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もうすぐAPECジュニア会議

アジア太平洋経済協力会議(APEC)高級事務レベル会合に合わせ、20日から広島市中区の原爆資料館で「APECジュニア会議in広島」が開かれます。19の国や地域から37人の青少年が集合。環境や教育、異文化理解、食と貧困の4分科会と全体会議で、アジア太平洋地域が抱える問題を話し合い、平和な未来づくりを目指した宣言をまとめます。

この会議は、2008年9月に広島であった主要国(G8)下院議長会議(議長サミット)に向けて、私たちジュニアライターが子ども国際会議の開催を提案したことがきっかけで実現しました。会議の実現は本当にうれしく、平和に生きる「種」が世界に広がってほしいと願っています。

私たちが独自に行った事前アンケートや応募作文で、参加者がさまざまな文化や考えを持っていることが分かりました。一方、私たちと同じように、日本のアニメや音楽が好きな人もいます。皆さんも参加者を身近に感じながら、会議を聴きに行ってみてはいかがでしょうか。


APECジュニア会議日程 (会場はいずれも原爆資料館)

【20日】
17:00〜17:40★開会式
【21日】
11:30〜12:30★被爆体験講話
13:50〜14:40★詩人アーサー・ビナードさんの基調講演
15:00〜17:30 分科会1
【22日】
9:00〜12:30 分科会2
19:00〜20:30 分科会3
【23日】
9:00〜12:00 全体会議1
13:00〜15:10 全体会議2
15:30〜16:00 全体会議3
18:30〜19:00 閉会式
★は通訳付き

中 国
(1)呉 さん(16)

私は国際的な催しや出来事に関心があります。会議は、環境、教育、食料、国際交流がテーマなので、参加すれば視野が広がり、将来のためになると思いました。
 平和な世の中にするためには協力が必要です。世界が一つになれば、地球温暖化など多くの問題が解決すると思います。僕たちに必要なのは少しの責任感と自分の住んでいる地域を良くしようと願う心です。
 自ら行動し、「これ以上地球を過熱させず、自分たちに安全な住環境を残す」という強い意志を持ちましょう。他の参加者に、中国の文化や友好的な雰囲気を伝えたいです。(中1・来山祥子)


ロシア
(3)タチアナ・
シャシキナさん(17)

ヒロシマは信じられない悲劇が起きた街です。罪のない人たちに降りかかった廃虚、火災、灰などを連想させます。
 ヒロシマを含め20世紀に起こった悲劇は、人々が自身と異なる肌や髪の色、文化、言語を持った人々を支配しようとしたのが原因です。世界平和のためには、他人の生活や行動、感情、考え、発想に寛容になることが重要でしょう。そして、過去のことを忘れず、未来について考えることも大切だと思います。
 私は広大な母国、人々が暮らす西部と神秘的な東部がある、自分の国ロシアが好きです。自然を守ることを日々心掛けています。(高2・村重茜)



中 国
(2)趙 域航さん(17)

海外の同世代の人たちに学びながら平和の種を広げようと思い、会議に参加しました。若者がどうすればより良い世界を築くことができるのか、また食料問題をどのように解決すればいいのか、について話し合いたいと思います。
 世界が平和になるためには一人一人の小さな活動が必要です。私たちが周囲の人たちに世界平和の重要性を訴え、もっともっと関心を持ってもらうように働きかける。そのために今、努力することが大事です。日本のアニメでは「天空の城ラピュタ」など宮崎駿さんの作品が好きです。平和や愛のメッセージが伝わってきます。(中3・高木萌子)


カナダ
(5)タラ・ルエルさん(15)

会議への参加は、私にとって初めての平和活動になります。同年代の人たちと平和に関する意見やアイデアを交換するのが楽しみです。
 平和を実現するには、お互いの文化の違いを理解、尊重し、話し合うことが大事なのではないでしょうか。私たちの世代にはそれをできる人がいっぱいいると思います。
広島は人類史上最も残酷なことがありました。世界に平和を発信する「平和首都」として重要な場所です。
 カナダは自然が美しく、いろんな人種が集まっていて、外国人に優しい国です。私が誇りにしているカナダの文化も伝えたいと思っています。(高2・古川聖良)


