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動物の東日本大震災
同じ命 歩みを共に


東日本大震災から間もなく1年。人間だけでなく、動物も被災しました。

家族の一員でもあるペット。震災で、家族と離れ離れになった犬や猫は、どんな生活を送っているのでしょう。また、災害時、盲導犬にはどのように接するべきでしょうか。

皆さんも、震災からの復興と平和な社会に向け、動物に対して何ができるか考えてみましょう。


福山の高橋さん
託されて責任感  ・・・被災者が飼育断念
皐月を抱きかかえる高橋さん(撮影・中2河野新大)

福山市の会社員高橋宗裕さん(52)は、宮城県東松島市で保護された犬を飼っています。名前は「皐月(さつき)」です。

動物好きの高橋さんは昨春、被災した犬を世話するボランティアのため、仙台市へ。その際、被災した犬や猫を保護しているペットショップを訪れ、皐月に出会いました。

津波にのまれた街をさまよっていたところを保護された皐月。高橋さんは飼い主が見つかるまで預かるつもりでした。飼い主は現れましたが、夫が仮設住宅暮らしで、妻は入院中。もう飼えないことが分かり、昨秋から高橋さんが飼い主になりました。

高橋さんは「元の飼い主さんから託された命。震災を忘れず、責任持って世話したい」と話します。(高2・岩田萌、中3・佐々木玲奈、市村優佳)

ボランティア(左)からおやつをもらう被災したペット=2011年3月(ドックウッド提供)
元の暮らし 復帰は4割
 ・・・避難者のペット一時保護 仙台の「ドックウッド」

被災した犬「皐月」を保護したのは、仙台市青葉区のペットショップ「ドックウッド」です。避難先で飼い主と暮らせないペットの一時預かりを含め、これまでに犬310頭、猫130匹をボランティアで保護しました。そのうち飼い主の元に帰れたのは、約4割です。

残りの犬猫は、ドックウッドの施設内や一時預かりのボランティアの家で飼われているほか、新しい飼い主にも引き取られました。

代表の我妻敬司さん(41)は「中高生でも散歩などのボランティアができる。期間も問わないので、積極的に参加してほしい」と呼び掛けています。(中1・重田奈穂)

岐阜のNPO法人理事長山口さん
災害救助犬目指し訓練  ・・・福島県飯舘生まれ
じゃがいもを訓練する山口さん(日本動物介護センター提供)

NPO法人日本動物介護センター(岐阜市)の理事長山口常夫さん(60)は、福島第1原発事故で、全村避難になった福島県飯舘村生まれの犬を災害救助犬に育てています。「福島の代表として、たくさんの人を救い、震災で受けた恩を返せるようになってほしい」と願います。

山口さんは昨年7月、原発事故による混乱で、もらい手が見つからなかった子犬を譲り受けました。飼い主からのお礼にちなみ、「じゃがいも」と名付けました。

生後8カ月。運動神経がよく、人間好きです。人を見つけたらほえて知らせるなどの訓練をしています。成績は優秀だそうです。今秋、災害救助犬になるための試験を受ける予定です。(高1・高橋寧々)

福島の原田さん
ペットと違う。理解深めて  ・・・盲導犬ハーツ
原田さんに寄り添う盲導犬ハーツ(日本盲導犬協会提供)

福島県いわき市の盲導犬ユーザー、原田宗雄さん(67)は、津波に遭いながら、盲導犬ハーツのおかげで九死に一生を得ました。避難所暮らしやアパート探しでは苦労もありました。「盲導犬はペットではない。むやみに触らないなど理解を深めて」と言います。

地震の時、原田さんは南相馬市の自宅にいました。妻とハーツと車内に避難。津波に襲われ、水が入って来て「もうだめかもしれない」と思った時、たまたま近くにいた若い男性が、白いハーツが動いているのに気付き、腰まで水に漬かりながら助けてくれました。

避難所で一番困ったのは、ハーツを触る人がいたこと。触られると遊んでもいいとハーツが勘違いするからです。新しい住まいを探す時、盲導犬のことを伝えると、騒ぐのではないかという思い込みから民間住宅はどこも断られました。今は、盲導犬と入居できる県営住宅で暮らしています。(高1・秋山順一)

警戒区域の犬猫を保護  福島県
警戒区域内の柴犬を保護する福島県の職員=2011年秋(福島県提供)

福島県は、福島第1原発から半径20キロ圏内の警戒区域で被災した犬猫を中心に保護しています。原発事故の影響で、自宅に戻れるのがいつになるか分からない被災者のペットがたくさんいます。

 犬193頭、猫54匹(2月6日時点)を県内2カ所のシェルターで保護しています。半数以上は仮設住宅などで飼うことができない被災者のために、一時的に預かっています。残りは飼い主が分かりませんが、殺処分せず、新しい飼い主を探しているそうです。施設は、動物のために寄せられた義援金で、県や県獣医師会などが運営しています。

 原発事故の直後、ペットと避難できない被災者もいました。そのため、県職員が、飼い主の代わりに区域内に残されたペットを保護してきました。獣医技師の小野剛さん(44)は、飼い主の衣類のそばで亡くなっている猫の姿を見てつらかったそうですが、「飼い主さんの元へ無事に返せた時に喜びを感じる」と話していました。(高2・畦池沙也加)

沖縄からセラピー犬 被災者に笑顔
岩手県釜石市の小学校でセラピー犬と触れ合う児童=2011年9月(沖縄災害救助犬協会提供)

NPO法人沖縄災害救助犬協会(沖縄県うるま市)は、協会が認定する優しい気性の「セラピー犬」を被災地に派遣しています。犬との触れ合いを通し、被災者の心を癒やす取り組みです。

同協会は震災直後の昨年3月、災害救助犬を派遣したものの、大雪や燃料不足で活動を断念。別の形で支援しようと昨秋、セラピー犬による心のケアを始めました。

これまでに2回、岩手県と福島県を訪問。仮設住宅にこもりがちの被災者が犬との交流を楽しむようになり、小学校では児童に笑顔が戻りました。小学6年の少女は、家族が津波で流されたことを自ら話し、「大きな犬が飼いたい」と夢も語ってくれました。

協会の専務理事幸喜馨さん(60)は「犬との交流で気持ちを和らげ、前向きになってほしい」と願います。(中3・木村友美)