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世界の中のヒロシマ

(12)劣化ウラン禁止へ思い共有森滝春子

5月、2度目となるベルギー訪問をしました。首都ブリュッセルには欧州連合(EU)欧州議会があります。ベルギーは「対人地雷禁止法」(1995)や「クラスター爆弾禁止法」(2006)、そして「劣化ウラン弾禁止法」(2007)を世界に先駆けて制定した軍縮先進国です。

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劣化ウラン被害写真展の会場で各国の参加者と、バナー「劣化ウラン兵器を禁止しよう」を掲げる筆者(左から4人目)

森滝春子(もりたき・はるこ)

広島市中区生まれ。佐伯区在住。核兵器廃絶をめざすヒロシマの会・共同代表。NO DU(劣化ウラン弾禁止)ヒロシマ・プロジェクト事務局長、インド・パキスタン青少年と平和交流をすすめる会・世話人代表なども務める。

イーペルという町は第一次世界大戦で世界で初めて毒ガスを使われ、50万の人が亡くなり街が壊滅しましたが、その体験を忘れず生かしているのです。戦禍の記念碑が街中に残され、毎夕キャンドルをともし祈りをささげる姿にヒロシマとのつながりを感じました。

今回はブリュッセルであった、欧州議会の議員有志とウラン兵器禁止国際連合(ICBUW)共催の劣化ウラン兵器禁止キャンペーン写真展と国際フォーラムに参加しました。

劣化ウラン兵器というのは、重金属のウラニウムから核兵器や原発の核燃料を製造する過程で生み出される放射性廃棄物(核のごみ)を使用した爆弾で、放射能毒性と重金属の化学毒性を併せ持った危険な兵器です。1991年の湾岸戦争をはじめ、イラク戦争などで使われてきました。破壊力が強く、原料としても安いため「優秀な兵器」として多く使われ今では二十数ヵ国が保有しています。

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使われた地域の住民はもちろん、使用した側の米国兵士たちの間でがんや白血病など深刻な影響が表れ、放射能による環境汚染も大きな問題になっています。アメリカ政府は、劣化ウラン弾の危険性を認めようとしていません。

被爆体験から放射能の恐ろしさを知っているヒロシマは、劣化ウラン兵器の使用や製造を見過ごすことができません。昨年8月に、広島に世界中から被害者や科学者、禁止に取り組む人々が集まって「ヒロシマから世界へ届けよう―劣化ウランヒバクシャの声を」と大規模な国際大会を開き即時禁止を訴えました。その発展として今回の欧州議会内での劣化ウラン兵器禁止キャンペーン写真展が開催されたのです。

ヒロシマからの訴えは、各国出身の欧州議会議員やジャーナリスト、議会スタッフの心に届いたと感じました。主催者の一人でドイツからの議員アンゲリカ・ベールさんは「ヨーロッパを“非ウラン兵器地帯”にしよう」とスピーチしましたし、自分たちの国でも写真展をと、各国での開催が計画されはじめています。私たちの運動の紹介も、世界へのメッセージとなりました。

残虐な兵器によって人間が傷つき、命を奪われ、環境汚染によって地球の未来を奪ってしまう戦争の実態を知り、知らせるということは、それを止めるための大きな力になるのだと思います。