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世界の中のヒロシマ

(17)占領の過去超え平和交流谷 英樹

去る8月8日、シンガポールの第42回独立記念日の前日、私は広島シンガポール協会の田村鋭治会長とともに、シンガポール政府の外務省を訪れていました。私たちは、日本の二国間団体としては初めて、シンガポールの外務大臣から招かれたのです。

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シンガポールの外相と握手する田村会長(左)

広島シンガポール協会は、1995年の発足以来、シンガポールの大学生を中心とする学生交流を地道に続けてきました。私たちのプログラムで広島を訪れたシンガポールの学生は延べ600人近くに上っています。しかも、そのほとんどは自分のお金で広島に来ているのです。

私たちは、広島の企業での3週間の体験研修や、家庭での1週間のホームステイなどのプログラムを準備し、お世話をしています。今回の外務大臣による異例のお招きは、このような地道な活動を高く評価していただいてのことでした。

広島シンガポール協会はその発足に当たって、原爆による廃虚から平和都市へと復興した広島の地で活動する二国間友好団体として、若者を中心とした人と人との相互理解を深めていくことにより、平和な世界づくりにささやかながらも一役買いたいと考えました。

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広島をこれまで訪れた学生・先生たち約50人との交流会(8月8日)

たに ひでき

広島市中区出身。広島信用金庫常勤理事営業渉外部長。2003年から広島シンガポール協会事務局長。

日本は、第二次世界大戦の際に、シンガポールを3年半もの間占領しています。その間のシンガポールの人たちの悲惨な体験は、世代を超えて語り継がれています。それだけに、私たちは平和な今の時代を未来へと引き継いでいくために、若者を中心とした相互理解を進めることから始めようとしたのです。

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シンガポールは、広島市よりも小さな面積の小国ですが、スイスの研究機関が発表した07年版国際競争力ランキングで2位に入るなど、ビジョンを掲げたダイナミックな国づくりを進めている若くて勢いのある国です。中国系、マレー系、インド系など多くの民族が暮らす多民族国家でもあります。それぞれ異なる言語・文化・宗教・生活習慣を持ちながら、互いの違いを受け入れて一つの国を築き上げているのです。

このような多様性を受け入れる力、ビジョンを掲げたダイナミックな取り組みなどはこれからの広島に最も求められていることの一つだと思います。私たちは、学生交流を通じて、そんなシンガポールの活力を広島に紹介したいと考えています。