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アフリカの子ども(下)
同世代の涙 想像してみて

前回はアフリカの子どもが直面する5つの問題のうち、5歳未満の高死亡率と、エイズ孤児について紹介しました。引き続き、残り3つの問題を取材しました。

「子どもたちが労働力として売られ、1日10時間以上も農園で働かされる」「ため池の水を飲み、寄生虫にやられる」「小学校に通えない」―。日本に住む私たちが、想像するのも難しい現実がありました。しかし、これらは飛行機で15、6時間ほどの場所で、子どもが実際に経験していることなのです。

原因や背景を知るうち、解決は簡単ではないとも知りました。しかし少しでも改善しようと、現地で努力している人たちがいます。

私たちはまず同世代の人に関心を持ってもらおうと、クイズを作りました。いろんな数字が出てきます。自分の身の回りに置き換え、自分だったらどうやって解決するかを考えてもらえるとうれしいです。



■人身売買
麻薬を打たれ長時間労働 売春の強要も

国際労働機関(ILO)によると、世界で推定120万人(2000年)の子どもが人身売買されています。重大な子どもの権利侵害です。

アフリカ西部では特にこの問題が深刻です。トーゴにある国際非政府組織(NGO)プラン・インターナショナル(本部英国)現地事務所のメッサン・アザンレコールさん(45)にメールで取材しました。

トーゴでは何千人もの子どもがお金で取引されているそうです。男の子は国内の都市だけでなく、近隣のコートジボワールやナイジェリアの農園へ送られ、女の子はメードとして働かされるほか、売春を強要されることもあるそうです。

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子どもたちを前に、劇を通して人身売買の危険性などを訴えるトーゴの青年たち(プラン提供)

農園では、1日12時間以上働かされ、長時間の労働にも耐えられるよう麻薬を打たれることもあります。そのため、家に戻ることができても精神的、肉体的に健康を害している子が多いのです。

トーゴ中部の小学校に通うNBさん(仮名、12歳)は同級生を人身売買から守るクラブで活動しています。同級生が国外で働こうとしていないかを大人と連携して監視したり、演劇などを通じて危険性を訴えたりしています。「人身売買の業者が子どもに声をかけなくなった」と言い、活動の成果はあるそうです。

人身売買が起こる原因の一つは、農村部の貧困です。土地がやせて作物が育たず、収入が減少して子どもを養えなくなるので、親が売ったり、子ども自身が働きに出たりします。また、言葉巧みにだまされて売られる子どももいるそうです。

プラン現地事務所は、人身売買の危険性を伝える啓発活動や、子どもが収入を得られるように職業訓練などをしています。(高1・陶山岳嗣)

■不衛生な水
ため池には寄生虫や病原菌が

国連児童基金(ユニセフ)によると、サハラ砂漠より南に住む人のうち42%が安全な水を飲めません。安全な水とは水道の水や汚染されていない井戸などの水で、反対は沼や湖などの水です。

国際協力機構(JICA、東京)によると西部のガーナでも国民の約半数が不衛生な水をそのまま飲まざるを得ないそうです。原因は井戸や水道など、安全な水を得る設備が足りないことにあります。井戸を掘り当てる確率が低いので、雨水を池やタンクにためて使っています。しかし、ずっとためておくので寄生虫が発生してしまうのです。

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雨水をためた池から生活に使う水をくむガーナの人たち(JICA提供)

北部トロンクンブング郡で井戸の建設や管理組合の指導などをしている青年海外協力隊員の須藤崇さん(29)と佐藤久卓さん(33)に具体例を聞いてみました。

この地域にあるトロン村のニマツさん(14)は数年前まで近所に井戸がなく、ため池の水を生活に使っていました。しかしそれも乾期になると干上がってしまうため、歩いて1時間以上かかる井戸から水を運ばなければいけませんでした。

同じ村に住むアーミさん(16)の家族はため池で遊ぶなどしたため、父親とお兄さんがギニアウォームという寄生虫にやられました。痛がっているのを見て悲しかったそうです。下痢やコレラなどにかかる人もいます。

また安全な水を求めて遠くまで井戸の水を取りに行くため、学校へ行けなくなる子もいます。これまでJICAはガーナに約1700基の井戸を掘りました。JICAなどの活動により、07年に3300人以上いたギニアウォームの患者が、08年には6分の1以下の約500人に減るなど、成果も出ているそうです。(高1・室優志)

■低就学率
読み書きは15歳以上の4割ができず

国連教育科学文化機関(ユネスコ)統計研究所などによると、サハラ砂漠より南では15歳以上の約4割が読み書きできません。小学校には約6割が行っていますが中学校に通うのは男の子で26%、女の子では22%です。

中部のルワンダは、1990年から4年間、内戦が起こり、大量虐殺がありました。特定非営利活動法人(NPO法人)ルワンダの教育を考える会(福島市)が支援している、首都キガリのウムチョムイーザ学園にメールで取材しました。

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ウムチョムイーザ学園で学ぶルワンダの子ども(NPO法人ルワンダの教育を考える会提供)

シナメニェ・チャールズ校長(57)によると、ルワンダ国民の45%が小学校を卒業していません。小学校を出ても10―20%しか中学校に行かず、多くは読み書きを忘れてしまうそうです。

ルワムレラ・ケファさん(15)は学園の小学校を昨年10月に卒業したばかりです。父親は授業料を払えず、学用品などを買うことも簡単ではありませんでした。でも、授業料を免除され、無事に終えることができました。

トゥイゼリマーナ・ジェルメネさん(24)は8歳の時に一度は小学校に入学しました。しかしその2年後に虐殺が起こり、父親が難民キャンプに行ってしまうなどしたため、お金もなく、学校に通わなくなりました。9年前に学園に入り、昨年10月にようやく小学校を卒業しました。

シナメニェ校長はルワンダの子どもが教育を受けられない理由に、両親が教育の大切さを理解していないことを挙げました。内戦が大きく影響しており、難民になったり、仕事を失ったり、家族を失って孤児になったことが背景にあります。

学園は、ルワンダの教育を考える会の援助で建設され、生徒323人のうち、4歳から18歳までの75人が授業料を免除されています。(中1・井口優香)



アフリカクイズ
   
問1 サハラ砂漠より南の46カ国では1990年に、1000人生まれたうち187人が5歳未満で亡くなりました。2007年は何人亡くなったでしょう?
(1)32人  (2)90人  (3)148人

問2 一方、サハラ砂漠北の5カ国では、1990年に82人でした。2007年は?
アフリカクイズを作るジュニアライター
(1)14人  (2)35人  (3)127人

問3 母親がエイズ感染者の場合、必ず母子感染する?
(1)○   (2)×

問4 サハラ以南では、5歳から14歳の子どものうち、何人に1人が働いているでしょう?
(1)3人  (2)5人   (3)8人

問5 サハラ以南では、小学校に通う年齢の子どもの、約何人が小学校に通っていない?
(1)3万人  (2)600万人   (3)4100万人

問6 世界では、14歳以下の200万人(推定)が、エイズに感染していると言われています。そのうち、サハラ以南にいるのは何割?
(1)2割  (2)5割   (3)9割

問7 世界で安全な水が手に入らないなどの理由で下痢や病気になって死亡する5歳未満の数は、毎年約何人でしょう?
(1)20万人以上  (2)100万人以上  (3)150万人以上

クイズの答えはこちら >>