中国新聞


広島県内4−8月 不審者情報、6倍増332件 
安全な学校へ要望高まる


 学校を地域で見守り、子どもたちをいかに守っていくのか―。大阪・池田小の児童殺傷事件などをきっかけに、県内でも安全対策の充実を求める声が強まっている。広島県教委などに寄せられた不審者情報は、四〜八月の五カ月間で三百三十二件と前年同期比の六倍近くに増えた。背景には、住民の強い不安がある。(吉村時彦、野田華奈子)

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多治米小の正門脇で久保校長(左)に来校者への案内表示について指導する高尾さん

 十月二十七日、福山市多治米町の市立多治米小(久保辰己校長)をスクールガード・リーダーが初めて訪れた。県警OBの高尾宜秀さん(54)。不審者から学校を守るため、県から派遣された四人のうちの一人だ。

 校内の死角、緊急時の連絡態勢…。高尾さんは問題点を挙げながら、「学校の配置は部外者には分かりにくい。案内図や矢印で導線を作れば正規の訪問者か不審者かを見分けやすくなる」と指摘。久保校長らは大きくうなずいた。

 学校現場では、凶悪事件の報に接するたびに緊張感が高まる。一方で「すべての門に施錠して地域との交流を絶つのも…」という悩みもある。スクールガード・リーダーは、そうした課題をクリアするため、文部科学省が今年初めて七億五千万円を予算化した。住民ボランティアに助言もする、防犯のプロが県内では福山市と広島市の二カ所で動きだした。久保校長は「これまでなかった制度で、ありがたい」と喜ぶ。

 しかし、福山市の小学校は七十二校。わずか四人では限界がある。広島市も五人。学校側は「市教委、県教委とのパイプ役でもある。来年度以降も継続して、できれば人数も充実させてほしい」と願う。

 大阪府は今春、訪問者に対応する受付員を七百二十の小学校すべてに配置する単独事業を始めた。コストは約六億円だが、府は「国の事業だけではカバーしきれない可能性もあったから」と話す。地域の実情に合わせて安全対策をどう講じるのか。自治体独自の取り組みも求められる。

(2005.11.3)


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