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ひろしま国のつどい
平和の願い ともに結ぼう


ひろしま国、そしてジュニアライターのことをもっと知ってもらおう、と3月26日、広島市中区の中国新聞ビルで「ひろしま国のつどい」を初めて開きました。ジュニアライターの卒業生や教育関係者など約100人が集まりました。

交流会では、現役ライターと卒業生が、ひろしま国の活動から学び、得たことを発表。米国の大学に留学中の卒業生もインターネットのテレビ電話で参加し、活発に意見を交わしました。

会場では、ひろしま国で掲載した手作りの「平和かるた」や、原爆の知識を問う「ヒロシマ検定」の体験コーナーを設置。ジャンル別に展示した紙面を基にしたクイズも実施しました。箱を置いて受け付けた、東日本大震災の被災者への義援金や文房具もたくさん集まりました。

通常の紙面を通じた発信に加え、ひざを交えてやりとりする大切さ、楽しさを実感した一日でした。

 ジュニアライター 現役・卒業生交流 

つながっている/発信のため留学/求め続けてこそ/後悔残る取材も/優しさ忘れずに


交流会では、中高生の現役ジュニアライターや卒業生が、取材活動を通して育んだだ平和への思いや地震に与えた影響などを語り合いました。

《発表者》
米国オハイオ州マウントユニオン大コミュニケーション学部3年=インターネットによるテレビ電話参加 新山京子さん(21)
広島市職員 中重彩さん(21)
広島大医学部1年 見越正礼さん(18)
広島なぎさ高3年 岩田皆子さん(17)
広島女学院中3年 木村友美さん(14)
《コーディネーター》
NPO法人ANT-Hiroshima代表理事 渡部朋子さん(57)
活動を通じて学んだことや得たものを活発に発表した交流会

−心に残った取材や記事は何ですか。

中重 被爆者の方に取材した時、額に被爆の際にできた傷があった。つらい経験だと思うが、明るい表情で話してくれた。傷との差に胸が締め付けられた。

見越 心に残ったのは映画監督の宮崎駿さん。結局紙に書いて用意した質問しかできず、すごく後悔した。みんなにはそんな経験をしてほしくない。

岩田 米国のオバマ大統領を広島に呼ぼうと、ひろしま国で手紙を募集した。周りの人を巻き込み、みんながつながれることを感じた。さらに「中高生ノーニュークネットワーク広島」という核兵器廃絶を目指す動きにつながった。私も一緒に活動している。

新山 核兵器を持っているフランスで平和活動をしている美帆シボさん。私も米国に3年間住んでいるが、異国で活動をするのはとても難しい。尊敬している。

木村 8月6日に軽い気持ちで被爆者の方にアンケートをお願いしたら断られた。傷つけてしまったのではないかと思う。平和記念公園で、アンケート回答者に笑顔でポーズを取ってもらって撮ったが、被爆者の方に違和感を与えたんじゃないかと感じた。

−ジュニアライターの経験が進路などにつながった人はいますか。

新山 米国行きを決めたのは、ひろしま国の取材で出会った人の影響。平和への思いを写真、アニメ、歌などさまざまな形で世界中に伝えようとしていた。私も平和を発信するため、海外の大学でしっかり勉強する必要を感じた。

岩田 新聞記者になれると思って始めたが、取材を通して国際的な問題に目が向くようになった。今は世界を変えるような仕事をしたいと思っている。

−ひろしま国の活動を始める前後で平和への思いは変わりましたか。

新山 平和イコール核兵器廃絶を訴えることではないと知った。環境や貧困など全てが平和につながっている。米国では広島イコール原爆ということは知られているが、被害の程度や後障害でどれだけの人が苦しんでいるかなど具体的に知っている人はほとんどいない。説明しようとすると拒絶する人もいる。意識の高い広島で平和を発信するのと、異国で発信するのとでは、ものすごく違うと感じる。

中重 取材を通して、まず目の前の人を大切にし、人に優しくすることが大事と分かった。

木村 活動する前はむしろ今は平和だと思っていた。だが、世界の子どもたちの食料問題など、私が知らないだけで、平和じゃないことが分かった。

−私たちは平和のために何ができるでしょうか。

木村 平和を求め続けることこそが平和につながる。ジュニアライターの活動に誇りを持って取材を続けたい。

新山 知識をつけることも必要だが、まずは何でも行動してみることが大切だ。一歩を踏み出してほしい。

見越 ひろしま国では、普段会えない人に会えるし、行けないところにも行ける。自分のやりたいことをしっかりとやり遂げてほしい。


 平和かるた  机囲み白熱

にぎやかにかるたを取り合う参加者

「平和かるた」の体験コーナーは、常に10人ほどが机を囲み、挑戦者が絶えることがありませんでした。張りつめた空気の中、絵札を取ろうと机をバシンとたたく音、笑い声や拍手が遠くまで響いていました。

