中国新聞


放課後の拠点 教室を有効活用
広島の石内小


 ■共働き世帯の子ら預かる 留守家庭子ども会

石内小の図書室を放課後借り受けて活動する石内留守家庭子ども会の3年生たち

 共働き家庭などの子どもを放課後、預かる「留守家庭子ども会」の活動場所として、小学校で普段使っている教室を活用する試みが、今月から広島市佐伯区の石内小(松島利一校長)で進められている。定員オーバーで入会できない子どもが出ている新興住宅地などで場所を確保するため、財政難の市が放課後の教室に着目した。子どもの安全の観点からも、もっと早く取り組まれてもよかった試みで、市も他の学校にも広める方針だ。(伊東雅之)

 財政難の市が試行 他校に拡大へ

 石内小の図書室に放課後、「石内留守家庭子ども会」に登録する同校の三年生六人が集まる。宿題に取り組んだ後は子ども会が用意したおやつを食べたり、おもちゃで遊んだり。担当の指導員に見守られながら午後五時まで過ごす。

 留守家庭子ども会が石内小学区にできたのは二〇〇二年。市が校庭の一角に建物を設け、十三人が入会した。ところが、団地造成で児童数は年々増加。本年度は市が「おおむね四十人」としている上限を上回る四十七人が申し込み、ついに三年生の希望者全員を断らざるを得なくなった。

 同子ども会は、共働きなどで放課後、自宅に帰っても両親ともいない一〜三年生の子どもを無料で預かる広島市直営の事業。これまでに市内の小学校区数とほぼ同じ百三十二カ所に設置。児童館や専用のプレハブを拠点に活動している。入会希望者は本年度、全市で六千五十三人。うち、実際に入会したのは五千七百八十人で二百七十三人が入会できなかった。

 ただ、すべての子ども会で子どもがあふれているわけではない。本年度、入会を断ったのは全体の二割に満たない二十五カ所。一部の地域に集中しているのが現実だ。「団地やマンションが増えている安佐南や安佐北、西区に多く、ここ数年、傾向はそう変わっていない」と市教委青少年育成部。

 市は、こうした状況を改善するため、子ども会が使える児童館の建設を進めてきた。しかし、〇四年以降、建設ペースは鈍化。予算をできるだけ使わなくてすむ方法を検討。ようやく、もっとも手近に確保できる学校という場を活用することになった。石田正博育成課長は「子どもを預かる以上、専用のスペースがどうしても必要との思いがあった」と柔軟な考え方に及ばなかった点を率直に認める。

 市は昨年度、まず児童館がない学区で放課後の小学校の教室を活用する試みに着手。警備機器の運用方法など問題点をクリアできることを確認し、保護者から三年生の受け入れ再開を求める声が届いていた石内小をモデルに試行を決めた。

 開始から約一カ月。共働きで一年と三年生の娘を預ける大平みどりさん(33)は、「二人を一緒に下校させることができ安全面からもありがたい。部屋は離れ離れだが、宿題などする上では、狭い施設に三学年が入るよりいい」と喜ぶ。

 市は、配置する指導員の人件費などにめどが付けば、来年度から他の学区でも実施を広げる考えだ。保護者らでつくる市学童保育連絡協議会の西原泰会長(56)は「現在の財政状況の中では、仕方ない」と一定の評価をする。「ただ、自宅のように横になるなどゆったり過ごせるのが会の本来の姿。専用施設の増設にも引き続き取り組んでほしい」と求めている。

(2006.9.30)


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