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平和交流〜米国学生との対話
違いを知る。大きな意義


国境を越えて、原爆と平和をテーマにした交流が実現しました。ひろしま国のジュニアライターと、米国・マウントユニオン大(MU大、オハイオ州)で平和学を受講する学生との間で、インターネットのテレビ電話を使った交流です。

きっかけはひろしま国の元ジュニアライターで同大4年の新山京子さん(22)の提案でした。原爆について詳しく知らない米国の学生と、海外で原爆がどのように認識されているか詳しく知らないジュニアライター。パソコンの画面で相手の顔を見ながら、被爆に関する映画を見て感想を述べ合ったり、「平和」をテーマにそれぞれ写真を撮って意見交換したりしました。

互いの考えや文化を学ぶだけでなく、自国についても知らない現実を目の当たりにした交流。今後の活動の糧になりそうです。


映 画
FILM
被爆者を描いた「マッシュルーム・クラブ」鑑賞

広島の詳細 教科書触れず 軍隊持たぬ世界つくろう

パソコンに映るジュニアライターを見ながら話すMU大の学生

広島の被爆者の体験継承をテーマにした映画「マッシュルーム・クラブ」をそれぞれ鑑賞。感想や意見を述べ合うとともに、原爆や戦争、軍隊などについて話し合いました。

ウェブカメラに向かって写真を示しながら意見交換するひろしま国のジュニアライター

ベックさんは「教科書には、広島の原爆で、実際に何が起きたかまで書かれていなかった。映画でよく分かった」と話しました。「被爆者が減る中で、若者の原爆への関心の低下に危機感を抱いている」と語ったのは熊谷さん。城本さんは「広島の若い世代は原爆のことを知らないわけではない。ゲームセンターでも遊ぶけど、原爆を振り返ることもある」と言っていました。

米国の軍隊について、ミラビルさんは「核兵器と強力な軍隊で、米国は強い、と他の国を恐れさせるのと、自分の国を守るため」と説明。高橋さんは「軍を持たなくていい世界をつくる必要がある」と訴えました。

平和のために日米の若者ができることについて、「メディアや教科書に出ていない、本当の歴史の真実を知ろうとすることが大切」と話したのは、シンプソン君。ベックさんは「学生が編集しているうちの大学の新聞と、ひろしま国の平和に関する記事を交換しよう」と呼び掛け、ジュニアライターも賛成しました。


マッシュルーム・クラブ 広島の被爆者を追った35分のドキュメンタリー映画。漫画「はだしのゲン」の作者で被爆者の中沢啓治さん、母親の胎内で被爆した原爆小頭症患者、お好み焼き店を営む被爆者たちを紹介。被爆の歴史に関心を示さない若者の姿も収め、被爆体験の風化に警鐘を鳴らしている。
 日系3世の米国人スティーブン・オカザキ監督の2005年の作品。アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門にノミネートされた。


写 真
PHOTO
「平和」をテーマに撮影

「平和」をテーマに、それぞれが写真を撮影。MU大の学生が15枚、ひろしま国のジュニアライターが16枚を出して、感想や意見を話しました。習慣や文化の違いが分かった一方、家族や友達などとの時間を「平和」と感じる共通性も発見しました。(クリックすると大きな写真を見ることができます)

若者のデモ

シンプソン君は「ここから車で30分のカントン市であった若者のデモです。貧困層と富裕層の格差を埋めるよう働きかけています。平等な社会を目指すことが平和につながります」と撮った狙いを説明していました。

兄妹でキス

城本さんは「日本ではきょうだいでキスしません。米国では、キスはあいさつ代わりですか」と質問。MU大の新山さんは「子どものころはよくします。大きくなったらキスよりハグ(抱きしめる)ですね。ハグは、久しぶりに会った友達や別れ際にもします」と答えていました。(バイッズさん撮影)

富士山の空

「富士山、という特別な場所、時の中に平和をイメージしていていい」とシンプソン君。撮影した高橋さんは「空を眺められる余裕のある生活が、平和につながると思う」と説明していました。

祖母と孫娘

「孫からおばあちゃんまで幅広い世代が『平和』をイメージさせる」と畦池さん。シンプソン君は「周りの自然も、彼らとの関係をより『平和』にしていると話していました。(ミラビルさん撮影)

家族で食事

ミラビルさんは「家族での食事は、どんな意味がありますか」と質問。秋山君は「普段よりさらっと話せる。行為を共有する仲間意識も出る」と回答。井口さんも「家族で会話するいい機会」と答えました。ミラビルさんの家族も仲良しで「いつもハグ(抱きしめる)しあっている」と言っていました。(秋山君撮影)


感 想
IMPRESSIОN
被写体に互いの文化
同じ観点 平和への糧

2回の交流を通して、「大学生が、原爆を落としたという事実しか知らなかったことに驚いた」と熊谷さんと城本さん。高橋さんも「米国の学生が、日本に米軍基地があることを知らないなんて」とびっくりしました。が、同時に「私も日本が海外で何をしているのか知らないことに気づいた」と反省しています。

熊谷さんは、米国や世界の国についてもっと知識を深める大切さを指摘。シンプソン君は「過去に起きたことを正確に知ることから始めたい」と言います。秋山君も「事実を知ることで、平和のための行動を考え、始められるはず」と考えます。

写真を通した「平和」については、ベックさんは「私たちの写真に写っていたのは個人や少人数だったが、ひろしま国のメンバーの写真には友達や家族が大勢いた」と分析。「個人主義と集団主義という文化の違いを感じた」と話します。一方、ひろしま国の井口さんは「国は違っても家族や友達と笑い会う姿を『平和』として表現していた」。畦池さんは「観点が同じであることは平和を実現させていく糧になる」と感じました。


報 告
REPОRT
MU大で発表 折り鶴作りも

MU大平和学の受講生は、授業の集大成として8日、学内で「ピースフェスティバル」を開催。ひろしま国ジュニアライターとの平和交流を紹介し、訪れた他の学生や大学職員たち約30人と平和への思いを共有しました=写真。

交流のきっかけや、「平和」をテーマに、MU大の学生とジュニアライターが撮影した写真をスライドで説明。原爆による白血病で亡くなった佐々木禎子さんと千羽鶴の話を紹介しました。最後に参加者みんなで、米国から広島へ平和の思いが届くことを願いながら折り鶴を作りました。

交流を機に、平和な世界に向けて発信する大切さを学んだ平和学の受講生たち。「ジャーナリストになって平和へのアプローチをしたい」とベックさん。写真家志望のミラビルさんも「平和に関する写真を撮りたい」と話すなど、将来のビジョンの中に、平和へのアクションを考えるようになりました。(新山京子)



参加者名簿 (敬称略)

ひろしま国 高2・畦池沙也加、熊谷香奈、高1・秋山順一、井口優香、城本ありさ、高橋寧々
 マウントユニオン大 4年・アリア・ミラビル、キャミレン・バイッズ、アシュリー・ベック、新山京子、2年・ジョン・シンプソン