平和かるたは昨年12月の「ひろしま国」に掲載されたオリジナルです。字札は、広島から平和を訴えかけるメッセージで、広島東洋カープの岩本貴裕選手やジュニアライターが考えました。絵札はライター卒業生が描いています。

海田東小6年の河野真歩さん(11)=広島県海田町=は、「大人数でやって楽しかった。平和についてもう一度考えてみたい」と話していました。(高1・城本ありさ)



 ヒロシマ検定  世代幅広く

ヒロシマ検定に挑戦する小学生

広島に落とされた原爆に関する「ヒロシマ検定」のコーナーでは、子どもから大人まで幅広い世代の人たちが挑戦していました。

会場には、検定を体験できるパソコン3台を設置しました。質問は「原爆が落とされた年は」「原爆ドームはなぜ保存されたのか」など初級編、上級編合わせて20問。ジュニアライターが考え、2008年7月のひろしま国33号でも紹介しています。満点で喜ぶ人や間違えて悔しそうにしている人もいました。

通訳の小泉直子さん(54)=広島市中区=は「外国の人によく聞かれる質問ばかりで役に立ちそう。ぜひ紹介したい」と話していました。(中3・吉本芽生)


 クイズ  紙面で学習

展示された紙面を見ながらクイズの答えを考える参加者

「ひろしま国」の紙面を基に作ったクイズでは、ジュニアライターが会場の受付で、問題用紙を配りました。クイズは5問。「国連の色は何色?」「クリーンエネルギーに含まれない発電方法は?」など4択です。参加者は、会場に展示してあるひろしま国の紙面をヒントにしながら、答えていました。

中島小4年の門脇友春君(9)=広島市中区=は「分からなかった問題は、張ってある記事を読みながら答えを探したので勉強になる。とても楽しい」と熱心に取り組んでいました。(中2・高矢麗瑚)



 フェアトレード  香り・色満喫

フェアトレードのコーヒーやハーブティーが振る舞われた喫茶コーナー

喫茶コーナーでは、途上国から適正な価格で仕入れたフェアトレードのコーヒーやハーブティーが振る舞われました。

ジュニアライターたちが準備したのは、ブラジルの無農薬コーヒーや、ケニアのハイビスカスとレモングラスを乾燥させて作った赤いハーブティーです。コーナーには、2007年10月にフェアトレードを取り上げたひろしま国17号のパネルも展示。訪れた人は、香りや色を楽しみながら味わっていました。

会社員寺西直美さん(46)=広島市中区=は「フェアトレード商品がもっと身近になるといいですね」とコーヒーを飲んでいました。(高3・岩田皆子)


来場者アンケート

「子の権利」「いじめ」に関心

 

来場者に、会場内に張った紙面の感想や「平和」への思いを問うアンケートをしました。

「ひろしま国の紙面で印象に残ったのは何号ですか」の質問には、17人から回答がありました。一番多かったのは「子どもの権利」に関する紙面で、6人が挙げていました。中でも45号で取り上げた、アフリカの子どもたちの人身売買や低就学率についての記事は「世界の中の小さな自分を見つめられる良い記事」(43歳、女性)「長時間労働のために麻薬が打たれているとは思わなかった」(匿名)など衝撃が強かったようです。

また58、59両号のいじめ特集も好評で、「娘の小学校で子ども同士のトラブルがありジュニアライターの意見などがとても参考になった」(39歳、女性)との感想がありました。中高生の目線で同世代の子どもについて考えた記事に注目が集まっています。

次に多かったのは、水の汚染やクリーンエネルギーなど環境についての記事で、3人が挙げていました。「東日本大震災で、水の大切さをあらためて考えさせられた。平和を考えるのに環境問題も一つと初めて感じた」(匿名)との声が寄せられました。

「皆さんが考える『平和』とはどんな世界ですか」の問いに対しては、「思いやりがつながる世界」(39歳、女性)「個人の幸せが追求でき、それを共有できる社会」(53歳、男性)「大人はもちろん子どもが笑顔で過ごせる世界」(女性)など、さまざまな意見がありました。

参加者から寄せられた文房具

「平和な世界をつくるには、中高生はどのような活動をしたらいいと思いますか」には、「多様な見方を身に付ける」(48歳、男性)「自分たちが必要だと思う行動を起こしてほしい」(51歳、男性)「戦争体験者の話を聞く機会をつくる」(匿名)などがありました。(高2・熊谷香奈、高1・田中壮卓)

 文具など震災地へ

会場の受け付けに置いた東日本大震災の被災者への義援金箱に集まった3万7677円は、中国新聞社会事業団に寄付。鉛筆やノートなど新品の文房具は、インターネットの実名登録制コミュニティーサイト「おのみち地域SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)」を通じて岩手県に寄付しました。インクカートリッジ150個と書き損じはがき190枚は、財団法人家族計画国際協力財団(東京)へ、筆箱やはさみ、メモ帳など約300個は財団法人NGO時遊人(同)へそれぞれ送りました。


高1・坂田弥優、中3・大林将也が撮影しました。