中国新聞


福山市、英語教育を加速
神辺編入後も小学校指導継続


 ■合併へALT倍増検討 / ノウハウ蓄積 「先進」維持

研究授業で身ぶりを交えて英会話を指導する道上小の沖浦教諭

 福山市は、二〇〇六年三月に編入合併する神辺町が独自に取り組む小学校での英語活動(指導)を、合併後も継続する方針を固めた。小学校の学習ではまだ「白紙の状態」である市は、合併を機に英語指導の水準を同町に近づける対応にも迫られる。編入される「先進地」が、英語指導の充実に向け、四十七万人都市の背中を押す格好になる。(小島正和、山本将克)

 市内の小学校で先駆けて英語指導を取り入れる明王台小。「異文化への抵抗をなくし、英語に慣れ親しむには母国語とする人たちとの交わりが必要。ぜひ外国語指導助手(ALT)の拡充をお願いしたい」。約四年間、独自の試みを積んだ中村正介校長の実感である。

▽配置率は7倍

 市内の市立小は七十二校、中学三十三校。これに対し市教委は七人のALTを配置する。一方、神辺町は小学六校に四人、中学三校に一人を置く。神辺ではALT一人当たり約六百九十人の児童・生徒数を受け持つが、福山の場合は約五千人に一人。その上、市教委はALT派遣を中学校に限定し、小学校は「蚊帳の外」にある。

 保護者からは、小学校段階での英語指導への要望が強い。これを受けて〇四年度、独自に英語指導を試みた市立小は五十二校に上り、全体の72・2%を占める。各校は海外在住経験があるボランティアを募ったり、「特別非常勤講師」として外国人を招いたりと、工夫を重ねている。

 「神辺並みとまではいかなくても、英語指導の環境を充実させたい気持ちはある」と市教委学校教育部の吉川信政部長。市教委は今後、段階的にALTを増やし、来夏にも小学校へのALT派遣を始める方針だ。将来は今の倍以上の配置を目指す。神辺町との合併が、市教委の検討を加速させ始めた。

▽減員もにらむ

 一方、「後進」の都市に編入される神辺町。「町にALTが四人いるうちに、日本人による指導法を確立したい」(町教委教育指導課)。やがては減員されかねない合併後をにらみ、日本人教諭の指導力向上に力を入れ始めた。

 「レッツ・スタディー・イングリッシュ」「オー・ケー」。九月二十八日、町立道上小の五年二組。担任の沖浦千絵教諭の呼び掛けに、児童三十六人が元気よく応えた。通常、ALTとペアで授業を進めるが、この日は一人でこなした。同小では四月から、研究授業として日本人の担任教諭だけの英語指導を試行している。

 当面、現態勢で英語指導は継続されるが、「市の教育制度に統一されれば、現在のようなALT配置は難しい」(町教委)との受け止めが強い。半年を切った合併までに、少しでも小学校での指導ノウハウを蓄積しようというわけだ。

 文部科学省も、小学校での英語必修化の検討を急ぎ始めた。来年三月、合併と同時に福山市立小には、異なる英語指導の環境が生まれる。そのレベルを合併前の市ではなく、町に近づけることを、多くの保護者や教育現場が望んでいる。


外国語指導助手(ALT) 主として中、高校で英語など外国語教員の授業を補助する。外国青年招致事業(JETプログラム)を推進する総務省の外郭団体「自治体国際化協会」の仲介で、自治体や私立学校が採用するケースがほとんど。神辺町は2004年度から、JETプログラムとは別にALT4人を独自に採用。町内の公立小全6校のすべてのクラスで週1時間、英語指導を実施している。

(2005.10.17)


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