中国新聞


学区撤廃 激変なく
広島県公立高倍率 全日制本校1.21倍


 ■迫られる特色づくり

 広島県内の公立高校九十七校は二十二日、二〇〇六年度の一般入試(選抜U)の志願変更の受け付けを締め切った。県立高校普通科の学区を撤廃して初めての一般入試。全日制本校九十二校の平均志願倍率は一・二一倍で、本年度と同じだった。

 全日制本校は計一万二千八百三十人の定員に、一万五千四百七十一人が志願。十七日の初回の締め切り以降、五十二人が志願を取り下げた。定員割れは、本年度より八校六学科少ない三十三校四十五学科となった。

 志願者が最も多い普通科の倍率は一・一六倍で、本年度を〇・〇四ポイント下回った。学校別では広島市工業の機械科が二・七五倍、普通科では安芸府中の一・九八倍がそれぞれ最も高かった。

 全日制分校二校は志願者数に変動はなく十三人、定時制二十一校は七人増えて六百九十四人が志願した。学力検査は三月七、八日にあり、合格発表は十四日。(金刺大五)

 二十二日に県教委がまとめた学区撤廃後初めての県立高校普通科の志願状況で、倍率などの激変は起きなかった。生徒の進路選択の幅を広げ、すべての高校に「特色づくり」を迫る学区撤廃の試み。高校側の試行錯誤は始まったばかりだ。

 志願状況を見ると、特定校への人気の集中などはなく、逆に「進学上位校」とされる学校の多くで下がる現象も出た。「初めての制度で、生徒や保護者、関係者も慎重になったのでは」。国泰寺高(広島市中区)の安森譲校長は、学区撤廃の初年度の状況をそう受け止める。

 ただ学区撤廃を安森校長は、「県内一の『進学校』だったかつての姿を取り戻す好機」ととらえる。学校紹介のパンフレットで遠隔地からの通学の所要時間を地図付きで説明。生徒を広く募る姿勢を鮮明に打ち出した。

 それに対し、都市部への生徒の流出を懸念する声は県北部などの高校に強い。三次高(三次市)の田辺康嗣校長は「これまで学区に守られてきたが、自立する努力が欠かせない」と言い切る。

 同校は本年度初めて、教諭が中学校に出向く「出前授業」を三次市内の四校で実施。近隣の高校と合同で大学入試の講座も設けた。県北部の教育環境を守る「正念場」(田辺校長)と構える。

 一方、生徒を送り出す側の県西部の中学校長は学区撤廃について「高い交通費を払ってまでという魅力が、まだ見えにくい」とする。その上で、「高校側が実績を挙げ、積極的な情報発信を続ければ、いずれ本当の意味で『学区の壁』がなくなる」と予測する。

 今春の中学卒業者数は約二万八千人。一九八〇年代後半の六割を切る。学区撤廃を機に、少子化時代の質の高い教育への環境づくりが各高校へ一層求められている。(金刺大五)

(2006.2.23)


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