ロシア
(4)キリル・
グレビョンキンさん(16)

自分と同じような興味を持ち、多様な文化のもとで暮らす人たちと、地球規模の問題について議論したいです。
 環境問題は、僕の学校でも関心を集めています。大気、水質汚染や森林伐採、地球温暖化など多くの課題があります。環境保護に関心を持ち、植林や自然公園を造るなどさまざまな努力がなされるべきです。
 僕たち若者には、まだ十分な経験がありません。多くの失敗をするでしょう。だから、両親のアドバイスや援助、愛情を覚えておきましょう。それを生かし、より良い世界をつくるために頑張るよう話し合いたいです。(高1・坂田悠綺)



メキシコ
(6)ジュリ・サトウさん(18)

会議の参加者と、これまでに受けた教育経験を交流し、多様な文化について話し合いたいです。また地球温暖化や核兵器などの問題について意見交換したいです。
 地球温暖化が進んでいます。私たちは、教育と環境に対する理解を広げなければなりません。自然や環境は、戦争や産業活動など私たちの生活によって壊されてきました。しかし、一部の人たちは、この状況に無関心です。
 私は、部屋を出る時に明かりを消したり、冷房を使わないようにしたりしています。このような小さいことでも努力を重ねることで後世に結果をもたらすと信じています。(中1・坂本真子)


メキシコ
(7)エリ・サトウさん(18)

広島は、多くの古い傷を抱える美しい街、というイメージがあります。原爆慰霊碑を訪れたり、広島が経験した悲惨な歴史を学んだりしたいです。
 私は、教育が平和の鍵になると思います。恵まれない子どもたちの学校を建設する手伝いをするために、カンボジアへ研修に行きました。将来私は、先生になりたいです。また、異なる人種の子どもが集まるインターナショナルスクールをもっと増やせばいいと思います。
 私たち若者は、どんな小さなことでも自分が誰かの役に立つことを探すために、地域や学校の活動により多く参加すべきだと思います。(中2・坂田弥優)


チ リ
(8)ジェシカクリスティーヌ・ピエレロブレスさん(18)

暴力や戦争に関する世界の現状について意見を交換したいです。世界が平和になるには、暴力や戦争で多くの無実の人々が殺されている現実について考えなければなりません。誰も傷つけない最善の解決策を話し合うべきです。
 会議ではチリの音楽やダンス、食文化を紹介したいです。チリ料理はメキシコ料理のように辛くありません。野菜やめんを入れたスープや、肉や野菜をオーブンで焼いたものが典型的な家庭料理です。
 日本の歌では倉木麻衣の「ハッピーデイズ」やグリーンの「愛唄」、エグザイルの「ふたつの唇」が好きです。(中1・坂本真子)



オーストラリア
(9)フェイ
・レンチュールさん(16)

私はこれまで、ホームレスの人が住むための家を建て、食品業者と連携して困っている人に食料を配るなどのボランティア活動をしてきました。活動に参加すれば、自分が何かを変えられることに気付きます。
 将来は政治活動にかかわっていきたいと思っています。社会には平和な世界をつくることの大切さを伝える人が必要です。私はその一員になりたいです。
 広島は悲しみの象徴であり希望の象徴でもあります。世界平和に向けてのスタート地点でもあります。過ちから学ぶことで、二度と同じ過ちを繰り返さないようにできるはずです。(中2・小坂しおり)


オーストラリア
(10)コグラン
・サバラトナムさん(18)

ヒロシマについて、学校で特別に学んだことはありませんが、リトルボーイが落とされ、街が壊滅したことは知っています。復興したことを写真で知りました。
 広島の役割は今回のようなイベントをもっと企画することだと思います。広島を訪れれば、第2次世界大戦で何があったかを子どもたちが学ぶことができます。平和な社会がどんなものなのか世界の人々が考えるきっかけになるでしょう。会議では、識字率や貧困などについて学び、話し合っていきたいです。自国の問題としてだけでなく、地球規模の問題として考えることが解決の一歩となるはずです。(中2・小坂しおり)


