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写真が訴える平和
怒り・喜び 共鳴させたい

あなたには、いつも心に残っている写真がありますか。

吸い込まれそうな情景、何かを語ろうとしているようなまなざし、思わず一緒にほほ笑んでしまいそうな笑顔―。写真には、動画や文章にはない、見た人に訴える力があります。

「平和」をキーワードに、カメラ片手に街を歩いたジュニアライター。ファインダーの向こうには、ライトアップされた折り鶴や原爆の子の像がありました。海外で撮影した国際色豊かな写真もあります。また、平和な社会に向けて活動している人たちにも、平和を訴える写真を選んでもらいました。

平和への思いが込められた写真。あなたの心に響く1枚が見つかるでしょうか。

※クリックすると大きな写真を見ることができます。



「HIROSHIMA 半世紀の肖像」
(大石芳野著)より

写真家の大石芳野さん(67)

被爆者の思い 伝えたい


寝ている孫を気遣い、布団に手を置いている一枚です。言葉で言い尽くせない、孫をいとおしむ気持ちが表れています。

広島での被爆とともに、在日韓国・朝鮮人は民族差別にも苦しんできました。金連順(キム・リョンスン)さんは、体験を語ると当時のつらい記憶に引きずり込まれるにもかかわらず「次の世代を生きる孫のために」と一生懸命話してくれたそうです。大石芳野さんは感動しながら撮影しました。

「写真は、見る人が作品に集中して向き合い、深く考えられる。苦しんでいる人がいる現状や、その人が生きてきた思いを伝えたい」と大石さん。被爆者にとって戦争は続いています。怒りやつらさを写真で伝えられたら、と考えています。

大石さんは、平和を実現するには、他者との違いを認め、いたわることが一番大事だと言います。写真を通して、若者にその心を感じ取り、行動を起こしてほしいと期待しています。(高1・西田千紗)

おおいし・よしの 日本大芸術学部写真学科卒後、フリーの写真家になった。「ベトナム 凜(りん)と」(第20回土門拳賞受賞)「アフガニスタン 戦禍を生きぬく」など。「HIROSHIMA 半世紀の肖像」は、約10年かけて被爆者を取材した。2007年に紫綬褒章受章。東京都出身。


レオナルド・アイガーさん撮影

広島平和文化センター理事長
     スティーブン・リーパーさん(63)

平和活動にも遊び心を


昨年12月6日、米国ワシントン州のシアトル近郊であった平和集会の様子です。核兵器廃絶を願い、潜水艦や核兵器が保管されている米軍基地に侵入し、ヒマワリの種をばらまいて逮捕された5人を支持する人たちが開きました。

女性は「レージング・グラニーズ(怒りに満ちたおばあちゃんたち)」という団体です。反戦や平和への思いを替え歌にして披露しました。スティーブン・リーパーさんは「平和な状態は楽しいはずだから、遊び心を持つのが大切。一方、活動の背景に、平和を実現するために自由を犠牲にして行動した人がいることを考えて」と話します。

核兵器が再び使われれば、人が死ぬだけではありません。農作物が栽培できなくなり、飢餓により新たな戦争をも引き起こすのです。リーパーさんは、競争でなく協力して問題を解決しようとするリーダーの登場を望みます。(高2・岩田皆子、高1・田中壮卓)

スティーブン・リーパー 1978年、米国ウェストジョージア大臨床心理学修士課程修了。85年から広島市に住み、英語講師や企業の海外渉外アドバイザーなどを務める。2003年から広島平和文化センター専門委員。07年4月から現職。米国ウィスコンシン州出身。


ユニセフ提供

国連児童基金(ユニセフ)東京事務所代表 平林国彦さん(52)

少しの支援 未来を拓く


2007年夏。アフガニスタンの田舎で、一生懸命勉強する小学1年の少女の姿がありました。「子どもたち、特に女の子が学校に通えるのは、平和への第一歩になっているうれしい兆し」と平林国彦さんは言います。

戦争や紛争で治安が悪いと危害を受けやすい女の子は学校に行けなくなるのです。この写真を通じて平林さんは、世界に困っている人がいること、そして、少しの手助けがあれば、彼らが自分たちで未来を切り開けることを訴えたいと思っています。

平和な世界にするために、日本の若者には「自分に自信を持ってほしい」と話します。世界に目を向け、何ができるか考えてほしいそうです。一番良くないのは「どうせやっても変わらない」という消極的な姿勢です。「小さな行動でも世界は変わります。変えられる未来と、皆さんが貢献できる世界があるのです」と教えてくれました。(中2・佐々木玲奈)

平林国彦 1994年に筑波大大学院博士課程修了・医学博士取得後、国立国際医療センター国際医療協力局勤務。ユニセフアフガニスタン、レバノン各事務所を経て2006年9月東京事務所副代表。08年7月にインド事務所副代表、10年4月から現職。長野県大町市出身。

「夜空を見上げる少女」





昼間に訪れる人が多い広島市中区の平和記念公園。夜は人が少なく静かです。原爆の子の像の少女の表情が、今も戦争などの被害を受けて苦しんでいる子どもたちのことを考え悲しんでいるように見えました。(クロスフィルター使用)
高1・田中壮卓
ジュニアライターも

撮りました
「未来を照らせ!折り鶴」
昨年末、『ドリミネーション』を見に広島市中心部の平和大通りに行きました。折り鶴のイルミネーションは派手さはありませんが、「平和」を表しているようでした。イルミネーションを楽しめる平和と、折り鶴の平和を感じてほしいです。
中2・大林将也
昨夏カナダへ留学した時、仲良くなった友達と撮りました。日本、カザフスタン、コロンビアの出身者です。お互いを信頼し、リラックスした表情です。どこへ行っても誰とでも、国籍を超えてこんなふうな写真が撮れる世界をつくりたいです。
高1・西田千紗
「幸せ何枚?」



アルバムを開くと、私は幸せな自分を見つけることができます。生まれてからこれまでの写真は、今も昔も笑顔なのです。平和だからこそです。皆さんも、自分が今どんな顔をしているか見てみてください。笑顔を心掛けてみませんか。
中2・佐々木玲奈
「長屋の井戸端会議」


マレーシアの先住民族の村では、ロングハウスに住む人たちが助け合って暮らしています。共同廊下では、家族の枠をこえ、みんなが遊んだり話したりしていました。日本の人たちに、地域の絆の温かさを伝えたいです。
高2・岩田皆子