中国新聞


理論より実践「子ども学部」
下関と岡山の2大学に相次ぎ誕生


 ■遊園地や保育所で授業

 梅光学院大(下関市)に二〇〇五年春、中国学園大(岡山市)に今春、相次いで「子ども学部」が誕生した。「子ども(こども)」を冠した学部は、全国でも計六大学とまだ少ない。子どもをめぐる現代の問題に多角的に迫ろう―との狙いがこもる。(森田裕美)

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授業で大学近くの公園を靴下のまま歩き、雑草の種を集める梅光学院大子ども学部の2年生

 中国学園大の実習室。一期生の男女約四十人が色画用紙から花やこいのぼりを切り抜いている。造形の授業だ。はさみを動かしながら保育士志望の浅利武弘さん(19)=福山市=の胸をある思いがよぎる。「ただかわいいとばかり思っていた子ども観が変わった」

 入学して二カ月足らず。現代子ども論の授業で「学級崩壊」の記録ビデオを見た。「子どもの心の陰をのぞいた気がして、預かる責任の大きさを感じた。心をしっかり学びたい」と話す。

「現実と向き合う」

 「資格重視の詰め込み教育や古い理論では、今の子どもを理解できない」。子ども学部の設置に奔走した高旗正人学部長(教育学)。「保育士や幼稚園教諭を目指す学生に、まず子どもとは何か、現実に向き合ってもらいたい」と言う。一期生の八十人は今月、県内の遊園地や美術館、保育所に出掛け、子ども観察の実習を始めた。

 ひと足先に子ども学部を創設した梅光学院大も体験学習を重視する。大学付属の多世代交流センターや幼稚園を現場にした授業、個々の学生がアポイントを取って福祉施設などに出向くフィールドワークをカリキュラムに組んでいる。

 「子どもに接する学生の感性を磨き、子どもの未来を切り開く人材を育成したい」(黒田敏夫学部長)とユニークな授業づくりに力を入れる。

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季節に合わせた保育環境づくりの授業で、飾り付けを実習する中国学園大子ども学部の1年生

 キャンパス近くの戦場ケ原公園で、二年生五十六人が靴下でうろうろ歩いていた。靴下にくっつく雑草の種を集めているのだ。学生たちは大事そうに靴下を大学まで持って帰り、鉢に植えた。

 児童文学者の村中李衣教授と彫刻家の田村務教授の共同プログラム「わたしの野原」。「鉢の一つ一つが違った野原になるはず。普段は目を向けない雑草の命に目を向けよう」と村中教授。

学生が読み聞かせ

 教員の意欲はもう学生に伝わっている。学内の同好会で読み聞かせを学んでいる学生十人は今、幼稚園の保護者や地域住民と協働で、手押し車に絵本を積んで県内外を回る活動を準備中だ。昔の紙芝居屋さんのように路地で絵本を読むという。

 宇部市から通う二年生の児玉恵さん(19)もメンバー。「障害児を教える技術が学べればいいと思って入ったら、教室外の授業が多くて初めはびっくりした。子ども以上に自分の内面を磨く必要があると知り、今では授業の意義を理解できるようになった」。最近は週一回、地元の養護学校に出掛けるボランティアが楽しみになっている。

(2006.5.29)


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