ベトナム
(11)ミン・リーさん(16)

意見交換や海外の友達づくりにいい機会だと思って参加することにしました。その上、原爆で有名な平和都市広島で開催されると聞いて、ますます興味を持ちました。原爆を落とされながらも、広島は日本の中でも大きな都市となり、世界平和のシンボルに成長しています。
 今まで平和活動をしたことがなかったので、会議を楽しみにしています。小さなことでもみんながそれぞれ平和に貢献すれば、大きな力になる、と伝えたいなと思っています。戦争がもたらした被害を訴えることで、平和に対する関心を高められるのではないでしょうか。(高2・古川聖良)



ブルネイ
(12)アフマッドファイズ・ザイラニさん(18)

よりよい世界づくりに貢献できると思い、参加しました。世界の国が平和になるだけでなく、一つ一つの家族が幸せになれる方法を話し合いたいです。また、現代の文化を取り入れつつ伝統を大事にするブルネイのいいところを伝えたいです。
 平和な暮らしに大きな障害を与える最大のものは、戦争でも自然でも、ましてや経済でもありません。個人の幸せを乱すことです。もし不安な気持ちでいる人がいるなら、そこに本当の平和はありません。平和をつくるためには、世界中が一緒に動かなければなりません。創造性が必要です。大切なのは広い理解です。(中1・来山祥子)


タ イ
(13)ポーンピパット
・カセームサップさん(17)

僕たちや次世代にとって大切な教育と環境について話し合いたいです。教育は人々の暮らしの基本で、生活の質を高めることができます。発展途上国ではすべての人々が一定水準の教育を受けることができていません。近隣諸国の協力で教育制度を作り、基金を設立する必要があります。
 僕は、タイの食文化をみんなに伝えたいです。ただおいしい料理を作るだけでなく、家族や親せき、友人、近所の人たちみんなで分け合うのです。このため、タイでは食文化がより大切なものになっています。農業学を学んで環境のスペシャリストになりたいです。(高1・坂田悠綺)


マレーシア
(14)ムハマッドハジム
・モハマッドさん(17)

最近マレーシアの首相が「ワン・マレーシア」の概念を提唱しました。マレーシアは、イギリス統治時代に中国やインドからの移民が増えたため、多種多様の人種や文化が混在する土地です。しかし、私たちがお互いにありのままを受け入れ合い、違いを認めながら生きていけば、平和は得られます。もしこの概念が国境を超えて、「一つの地域」や「一つの世界」に広がれば、平和も広がっていくでしょう。
 平和は、それを求める人への神からの贈り物です。私たちも平和を求める一人となりましょう。そして、いつかは世界中の人がそうなりますように。(中2・井口優香)



マレーシア
(15)シャランディープ・ジャスディープシングさん(17)

平和な社会をつくるためには、お互いに尊敬し合う心が必要です。
 例えば、国のリーダーが他の国と付き合う時、お互いを尊敬し合う気持ちで話し合えば戦争は起きないでしょう。環境に関心を持ち敬意を払えば、環境問題も起きないはずです。私はこれまで、平和についていろんな活動に参加してきました。像の保護地区へ行き絶滅危惧種の保護に協力しました。イラク戦争の時には、戦争では何も解決しない、という認識を高めるキャンペーンをしました。
 私たちは次世代のリーダーです。会議では同世代の希望にあふれた意見を学びたいです。(中3・高木萌子)

その他の参加者は次の通り。(敬称略)

