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ペットの命(上)〜役所の苦悩
犬猫27万匹 救えるはず

日本では1年間(2008年度)に27万匹もの犬、猫が保健所や動物愛護(管理)センターで殺されています。子どもをたくさん産んで飼えなくなった、家の裏庭に野良猫が子どもを産んでいた、引っ越し先では動物が飼えない、などの理由で持ち込まれます。迷子になって収容されても、名札がないため飼い主の元へ帰ることができない犬や猫もいます。

家族の一員として楽しい時をともに過ごし、癒やしをもたらしたのに、人の都合で殺されるペット。保健所やセンターの職員も胸を痛めながら処分機のスイッチを押しています。

ペットの命も、人と同じように大切にしたい。そんな思いで殺処分ゼロを目指して活動している自治体もあります。まずは現状を知り、ペットの命に関心を持つことが必要です。

獣医になったのになぜ殺さなければ…
1550匹 もらい手なく 広島市

広島市動物管理センターに収容された幼い猫(撮影・高2岩田皆子)

広島市動物管理センター(中区)は、飼い主が放棄した犬や猫、野良犬などを収容しています。2009年度には395匹の犬と、1475匹の猫を引き取りました。子どもがたくさん生まれてもらい手がいないという理由がほとんどです。猫の7割は生後数日から1、2カ月の子どもです。野良猫が裏庭で子どもを産んだ、といったケースが多いそうです。

新しい飼い主が見つかることや一時引き取りするボランティア団体もありますが、多くは殺されます。09年度に147匹の犬と1403匹の猫が殺処分されました。

処分は週1回行われます。犬の場合、おりの柵を動かしてエレベーターに追い込み、そのまま密閉した部屋に下ろして二酸化炭素を送り込み、窒息死させるのです。子猫は、センターの獣医師が注射を打って殺します。

「動物を助けようと獣医師になったのに、なぜ殺さなくてはならないのか」と担当者は苦しんでいるそうです。(中2・吉本芽生)




市民団体と協力/飼い主現れるまで世話
「殺処分ゼロ」間近 熊本市

晴れた日、犬は収容施設の外で過ごします(熊本市動物愛護センター)

「殺処分ゼロ」を目標にしている自治体があります。熊本市です。2009年度にセンターで殺処分(収容中の病死などを除く)したのは犬1匹、猫6匹、と限りなくゼロに近くなっています。

同市動物愛護センター鳥獣係長の村上睦子さん(50)によると、センターと地域の人々との連携が「鍵」だそうです。動物愛護の市民団体とセンターは以前、協力関係にありませんでした。しかし、センターが殺処分や収容状況などの実態をさらけ出したことで理解し合えたそうです。

センターと愛護団体に獣医師なども加わって02年、市動物愛護推進協議会が結成されました。協議会は犬猫の譲渡会を開いたり、「地域ねこ活動」を進めたりしています。募金活動やチャリティーバザーをして、避妊去勢手術費用の助成もしています。

「飼えない」とセンターに犬や猫を連れてくる人には、飼い始めたころの気持ちを思い出してもらい、飼い続けるよう説得します。飼い主が入院したり施設に入ったりしたケース、「子犬や子猫が増えた」などの理由で連れてきた人には、親せきや知人で飼える人を探してもらったり、新聞広告を出してもらったりします。「ほえて近所迷惑になる」と訴える飼い主には、しつけアドバイザーの紹介もします。

これらの対策で、飼い主が放棄したために引き取った犬の数は、1999年度に407匹だったのが、09年度には18匹に減りました。

収容した犬や猫は、一匹一匹をしっかりひとつの命として扱います。以前は入れるだけ入れていた犬のおりは、現在6匹までです。昼間は外に出して1匹ずつつないでおり、センター内で散歩もさせます。それぞれ名前も付けています。

