中国新聞


学力向上合宿 まずは及第
広島県教委主催 22県立高生が参加


 ■拠点校などの94%「有益」 底上げ対策求める声も

 大学進学などを目指す広島県立高の生徒が学校の枠を超えて集い、講義や自主学習で学力向上を図る初の合同の学習合宿が今夏、開かれた。県教委の指定を受けて進学指導に力を入れる「拠点校」や「重点校」など22校の希望者が4班に分かれ、ハードスケジュールをこなした。生徒に好評だった合宿がどう学力向上につながるか。成果が試されるのはこれからだ。(村田拓也)

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Tシャツ姿で黙々と勉強に打ち込む生徒たち。休み時間のにぎやかさとは対照的だ(8月9日、愛媛県大洲市)

 愛媛県大洲市の国立大洲青少年交流の家で八月九日から三泊四日であった「合同パワーアップ講座」。初日の夜、夕食と入浴を済ませた生徒がTシャツ姿で指定教室に集まった。講義の復習や予習をするためだ。

東大入試を題材

 「無言学習の時間です。黙々とやってください」。監督教諭の声に、ざわついていた教室はぴたりと静まった。プリントや資料をめくる音と、筆記具の音だけが響き、せき払いもはばかられるほど。計二時間、みっちりと自習に打ち込んだ。

 講義は、教科指導で優れた力量を持ち、県教委が認定した「エキスパート教員」が担当。東京大や大阪大などの入試問題を題材に、期間中で計十時間、解き方などを説明した。講義のほか計九時間の自主学習や、難関とされる大学に進学した卒業生や大手予備校職員の講演なども。尾道北(尾道市)の桧田嘉明校長(58)は「やり抜いた達成感はこれからずっと自信になるはず」と期待する。

引率教員に刺激

 講座には、尾道北など拠点校五校と、県立初の中高一貫校の広島(東広島市)の計六校から、二年生約百四十人が約一万円の参加費を払って集まった。参加者アンケートで講座を「かなり有益」「有益」としたのは94%だった。誠之館(福山市)の浅海裕磨さん(17)は「みんな、勉強とそれ以外の切り替えが早かった。いいステップになった」と手応えを話す。

 合同合宿は、県教委が二〇〇〇年度から進める学力向上対策事業の一つ。関靖直教育長(45)は「異なる学校の生徒が互いに刺激を受け、悩みを話し合うことで、今後の学習意欲が高まる。引率教員にとっても他校の指導方法が分かり、参考になる」と狙いを語る。

 重点校の三次(三次市)など十六校も三班に分かれ、七、八月に二泊三日で合同学習合宿を実施した。講座を含めた四合宿の参加者は約三百九十人。下崎邦明教育部長(55)は「準備は大変だが生徒の視野が広がり、さらに頑張ろうという意識が芽ばえた」と〇七年度も継続する方針だ。

 学習合宿の先進地は、福岡や長崎、鹿児島県など九州地方とされる。県内では一九九〇年代に各学校ごとにスタート。二〇〇〇年度に県教委が重点校への支援を始め、さらに広がった。宿泊を伴わないロングラン学習を含め、〇五年度は全県立高九十校の半数を超える四十七校が取り組んだ。

 県立高の大学入試センター試験の現役受験者は〇六年度入試で四千三百七十七人と、二〇〇〇年度入試の一・五倍に増加。国公立大学の現役合格者も二千三百二十二人と、一・五倍に伸びた。

進路指導も視野

 県教委は合同合宿の成果を今後の進路指導に生かせれば、さらなる伸びが期待できるとみる。ただ、こうした取り組みに注文もある。県高教組の水田敏宏会計委員(45)は「学力が上位にある子どもの成績を引き上げるだけでなく、底上げも重要だ」と求める。

 拠点校や重点校などにとどまらず、県立高全体のレベルアップをどのように図っていくか。県教委は、全県立高が学校ごとの合同合宿や大学教授による模擬授業を実施できるよう、教員の出張費や講師料の負担などで支援していく。


 広島県教委が進める県立高の学力向上対策 学力を「夢や目標を実現するための基盤」と位置付け、計画的に学ぶ態度や思考力を身に付けてもらう狙いで始まった。2006年度は「拠点校」5校、「重点校」15校を指定。合同で学習合宿をしたり、教員同士で指導法を研究したりする場合に、経費を負担するメニューを新設した。共通学力テストや合同模試など継続施策もある。

(2006.9.4)


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