中国新聞


不登校生に休息の場を
フリースペース「滔滔(とうとう)」を開く亀岡宏志さん


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ひときわ目立つ手書きのポスター。「力作でしょ」と掲示板に張る亀岡さん

 最近、利用者ゼロが続いている。「おかしいな。宣伝が足らんのじゃろうか」。市内の公共施設にチラシを置かせてもらえるよう、「営業」に走る日々。

 行き詰まった若者の休息の場になればと、二〇〇二年十月からフリースペースを始めた。自身も心身症を患い、今も苦しみを引きずる。「自分がぐらついているからこそ、できることがある」

 高校で、いじめに遭った。背中越しに聞こえた。中傷の言葉が、あざ笑う声が…。教室にいると動(どう)悸(き)がして汗が出た。「学校に行きたくない」と頭で思う。でも休めなかった。「止まったら終わりだ」。そんな恐怖と闘っていた。

 「再出発」と意気込んで入った専門学校。ところが、教室の雰囲気に触れると、あの緊張感がよみがえった。いじめの「後遺症」か。苦しい、怖い―。そんな時だった。新聞でフリースペースの存在を知ったのは。

 恐る恐る、訪ねてみた。不登校の中・高校生が自分の時間を楽しんでいた。「休んでもいい。いろんな人がいてもいい」―。そんな考え方を初めて知った。思い切って専門学校を辞めた。解放された気がした。

 フリースペースは月二回、西区の三篠公民館で開いている。運営費はアルバイトで工面する。強い人間になったわけじゃない。今も人に会う前は体が震える。でも―。「さまよっている人は、きっといる」。だから今日もチラシ張りに駆け回る。

(木ノ元陽子)

(2005.7.22)


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