中国新聞


県立高の通学区全廃
広島県教委 来年度から


 ■中国地方で初

 広島県教委は十三日、県立高校の全日制普通科六十校に適用している六つの通学区域を二〇〇六年度から廃止し、「全県一円」にすることを決めた。生徒の個性や能力に応じ、主体的に学校を選択できるようにするのが狙い。全国では東京や和歌山など八都県が同様の試みを実施しているが、中国地方五県では初めてとなる。

 学区の全県一円化は、県高校教育改革推進協議会が、〇一年十月の答申に盛り込んでいた。県教委は昨年度、中、高校の校長や学識経験者らと協議を重ねるなどして、答申に沿って学区廃止に踏み切ることにした。

 県教委は〇三年度、それまでの十五学区を広島、呉・賀茂、福山、尾三、芸北、備北の六学区に再編した。同時に他学区からの入学限度枠を5%から30%に緩和。「事実上、全県一円化に近い状態」(県教委学校経営課)になっていた。

 一方、三原市と合併した旧大和町は尾三学区に変更になりながら、従来の呉・賀茂学区の高校も選べる。これを含め三地域は市町村合併によって、二つの学区の学校が自由選択でき、他地域との格差が生じた。学区廃止は、こうした格差を解消する目的もある。

 工業や商業など専門学科、総合学科、普通科コースの通学区域は既に全県一円となっている。関靖直教育長は「各校は全県的な視野に立ち、特色ある学校づくりを進め、切磋琢磨(せっさたくま)できるよう環境整備に取り組みたい」と話している。

 一方、広島市教委は、原則として市内を通学区域とする普通科五校について「県教委の決定を踏まえ今後の対応を考える」としている。また、今は福山市内と周辺四市三町を通学区域とする市立福山高校について、福山市教委は「見直す計画はない」としている。

 ▽学校の特色づくり迫る

 【解説】広島県教委が決定した来春からの県立高校通学区域の全県一円化は、少子化時代にあって、「選ばれる学校」としての存在感を、高校側に求める改革となる。

 「多様な進路希望に応える」。県教委は目的をそう説明するが、高校間で特色づくりを競わせる狙いもある。合格者を学区内の高校に振り分けた総合選抜制の廃止から七年。学区廃止は、機会均等を重視してきた戦後教育の流れを、自由な選択と競争の方向へと変える意味合いも持つ。

 上限30%の「学区外通学」は既に現行制度にあり、教育現場の激変はない、との見方もある。しかし先行地の一つ、東京都では有名進学校の入学倍率が学区廃止後、上昇傾向を見せた。県内でも学校間の格差が、さらに広がる可能性がある。中山間地域や島しょ部に今以上の「教育過疎」を生まないケアも、県教委には求められる。

 今春の中学卒業者数は一九八〇年代後半の六割を切る。その中で各校が危機感を持って学校経営に当たるのは、時宜にはかなっている。制度面での学区再編は幕引きを迎えた。が、全県からの評価に耐え、学力にとどまらない幅広い特色を生み出す教員の力量アップなど、課題は尽きない。

(金刺大五)

※県立高普通科「学区の壁」全廃 関係者に期待と不安

(2005.5.14)


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