おりには、1匹ずつ年齢、性別、性格などを書いた写真入りプレートを張っています。かみ癖や病気治療中のことなども細かく表示しています。もらいに来た人たちが、自分に合った犬を見つけやすいようにしているのです。気性が荒い場合は職員がしつけます。授乳が必要な赤ちゃんの猫は、ボランティアが引き取って数時間おきにミルクをあげて世話をしています。

センターは、新しい飼い主が見つかるまで世話をします。1年半いる犬もいます。病気や高齢でも譲渡の対象です。おばあちゃんがセンターに来て「自分より早く死ぬ犬がいい」と老犬を選ぶこともあるそうです。

09年度は、センターが収容した犬が453匹いました。189匹が元の飼い主に戻り、222匹が新しい飼い主に譲渡されました。猫は268匹を収容し、220匹に新しい飼い主が見つかりました。他の自治体も同じくらい犬猫に優しくなれると期待したいです。(高2・古川聖良)

地域ねこ活動 数人のグループで責任の所在をはっきりさせて猫を飼う。避妊去勢手術で数が増えないようにするとともに、餌を与える場を決める。残った餌は片付け、ふんの始末もする。

熊本市では殺処分ゼロを目指した取り組みの効果が徐々に出ている。広島市はこれまで、人口の割には引取数が少なかった。譲渡先を探すボランティア団体の活動などで、少しずつ殺処分率も下がっている。 生後間もない子猫が収容された場合、広島市では栄養不良などで亡くなるケースが多い。その数は「殺処分」に入る。熊本市は授乳ボランティアが世話をするようになってから子猫が生き延びて譲渡されるようになり、殺処分が減っている。
「命預かる自覚を」 広島県センター

広島県動物愛護センターで譲渡前講習を受け、子犬を引き取った家族(撮影・中3井口優香)

広島県動物愛護センター(三原市)は、引き取った犬や猫の健康状態と性格を調べた上で、新しい飼い主に譲渡しています。2009年度に譲渡したのは犬は147匹、猫は22匹。ほしい人には事前に講習会を開いています。

09年度にセンターが引き取った犬猫の95%以上が殺処分されました。成犬1匹の処分に2000円近くかかります。殺される動物を減らすためにセンターでは、犬や猫の所有権を放棄する場合、引き取り料を設けるよう検討しています。

育てるのにもお金がかかります。生まれてから死ぬまで犬1匹で約300万円必要です。散歩やしつけなどの時間も要ります。犬の寿命は約15年間あります。ちゃんと飼えるかどうか考えないといけません。「命を預かっている自覚を持ってほしい」と、所長の松本修さん(56)は訴えていました。(中3・井口優香、中2・来山祥子)



動物愛護 中国5県も目標 管理法

動物やペットの命を大切にするための動物愛護管理法があります。1973年にできました。動物の遺棄や虐待を防ぐため、最近では2005年に改正されています。

 この改正法に基づき、06年10月、指針ができました。各都道府県が「動物愛護管理推進計画」を作り、08年からの10年間で、具体的な数値目標を設定するように求めています。広島県の場合、犬猫の殺処分数を半分に減らす計画です。

 法律改正や指針の効果は、まだはっきりと表れていないそうです。中国四国地方環境事務所(岡山市北区)の野生生物課の高橋万来男自然保護官(52)は「罰を重くするのも一つの手だが、何より国民一人一人が、動物を遺棄したり虐待してはならないと、意識する必要がある」と言います。(中2・末本雄祐)

中国5県が2017年度末を目標に策定した動物愛護管理推進計画
広島 06年度の犬猫の殺処分数13087匹を50%減らす
山口 06年度の犬猫の殺処分数8125匹を50%減らす
岡山 07年度に飼い主の放棄で収容した犬猫3140匹を50%減らす。05年度の殺処分率95.4%を90%以下にする
島根 05年度に引き取った犬猫5593匹を、12年度までに2500匹以下、17年度までに1750匹以下にする
鳥取 06年度に所有者不明や放棄で収容した犬猫2973匹を半減(1500匹)させる
※広島県は広島市、福山市、呉市、山口県は下関市、岡山県は岡山市、倉敷市をそれぞれ含む