english
世界の中のヒロシマ

(3)科学の光と影 中学生が学ぶ大下知慶

ジェバレコ!

ウガンダ語で「お疲れさま」です。私は青年海外協力隊の一員として東アフリカにあるウガンダの田舎(いなか)で、中学生に数学と物理を教えています。広島市に生まれたということもあり、赴任(ふにん)した際は、原爆関連のイベントを企画することが一つの課題でした。

ウガンダの中学生

ヒロシマの絵本を使った説明に聞き入る中学生たち(2006年8月)

大下知慶(おおした・とものり)

広島市安佐北区生まれ。大学卒業後、システム関連会社を経て、2005年12月、青年海外協力隊員(理数科教師)としてウガンダに赴任した。

2006年8月6日原爆記念日に、現地の学校で、約300人の生徒たちを集め「サイエンスフェア」を開きました。原爆が落とされたヒロシマを紹介し、科学の「負の部分」と「楽しい部分」を学びました。今後、科学がどのように利用されていくべきかを考える良い機会となったと思います。

 赴任している理数科教師やほかの隊員の力を借りて、熱気球やペットボトルロケットなど計6つの実験をしました。どの実験も子どもたちの笑顔は、とても印象的でした。ヒロシマについては、科学と関連付けるため、核分裂(かくぶんれつ)について解説しました。ウガンダでは、早い段階で原子力や核分裂について学ぶため、よい復習の機会にもなりました。

 この技術がヒロシマに利用されたこと、それによる被害、後遺症(こういしょう)などについて、手作りの教材で解説しました。原爆の大きさは、縄(なわ)を使って、実際の大きさを連想(れんそう)させるように工夫(くふう)しました。「教室にいるすべての人が一発の爆弾で無差別に命を落とす」と強調したときは、緊張感(きんちょうかん)が手に取るように伝わってきました。

ウガンダ地図

 最近、ウガンダでは核の原料となるウラニウムが発見されました。私たちはそれをどのように利用すべきなのか−。「世の中に存在する2万7000発以上の核弾頭(かくだんとう)を放っておいてヒロシマ、ナガサキの悲劇を繰り返すのか、考えてほしい」と訴え、将来、彼らが直面(ちょくめん)するかもしれない問題であるということを強調しました。

 19歳の男子生徒はこう感想を述べました。「ヒロシマは私たちが学ぶ科学によって破壊されてしまったのですね」

 科学なしで人間社会はここまで発展することはできませんでした。当然、経済発展を期待する政府は科学技術の発展を重要視しています。この国で子どもたちに科学を教えている私たちは、彼らの将来について、とても重要な役割を担っていることをあらためて感じました。

なるほどキーワード

  • 青年海外協力隊

    発展途上国の人々のため、能力や技術を生かす20歳から39歳までのボランティア。国際協力機構(JICA)が派遣する。1965年から延べ約2万8000人が参加。約70カ国で教育文化や保健衛生などの職種に就いている。