中国新聞


特認校・竹原市の仁賀小「休校」決定
教委は説明責任果たせ


■関係者の合意欠かせず

 竹原市教委は、小規模校入学特別認可制度(特認校)を導入している同市仁賀町の仁賀小を二〇〇七年度から休校にすると決め、保護者や地元住民から強い反対が起きている。市議会も撤回を求める決議を採択し、広島弁護士会も同様の勧告書を出した。市教育委員会議は再検討を始めたが、実質的な議論は進んでいない。少人数教育を希望する児童らに学区外通学を認める特認校の実質的な廃校を、関係者の理解なしに進めていいのか。市教委はしっかりと説明責任を果たす必要がある。(竹原支局 筒井晴信)

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休校決定に対し、保護者や住民らから強い反対の声が上がっている仁賀小

 現在十七人が通う市西北部に位置する仁賀小は〇一年四月、市内で唯一の特認校指定を受けた。ところが、市立小中学校適正配置懇話会が〇三年、「児童数の減少を考えれば廃校の対象」と答申。市教委は保護者、住民と協議を始めた。存続を求める声が強かったが、今年二月の教育委員会議で休校が決まった。

少人数に魅力

 これに対し、学区外の同市中央五丁目から長男を通学させる片山修司PTA副会長は「少人数教育の良さを認めて、特認校を選んだ。児童減少を理由にするのは一方的」と憤る。同小の教育方針に共感して東広島市から転居した保護者もおり、「せめて制度を利用して通学する六人が卒業するまで、存続できないか」と訴える。

 住民の反対も強い。仁賀町自治会の若年典男会長(71)は「地域は学校づくりに一体となって協力してきたのに、無視されている」。存続を求める署名には、地区の九割以上の百二十世帯から二百六十三人が応じた。

市議会も反発 地図

 反対の声は、市議会にも広がった。三月の定例会では「合意なしに事実上の廃校を決めた」として休校決定の撤回を求める決議をした。六月の定例会でも、一般質問に立った七人のうち四人が休校問題に言及した。「住民合意についてどう考えるのか」「説明責任は」。やりとりは計五時間に及び、傍聴席には連日約二十人が詰めかけた。

 廃校には議会の同意が必要だが、市教委は休校は管理事項だとして教育委員会議で決めたため、「議会軽視」との声も出る。保護者の要望を受けて調査していた広島弁護士会も「実質的に廃校と変わらず、議会の承認が必要」と指摘。「決定は違法」として、撤回を求める勧告書を市教委に送付した。

 市教委は、廃校ではなく休校とした点について「将来的に人口が増えた場合に再開させるため」と説明。児童一人だけが二学年あり「一定の集団の中で社会性を育てたい」として理解を求める。教育委員も「子どもが磨き合いながら育つ環境を整備する」との意見で一致する。

 一方、住民合意について市教委は当初、「アンケートなどで理解を示す保護者もおり、一定の理解を得たと判断した」と議会側に説明したが、保護者側の賛成は一人。その後、「理解は十分とは言えない」と認めた。

 市議会の決議を受け、四月の教育委員会議では「重く受け止める。考える時間がほしい」と継続協議を確認したが、七月の会議でも踏み込んだ議論はなかった。休校決定以降、保護者や住民との協議も中断したままで、保護者の間にはいら立ちや失望感が広がる。

 少子高齢化が進む地域では、子どもの減少による学校の休校・廃校問題は避けて通れない。県内の小、中学校も全体的に小規模化しており、〇三年から計二十九が廃校となるなど統廃合が進む。

 竹原市の場合、市教委が強引に休校をして住民や議会との間にしこりが残れば、今後の学校再編にも影響が出かねない。特認校指定から六年での方向転換。不信感を取り除くためにも幅広く議論し、合意を得る努力が欠かせない。


小規模校入学特別認可制度 豊かな自然環境や地域との交流に恵まれた小規模校での教育を希望する児童や生徒に、学区外からも入学を認める制度。多様な教育の機会を創出する。県内では、仁賀小を含めて13小学校と2中学校が導入している。

(2006.8.18)


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