中国新聞


脱ひきこもり 焦らず
「フリースペースくろす」開設3年


 ひきこもりがちな青少年の居場所「フリースペースくろす」(広島市中区吉島)を、主婦齋藤圭子さん(51)=西区=が二〇〇三年三月に開設して丸三年。仕事体験の場を用意したり、相談に乗ったりしながら、八人を就職や大学進学で社会に送り出してきた。その中で、ひきこもり脱出には「三つのヒント」があることを齋藤さんは発見したという。(石丸賢)

 ■齋藤さん 三つのヒントを伝授

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「ひきこもりに、焦りは禁物。ただ、脱出にはタイミングが大事」と講演で説く齋藤さん

 ヒント1<感情はコントロールできない。だからといって、自分が弱いとか悪いとか思わなくていい>    

 「怖いとか、嫌だという感情は、大事にしてほしい」。二年ほど「くろす」に通い、巣立っていった二十代男性が置き土産にした言葉だ。「失敗が怖い」「対人関係が苦手だ」といった感情を無理に押し殺すと「このままじゃいけない」と焦りを誘い、空回りしてしまうという。

 ヒント2<できないこと、分からないことは人に相談しよう>          

 独りで考えていると堂々巡りになりやすい。「自立しなければ」「このくらい自分でできなければ」と思い込んだあまり、相談を遠慮してしまえば、袋小路から抜け出せなくなってしまう。「ひきこもり相談の窓口が近年、保健所など公的機関で増えている」と齋藤さん。

 ヒント3<何事にもタイミングがある。求職の時期、チャンスを逃さないのが大切>

 無口で、何に対してものれんに腕押しだった青年男性が、仕事体験を境にがらっと変わったケースがあった。仕事をやり遂げた自信が意欲を生み、資格の取得など次の目標が見えてきたという。齋藤さんは「状態は刻々と変わる。自分が今どんな状態か知るためには、心療内科の受診も大切」「抗うつ剤などの薬は、心の浮輪代わりになる」と説く。

 広島市内で今月初めあった若者自立就職支援セミナーでも、齋藤さんは三つのヒントを紹介。「ひきこもりは個々で背景も異なり、ひとくくりの助言は難しい」と説いた上で、こう断言した。「ひきこもりは親の責任じゃない。だけど、救えるのは親しかいない。私たちが力になるんだと、腹をくくってほしい」

 「いつ就職するのか、早く自立を、と親はつい先走ってしまいがち。子どもたちは誰一人、このままでいいなんて思ってやしないんです」と齋藤さん。「焦る親を楽にし、自分を変えたいとする若者の伴走者として居場所を開き続けたい」


フリースペースくろす 16歳以上▽通所は原則2年まで▽利用料は1回2000円―などの受け入れ条件に加え、原則で月1回、スタッフとの面談を親に課している。水曜と日曜を除く週5日開いており、現在は広島、山口両県の十代から三十代まで約20人の男女が通う。少女時代に対人緊張や不自由な発音で悩んだ齋藤さんが、不登校経験者の居場所づくりを経て2003年3月、開設した。スタッフは齋藤さんをはじめ、スクールカウンセラーや主婦など7人。04年7月に特定非営利活動法人(NPO法人)化した運営母体「青少年交流・自立・支援センターCROSS」の理事長も齋藤さんが務める。くろすTel082(244)4620=電話受け付けは月、火、金、土曜日の午後1―5時。

(2006.3.27)


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