中国新聞


育児の苦楽 肌で実感
三次市「子育て特休」 4人取得中


 ■初めて子守り・料理 地域への広がりに課題も

 三次市が四月から始めた全国でも珍しい「子育て特別休暇」制度。少子化対策の一環として、子どもが一歳六カ月になるまでに二カ月間の有給休暇の取得を義務付けている。六月十二日から取り始めた中村大明さん(27)をはじめ現在、男性三人、女性一人が仕事を離れて子どもと向き合っている。(二井理江)

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子どもの日々の成長を見て、子育ての楽しみを実感している特別休暇中の佐々木喜広さん(左)

 布団で眠っていた生後二カ月半の隼翔君がぐずり始めた。「よしよし、大丈夫よお」と大明さん(27)が慣れた手つきで抱き上げる。「おむつとかミルクとか、泣き声で何となく分かるようになりましたね」とほほ笑む。

2人目 不安軽く

 大明さんが、休暇を取り始めて一カ月。第一子ということもあり、初めは要領が分からず、妻の良子さん(28)から指示を受けておむつを替えたりあやしたり。それが今では何も言われなくてもできるようになった。

 便の回数が減って「便秘気味かなあ」と心配になった時には、育児書から情報収集。「休暇を取ってなかったら、育児書なんて絶対見なかった」。以前は何だかきまりが悪かったスーパーでの買い物も今は平気だ。

 実家が近くになくて頼る人がいない中村夫妻にとって、市の新制度は朗報だった。「二人だと、子どもが泣きやまなくても『どしたんかね』と相談できる。一人だったらしんどくて絶対やれてなかった」と良子さん。夫が二カ月間休める、と思うだけで二人目の子どもを産む不安が軽くなっている、という。

 第二子の晴可ちゃんが五月に生まれ、今月一日から休暇を取っている佐々木喜広さん(27)の一日は、朝食作りから始まる。ご飯にみそ汁、目玉焼き、そしてタコさんウインナー。自炊経験のない喜広さんだが、見よう見まねで挑戦している。夜中、三―四時間おきに授乳で起きなくてはならない妻の登貴さん(32)は「『ご飯できたよ』と起こしてもらえるのは、ほんと助かる」と喜ぶ。

 喜広さんの主な役割は、二歳七カ月になる倖大君の遊び相手。補助付き自転車に乗れるようになったり、言葉が増えていったり日々成長する姿に触れている。

フォローしたい

 新制度がなければ、育児休業を取得してなかった、という大明さんと喜広さん。育児の大変さや楽しみを実感しただけでなく、職場や地域で子育てへの理解が広がるのを期待する。「復職後は、帰りにくいムードをなくし、男性でも休んで子どもを病院に連れて行ける雰囲気をつくるようにしたり、変えていかないといけない」と大明さん。喜広さんも「職場を休む人が出た時には、フォローしてあげたい」と話す。

 とはいえ、世間では「公務員だからできる」との声も多い。中国新聞のブログ(日記風サイト)に寄せられた意見では、広島市佐伯区の自営業女性(30)は「零細企業では、『代替要員ありの二カ月間休業』なんて無理。一、二週間くらいの現実味のある制度を作って」と訴える。廿日市市の会社役員男性(57)も「もっと困っている、例えば母子家庭のパートの母親に適用されるなら賛成するが…」と記す。

 大明さんは「県や市が、代替要員の人件費を助成する制度を作ったら民間企業にも広がりやすくなるのでないか」と提案。喜広さんも「国が制度を作り、大企業から導入していけば少しずつでも広がるのでは」と話している。


三次市の子育て特別休暇 今年4月以降に生まれた子どもが1歳6カ月になるまでに、子ども1人について1カ月単位で2カ月間の有給休暇を全職員に義務付けた。代替要員として臨時職員を確保し職場内でも業務分担で補う。臨時職員の人件費は管理職手当や特別職期末手当の一部をカットし520万円を充てる。

(2006.7.20)


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