中国新聞


小中閉校相次ぐ江田島市
跡地から活気発信を


 ■意見集約 3年以内が鍵

 広島湾に浮かぶ江田島市で統合による小中学校の閉校が相次いでいる。三月末に大須小、秋月小、沖中の三校。市に提出された統合答申には、来年三月末で四校、さらに近い将来三校の閉校が盛り込まれている。答申通りになれば、合併した一昨年十一月の二十二校が十二校へとほぼ半減する。過疎・少子化が進む島にとって学校はにぎわいの拠点の一つ。住民の最大の関心事は跡地の活用策だが、これから協議に入る地域も多い。市と住民が協力し、新たな地域づくりの視点で活用策を見いだしてほしい。(江田島支局・藤原靖成)

既に閉校した沖中(右)と統合準備が進む沖小。来年春に閉校になれば地区から学校が消える

 市の人口減は合併後も続き、少子化も深刻だ。本年度の児童・生徒数は計千七百九十四人で、十年前に比べて千八十一人減った。一学級四十人とすると、約二十七学級が消えた計算になる。正井嘉明教育長は「驚くほど急激に子どもが減った。一定の教育水準を保つには、学校統合は避けて通れない」と強調する。

 こうした中で市学校統合検討委員会(三浦保委員長・十七人)は、複式学級を抱える宮ノ原、津久茂、小用、沖の四小学校について来年三月末での統合案を打ち出した。

 四校のPTA会長は既に、曽根薫市長と統合の覚書に調印。本年度から統合へ向けた本格的な準備が進む。市議会の議決を経て閉校が決まれば二年間で七校の閉校となり二〇〇二年度以降、県内の自治体では最多となる。

 答申は中学二校を含む三校の統合案も示した。別の三小学校についても「五年以内に再検討が必要」とし、さらに統合が加速する可能性がある。

 沖美町沖地区―。昨年春、沖中は新入生がゼロとなり急きょ統合されて、閉校になった。隣接する沖小も来年春に統合されれば、地区から学校が消える。

自治会と検討

 九日夜、市沖美支所であった「沖中学校利活用懇話会」。活用案の協議を重ねてきた保護者や住民代表らに対し、市は「民間の協同組合から国の認証に基づく外国人短期研修施設としての活用申し入れがあった」と報告。初めての説明に、今後は自治会関係者も交えて対応を検討することになった。

 来年春に統合予定の小用、宮ノ原、津久茂の三校では活用策の検討が継続中か、間もなく始まる。小用小は跡地に地震への強度不足が指摘される江田島中の新築移転を市教委が検討中。宮ノ原小では住民が多目的広場やコミュニティーホールに使いたいとする要望書を近く市側に提出する。津久茂小は今月末から、住民が協議に入る。

地域の好機に

 全国の状況をまとめた文部科学省の調査報告書(〇四年度)は、閉校後二、三年以内に活用策が決まらない場合、未活用となるケースが多いと指摘。そうした中で、三月末で閉校した江田島市の大須小は公民館に衣替えし一階に老人集会所ができる。秋月小は自治会が校舎を管理し、暫定的に学校帰りの子どもが夕方まで過ごす場として使う方針だ。迅速に対応できた例といえる。

 市は「跡地活用では全庁的な取り組みを進めたい」とするが、意見の集約の方法はバラバラなのが現状だ。

 地域の活力を維持するためにも、市は住民の意見を早期に集約、反映する全市的な仕組みづくりを整える必要がある。さらに、校舎や体育館、グラウンド、プールなどの施設を効率的に生かすために、複数の団体による部分利用の方法もある。住民も閉校問題を悲観的にとらえず、新たなまちづくりに取り組む契機にしてほしい。


江田島市の小、中学校 市内の全19校とも8学級以下。昨年度は小学校16校のうち、7校の11学級が複式学級だった。県費による教員の加配措置で本年度は2校2学級に減った。小学校1校当たりの児童数は76人、中学校の生徒数は107人で、同じ人口規模の大竹、竹原、安芸高田市の平均より少ない。

(2006.5.12)


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