆者の高橋昭博さん(77)が各議長に被爆体験を語りました。資料館には被爆によって変形した高橋さんのつめが展示されており、証言はその展示の前で、紙芝居を使ってしました。

「片方の目が飛び出した女の人が」などの生々しい話を、神妙に聞く人、腕を組んで考え深げに紙芝居を見る人、顔をしかめてうなずく人…。議長は真剣な面持ちで聞いていました。高橋さんの話を深く受け止めているように感じました。

その後、高橋さんに感想をインタビューしました。「議長さんには未来を担う子どもに資料館で見たこと聞いたことをそのまま伝えてほしい」と言っていました。その願いには核兵器を無くして平和な世界になってほしいという高橋さんの強い思いがこめられているのだと思います。(高2・立川奈緒)

 

旗手作り 議長歓迎

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手作りの旗を振り、議長を歓迎する広島市内の児童たち

広島市内の小学校7校の児童約550人が、G8と欧州連合の旗を振って平和記念公園を訪れた議長を歓迎しました。旗は児童の手作りです。

原爆慰霊碑に続く道の両脇で元気よく旗を振る姿に、手を振ったり笑いかけたりする議長もいました。私も小学生と一緒に旗を振りました。

広島市中区の千田小6年の上野翔太君(12)は「笑顔で旗を振るよう気をつけた」といいます。同じ小学校の6年生の横地祐子さん(12)は「議長と目が合って、手を振ってもらった。うれしかった」と話していました。(中2・大友葵)

 

広島開催 会見で意義強調

会議直後、広島国際会議場で共同記者会見が開かれました。スケジュールの都合で帰国したロシア、欧州連合、イタリア以外の議長6人が参加しました。会議のホスト役だった河野洋平議長が代表して発言し、他の議長は後ろに並びました。

河野議長は「昼食時間に子どもサミットを広島で開催することを提案し、参加した議長全員が賛成した」と発表しました。

これは、3月に東京の衆院議長公邸で河野議長にインタビューした時、私たちが提案したものです。子どもサミットが実現に大きく近づいたことを喜びました。

会議の内容については非公開でしたが「核をなくして、平和な世界をつくろう」ということを全員で確認しあったそうです。核拡散防止条約(NPT)体制をしっかりさせようと話し合い、かなり踏み込んだ議論をしたのだなという印象を受けました。

また、米国と日本の議長以外は原爆投下の時にはまだ生まれておらず、被爆者の話を聞き、原爆資料館を見学した衝撃は大きかったそうです。核兵器廃絶という目標の達成は難しいけれど、一歩一歩進めたいと議長は話していました。「『平和と軍縮』を話し合うのに、広島ほど適した場所はなかった」という言葉から、今回の会議の成功を感じました。(高2・串岡理紗)

 

手つなぎ慰霊碑に礼

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原爆慰霊碑の前で手をつないだ各議長たち

秋葉忠利広島市長の案内でG8各国の議長たちが平和記念公園の原爆慰霊碑に花をたむけました。慰霊碑に続く道は横一列で歩きましたが、花を捧げるときは一人一人、目を閉じてゆっくりと礼をして、原爆で亡くなった人々の冥福を祈りました。

秋葉市長は「戦前はこの地域は大変にぎやかでした」「慰霊碑の碑文には主語がありませんが私たちの解釈は『すべての人類』です」などと、平和記念公園の歴史や、佐々木禎子さんのことなどを説明しました。議長たちはうなずきながら聞いていました。

最後に議長9人全員が、手をつなぎ慰霊碑に一礼をしました。それは、世界で大きな影響力のある国々が、手を取り合って平和に向けて問題を解決しようという意思表示だと感じました。私はこの後の会議が前向きなものになりそうだと直感しました。(高2・立川奈緒)

各国議長の慰霊碑参拝と
歓迎の様子です

琴やソーラン節 随行員もてなす

G8議長サミットが開かれた2日の夜、各議長と一緒に広島を訪れた大使館や議会スタッフを広島の小中学生が歓迎しました。広島市南区の料亭で開かれた衆院事務総長主催の夕食会会場です。ソーラン節や琴の演奏を披露しました。

基町地区の小中学生40人は随行員たちがバスで到着した駐車場でソーラン節を踊りました。アップテンポの音楽に合わせて、元気に声を出しながら踊っていました。

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ドイツ総領事館(大阪市)のエルケ・ティート副総領事は「素晴らしい。ここにいるみんなが楽しんだと思う」と笑顔で話していました。

ソーラン節を踊った幟町中1年の行村紅花さん(13)は「一部かもしれないけれど日本の伝統を伝えることができた」と話していました。

随行員たちが日本庭園を散策中は、広島邦楽連盟の小中学生5人と大人1人が琴を弾きました=写真。曲は「通りゃんせ」「あんたがたどこさ」「四方の景色」「かごめ」などの童謡です。

着物姿で琴を演奏する様子を、随行員たちはカメラで撮っていました。日本を初めて訪れたドイツ議会のソーレン・ルースさんは「美しい、不思議な音色。子どもたちの着物もかわいい」と喜んでいました。

演奏した安芸高田市の可愛小6年岩井南海子さん(12)は「日本の伝統的な音楽の良さを分かってもらえたと思う」と話していました。(高2・立川奈緒、高1・古川聖良、中2・大友葵)

 

お土産1 −広島の観光ガイドマップ

ガイドマップを作った広島観光コンベンションビューローなどを取材しました
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財団法人広島観光コンベンションビューローはG8議長サミット開催に合わせ、いろんな言語の観光ガイドマップを作り、各国大使館に送りました。

縦36センチ、横51センチでカラーです。広島市中心部の地図で、広島城や縮景園などの写真、ホテルリストなどが載っています。折り畳むと胸ポケットに入るので、持ち運びに便利です。

日本語、英語、イタリア語、ドイツ語、フランス語、ロシア語の六言語あり、日本語は20万部、英語は7万部、そのほかはそれぞれ5000部ずつを作りました。中国や台湾、韓国からの観光客が多いため中国語や韓国語も近く発行します。

蒲池清士主事(39)によると、もともとこれらの言語のマップはありましたが今回、内容を充実しました。(中1・井口優香)

 

お土産2 −被爆証言の小冊子

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広島市は、原爆資料館で被爆体験を語った元資料館長高橋昭博さん(77)の話を小冊子にして各議長に届けました。題は「核兵器のない平和な世界を」です。縦10センチ横12センチで、61ページ。文章と絵で構成しています。

絵は広島市安佐北区在住の画家四国五郎さん(84)が描きました。サミット当日、高橋さんが話すときに使った絵を縮小したものです。焼けただれた人々や、ガラスが突き刺さった人などがカラーで描かれ、原爆の恐ろしさがとてもよく伝わってきました。

広島市平和推進課の手島信行課長は「高橋さんの証言に十分な時間が取れず、小冊子を読んで詳しく理解してもらいたかった」と作った理由を説明していました。日本語版と英語版を100部ずつ作りました。(中3・岩田皆子)