 イズカイリー・ヤコブ(ブルネイ)▽サマレ・モグベル(カナダ)▽ネアントロ・サベドラカルネイロ(チリ)▽アディナ・ハディ(インドネシア)▽サラス・サリム(同)▽ヤン・ヨンヒョ(韓国)▽カン・ドンウ(同)▽コリンラングティモシー・ホレオン(パプアニューギニア)▽アキヒロ・チネン(ペルー)▽アルデレット・ロワ(フィリピン)▽メリー・バルセロナ(同)▽ミシェル・シム(シンガポール)▽カレブ・カストロ(同)▽林若(台湾)▽凡(同)▽チャットルタイ・カンチャナソーパナ(タイ)▽ティモシー・リード(米国)▽ケーシー・ヤマザキハイナマン(同)



日 本

提案かなった 議論楽しみ

串岡理紗さん(18)
広島女学院高3年


2年前、子ども国際会議の開催を河野洋平衆議院議長(当時)に提案しました。実現したので、会議に参加するのが自分の役目と考え、応募しました。
 2007年夏から1年半、「ひろしま国」のジュニアライターをしました。特集でフェアトレードを取り上げたのが印象深いです。フェアトレード商品を扱う広島の喫茶店を取材しました。その後、学校に、そのスタッフを招いて講演会を開きました。文化祭ではフェアトレード商品のバザーをしました。

 2年前の子ども国際会議の提案は、「若者が自主的に活動できる場がほしい」という思いで提案しました。ジュニア会議には、先進国からも発展途上国からも同世代が集まるので、議論を通じていろいろな目線の考えを聞くことができそうで、とても楽しみです。(高1・岩田皆子)



違いを理解する輪広げる

三宅利智さん(16)
修道高1年


米国の留学生との意見交換がきっかけで、会議に応募しました。去年6月に広島であった留学生との交流会で、米国人留学生が「原爆投下は戦争を終わらせ、日本人の命を救ったと学んだ」と言ったのです。「原爆は絶対にいけない」と教わり続け、それが当たり前だと思っていたから、衝撃を受けました。なぜ、こんな違いがあるのかを考えるようになりました。
 僕は異文化理解の分科会に出ます。そこでは、意見が食い違うのは当たり前で、むしろなぜ意見が違うのかを話し合えればと思います。
 会議が終わった後は、会議でのやりとりを友人たちに伝えるつもりです。違いを理解しようとする輪を広げたい、そんな会議の内容をより多くの人が共有することに、今回の会議の意味があると考えるからです。(高2・見越正礼)


平和伝える
方法学びたい

小畠一真さん(16)
桐蔭学園
中等教育学校4年


会議は、ヒロシマの経験を海外の同世代の人たちに広める良い機会です。
 僕は教育の分科会に参加します。僕たちは今、戦争を直接体験した世代から話を聞くことができます。でも、数十年経ったら語る側になるでしょう。だから、平和のメッセージの発信の仕方を学びたいと思っています。
 会議を通して訴えたいのは「互いを理解することの大切さ」です。理由は自身の海外での経験にあります。1歳から8年間、米国で生活をしていました。その中で、肌の色などで差別を受けるとこともありました。
 学校では模擬国連部に所属しています。いろんな国の大使の立場になって主張を競います。
 米国での体験や模擬国連部の活動を通して、平和を実現するには個性を認め合い、理解し合うことが大切だと考えています。(中1・木村友美)


気候変動
途上国の声聞く

藤井萌子さん(16)
渋谷教育学園渋谷高2年


2009年7月に開かれた主要国首脳会議(G8)の関連イベントで、各国の高校生たちが集まり議論する「J8サミット」に参加し、アフリカの発展や気候変動について議論しました。同年9月からはエイズウイルス(HIV)やエイズの広がりを防ぐための募金や啓発活動にも加わっています。
 APECジュニア会議では、実現可能でしかも理想的な宣言を大人に示し、子どもが理想を言っているだけだと思われないようにしたいです。次の世界を動かす世代として、宣言したことを会議後に実行することが大事だと思うからです。
 J8の時には交流することができなかった国や地域の若者とふれあえるのが楽しみです。気候変動などで最も影響を受ける発展途上国の代表者がどんな意見を持っているのか、聞きたいです。(中2・坂田弥優)