中国新聞


少年犯罪防止プロジェクト1年
万引、低年齢化 鈍い減少率


 広島県と県警、県教委が少年の万引を減らすことを最重点に「少年犯罪防止緊急対策プロジェクト」を始めて間もなく一年。活動の広がりもあり、少年犯罪は減った。しかし、「犯罪の入り口」と位置づけた万引の減少率は鈍い。小学生など低い年齢で増える傾向もあり、問題の根深さを示している。一過性の取り組みに終わるのではなく、対策の成果と残った課題をしっかり分析し、息の長い活動に発展させることが欠かせない。

(加茂孝之)


 ■課題分析 息長い活動に

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フタバ図書MEGAの店内で、万引防止パトロールに参加する安西高の生徒。地域で対策が進んでいる

 「万引を発見した場合はただちに警察に通報いたします」。広島市安佐南区のフタバ図書MEGA店にポスターが掲げられている。二月中旬には、地元の安西高の生徒たちが店内をパトロール。住民のパトロールも積極的に受け入れる。

▽マニュアル定着

 プロジェクトチームは昨秋、万引防止マニュアルを作り、スーパーなどに配った。県内の約八百店がマニュアルを活用。「当初は消極的だった店からの協力も広がり、大きな力になっている」(同チーム)。店員による声掛けや陳列棚を低くして見通しをよくするなど、万引しにくい売り場作りが進む。

 同チームが発足した昨年四月から十二月の少年犯罪の発生(推計値)は前年同期比28%減の約一万三千件。少年犯罪を一年で一割減らす目標は達成できる見通しだ。

 同期間中に逮捕、補導された刑法犯少年も前年比13・1%減の二千八百四十二人。しかし、万引だけをみると8・6%減の九百九十人と、減少率は低く、刑法犯全体に万引が占める割合も34・8%と高止まりの状況だ。

▽小学生15.7%増加

 県警少年育成課の石上光次次席は「対策の強化で、事業者らから通報が増えて減少率は一時的に鈍ったとみている。継続的に取り組めば、さらに減らすことができる」と分析する。しかし、「低年齢化は深刻」と危機感を強める。その言葉通り、逮捕、補導者の内訳は、中高生が10・8%減少したのに、小学生は15・7%増えた。

 県内では昨春以降、小中学校の教師が警察官から万引を防ぐための指導法を学び、学校での指導に生かした。県警なども全小学校での防犯教室を進める。地域のパトロールも活発になり、紙芝居のような、親子が一緒に語り合える教材もボランティアの手で生まれた。

▽欠かせぬしつけ

 「子どもや親の意識は変わってきた。万引を減らすには、幼児期からの教育としつけが欠かせない」と同プロジェクトチームの平岡好一室長は強調する。

 これまで芽生えた活動をどう広げ、万引の低年齢化に歯止めをかけるか。プロジェクトを通して生まれた、人や組織のネットワークが、新たな教材を開発したり、パトロールで声掛けをしたりといった活動を続けていけるよう、今後も支援することが必要だろう。


少年犯罪防止緊急対策プロジェクトチーム 少年犯罪を1年で1割減らすことを目標に、県と県警、県教委が昨年4月に設置。万引を犯罪の入り口と考え、全小学校で防犯教室を実施。事業者に対策の強化も呼び掛けてきた。新年度も取り組みの一部を続け、地域の活動をホームページで紹介したり、紙芝居の配布などを続ける予定。

(2005.3.4)


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