中国新聞


「子どもの安全」
住民防犯 継続を支援
点検・広島市予算案から


 ■全小に巡回用バイク

 児童が下校を始めるころ、オレンジ色のジャンパーを着た保護者や住民たちが集まってきた。広島市中区、白島小学校の正門前。教員らと通学路に立ち、子どもたちに声を掛け、登下校時の安全に気を配る。

 学校周辺だけではない。離れた家の保護者たちはそれぞれの自宅前や近くで、下校する子どもたちを見守る。

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下校する白島小の児童を見守る保護者や地域住民ら。長続きのための支援が行政の課題となる

見守り参加減少

 オレンジ色は、子どもの安全や防犯活動をする際の白島小の統一カラー。住民がそろって着用して学校内や通学路を歩くことにより、犯罪抑止効果と住民意識の向上を期待しているという。

 見守り活動は昨年三月、学校が地域住民と連携して本格的にスタートした。昨年十一月の安芸区での小一女児殺害事件後、地域の輪はさらに広がった。しかし現在、事件の衝撃が薄らいだのか、通学路に立つ人は少し減ってきているという。「どうやって活動を長続きさせるかが課題」。ほぼ毎日、正門前に立つ常国清校長(56)が強調する。

事件教訓6900万円

 こうした現場の声も踏まえ、市は「子どもの見守り活動十万人構想」を打ち出した。新年度当初予算案に、子どもの安全対策費として六千九百万円を積んだ。巨額とはいえないものの、秋葉忠利市長は「悲しく痛ましい事件の教訓を生かす意味で力を入れた」と話す。

 中でも学校現場の声に対応したのが巡回用バイクの導入。教職員や地元住民が通学路を見て回るため、バイクか自転車を百四十の市立小学校すべてに一台ずつ配備する。屋根付き三輪バイクや電動アシスト付き自転車など四種類を用意し、都心部か田園地帯かなど地域の実情に応じて各校が選択。予算の範囲で希望に応える。

 例えば屋根付き三輪バイクは屋根に青色灯を付け、車体は目立つ黄色にして見守り活動のシンボルに位置付ける。機動力強化に加え、白島小のオレンジ色と同様に、抑止力効果にも期待する。

 十万人構想は、市立小中学生約九万五千人と匹敵する人数の大人を確保し、子ども一人を大人一人が見守ろうという計画だ。体制整備には、従来の学校安全ガードボランティアに自治会や町内会などの地域団体メンバーを加えた三万人をベースに、買い物や散歩の際に子どもを見守る市民の協力者七万人が必要となる。すなわち、地域の協力が欠かせない。

地域の総合力を

 「子どもにとって安全な街は、住民にとっても安全な地域。結局は自分たちのためにもなる。みんながそれぞれの立場で協力し合う、地域の総合力が求められている」と常国校長は指摘する。

 地域の実情に応じ、いかに長続きする態勢づくりを進めるか―。学校と地域の取り組みをバックアップするため、基盤整備や意識啓発など市が果たすべき役割は大きい。(宮崎智三)

(2006.2.14)


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