中国新聞


引きこもりの若者ら ふれあい語り合い
交流スペース 社会への扉に
広島・東広島で取り組み


 引きこもりの若者や、仕事に就かず学校にも通わないニートと呼ばれる若者が増えている。なかには社会に適応することが難しい若者もいる。そうした若者を対象に、集い交流する場がある。同じ立場でふれあい、話し、社会に参加する力をつけるのがねらいだ。

(治徳貴子)

■「対人」まず慣れる ボランティア・仕事体験も

 特定非営利活動法人(NPO法人)「青少年交流・自立・支援センターCROSS」が広島市中区に設けた一戸建てのフリースペース。居間にはこたつが置かれ、家庭的な雰囲気だ。

□落ち着く場所

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「焦らず、できる仕事を探したい」という男性(手前)。スタッフの菅さんは、将棋を指しながら心をほぐす(CROSSが開設しているフリースペース)

 高校を卒業したものの、人に会うのが怖くて引きこもった経験のある東広島市の男性(25)は、緊張気味にこう話す。「自分一人では何もできないので他人から学びたい。同じ立場の人と会うことからまず始めたい。人に対する恐怖感をまずぬぐいたい」

 中学校で不登校を体験し、現在無職の広島県府中町の男性(25)は「学校にも仕事にも行っていないと行き場がない。共通点がある人が集まる場は落ち着く」という。「友達をつくりたい」というのが参加の動機だ。二年前から通っている。

 この男性は、ここでの交流が刺激となり、この春には高等技術専門校への入学を目指す。「木工が好き。建築を学んで、小規模な職場で大工として働きたい」と穏やかな表情だ。

 今、ここに集まってくるのは、十七歳から三十八歳までの男女十三人。話だけでなく、スポーツやゲームを通し、まず対人関係に慣れることから始めていく。

□就労の相談も

 ボランティアに参加して働く自信をつけたり、産業カウンセラーに仕事の相談をしたりもする。就労を体験できるようにと、受け入れ先も探している。

 理事長の斉藤圭子さん(49)は、「自分のことで精いっぱいの参加者が多く、フレンドリーな雰囲気とは言い難いが、ストレスを受けても生きていけるようになることが重要。人間関係の理想を捨てることも大切です」と話す。

 CROSSのスタッフは、引きこもりの子を持つ親など五人。その一人、大学院生の菅高志さん(31)は「義務教育の間はいろんな支援があるが、その後は支援を受けにくい。二、三十代で社会参加が難しい人に、民間の支援が必要」と話す。

 東広島市では昨年六月、引きこもりの子の親でつくる「木曜会」のメンバーが、引きこもりやニートの若者が集まって交流する「翼の会」を、高屋福祉センターで始めた。

□少しずつ変化

 現在参加しているのは、コミュニケーションが苦手な市内の無職の三十代男性一人。今のところほかの参加者がいなくて交流は難しいが、週に二回やってきて、車部品を扱う内職の仕事体験をしている。

 一日に五時間働いて、日給は千円程度。内職を提供している製作所は、週一日だけ工場で働く勤務を提案しているが、男性には一日八時間の労働に耐える自信がまだないという。

 それでも「親しくなった他の講座の参加者の体調を気遣うなど、少しずつ社会参加の方向へ変化している」と運営者。「この会はあくまでも通過点。自分で目的を見いだして、歩き出してほしい」と見守っている。

(2005.1.26)


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